2014年05月23日

ききみみ・・・昔話♪

さてさて、今日のききみみお話は~~~

馬でも鹿でもない

ききみみ・・・昔話♪



むかしむかし、とても仲の悪い嫁さんとおばあさんがいました。
 
二人は顔さえ見れば、いつも口げんかばかりしています。
 

ある日の事、おばあさんがいろりのふちに座っていると、
嫁さんがそばへ座りました。
 

するとおばあさんは、ひとり言の様につぶやきます。
「どこぞの嫁は、飯は一人前食うが、着物一枚、縫えんそうじゃ」
 すると嫁さんも、負けずに言い返しました。
「どこぞのばあさんは、いつも嫁いじめをして楽しんでいるそうな」


「ふん!」


「ふん!」
 

二人とも、心の中で、
(何て、憎らしい)
(早く、死ねばいいのに)
と、思いましたが、そのくせ、いろりのそばを離れようとはしません。
 黙ったままの時間が、長く続きました。
 

嫁がぼんやりと外を見ていたら、馬が一頭、歩き回っていました。
 

いつまでも黙っていては、ますます気まずくなると思って、
嫁さんが言いました。


「ほれ、ばあさん。馬が歩き回っているよ」

 ところが、それを見たおばあさんは、

「あれは馬じゃない。鹿だ。よく見もしないで、何を言う」

と、言いました。


「とんでもない。あれは誰が見たって、馬じゃ。だって、頭に角がないもの」

「いいや、鹿だ。角のない鹿だって、いくらでもいる」

「あれは、馬じゃ」

「いいや、鹿じゃ」

「馬じゃ!」

「鹿じゃ!」
 

とうとう二人は言い合いになり、そこでどっちが正しいかを決めようと、
何と奉行所へ訴え出たのです。

ききみみ・・・昔話♪


 

そしてこの裁きを受けることになったのが、名裁きで有名な大岡越前だったのです。

 さて、裁きを受ける前の晩、おばあさんは嫁さんに黙って
越前のお屋敷へ行ってお願いをしました。


「どうか嫁の前で、わたしたちが見たのは鹿だと言って下さい。
この裁きに負けると、嫁がますますつけあがります」


「よし、わかった」
 
おばあさんが帰ると、今度は嫁さんがこっそりとやって来ました。


「どうかばあさまの前で、わたしたちが見たのは馬だと言って下さい。
この裁きに負けますと、ばあさまがますます頑固になります」


「よしよし、わかった。わしに任せておけ」

 越前の言葉を聞いて、嫁さんは大喜びで帰っていきました。

 

次の日の朝、二人は奉行所へとやって来ました。

(今日こそ、嫁をぎゃふんと言わせてやる)

(今日こそ、ばあさんをぎゃふんと言わせてやる)
 
おばあさんも嫁さんも、越前には話がついているので、
自分が負けるはずはないと思って、にんまりと笑いました。
 


さて、二人がお白州に座ると、越前が出て来て言いました。


「それでは、二人の言い分、どっちが正しいかを決めよう。
まず、ばあさんから申してみよ」
 

おばあさんが、進み出て言いました。

「大岡さまに申し上げます。わたしたちが見たのは、鹿に間違いないと思います」

ききみみ・・・昔話♪


 

すると、越前が言いました。

「いいや、あれは鹿ではない。」

「そ、そんな」
 
おばあさんの顔が、青くなりました。
 


それを見て、嫁さんが勝ちほこったように前へ進み出ました。

「大岡さま、それは鹿ではなく、馬に間違いないと思います」

ききみみ・・・昔話♪




「いいや、あれは馬でもない」
 
今度は、嫁さんの顔が青くなりました。
 


越前は、目を丸くする二人に言いました。

「裁きを申し渡す。あれは鹿でも馬でもなく、馬鹿というものじゃ」

「馬鹿?」

「馬鹿でございますか?」

「ああ、馬鹿じゃ。馬や鹿で言い争いをするなど、お前たち二人は大馬鹿じゃ!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」
 

二人とも越前に大馬鹿と言われて、しょんぼりしました。
 

越前は、言葉を続けました。


「だが、二人とも馬鹿でよかったのう。
いくら仲の良い嫁姑でも、そのうちに仲が悪くなる事もあろう。
しかし、お前たちは大馬鹿と言われるほどの仲だから、
これからは仲良くなるしかないではないか」
 
ききみみ・・・昔話♪




それを聞いて、おばあさんも嫁も、自分たちがくだらないことで
喧嘩をしていたのが恥ずかしく思いました。


「ごめんよ。つまらない意地を張って、あの時いたのは、
きっと馬だよ。だって、角がなかったんだもの」


「いいえ、おばあさん。あれはきっと、角がない鹿だったんですよ」


「お前は、いい嫁だね。これからは、ずっと仲良くしていこうね」

「こちらこそ。おばあさん、今度、着物の縫い方を教えて下さいね」

「ああ、いいとも、いいとも」
 

こうして急に仲良しになった二人を見て、越前は満足そうに言いました。



「うむ。これにて、一件落着!」


おしまい


馬鹿という漢字の起源はこんなことからでしょうか?(*^_^*)




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Posted by ききみみあんこ at 11:48│Comments(0)むかしばなし
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