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2015年12月29日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

むかしむかし、
ある商人がネコを飼っていました。


 
お正月が近づいたので、
商人の家で働いている小僧さんたちが餅をつき始めました。




 餅の大好きなネコは、うれしくてたまりません。
(よしよし、お正月には餅をたっぷり食べさせてもらえるぞ)

 餅つきの次の日は、
天気が良いのですす払い(→掃除)をする事になりました。


 
ネコは邪魔になるといけないと思い、外に出て家の屋根に登りました。
 すると、長いささぼうきを持った小僧さんが出て来て、
「今から屋根の掃除をするから、家の中へ入っていろ」
と、言うのです。
 ネコが慌てて家の中へ入ろうとすると、
今度は主人が言いました。
「お前にウロウロされてはすす払いが出来ないから、外へ出ていろ」
 さて、ネコは困りました。
 外へ出れば小僧さんに、
「中へ入っていろ」
と、言われるし、中へ入ろうとすると主人に、
「外へ出ていろ」
と、叱られます。
(一体、どこにいればいいんだ?)
 ネコは仕方なくはしごを伝って、
天井裏(てんじょううら)へ登って行きました。
 

するとそこにはネズミたちが集まっていて、
下の騒ぎは自分たちを追い出す為だと思い込み、
おびえた顔をしていたのです。
 そしてネコを見ると、ネズミの親分が言いました。
「こうなっては仕方がない。みんな、覚悟を決めて戦うぞ」
 



ところがネコはネズミに飛びつくところか、
親分の前に行って頭を下げました。
「待ってくれ。今日は、お前たちを食う為に来たんじゃない。
何もしないから、今日一日ここへ置いてくれ」
「それはまた、どういうわけだ?」
「実は家のすす払いで、わしのいるところがないのだ。
どこへ行っても邪魔者扱いで、くやしいったらありゃしない」
「それじゃ、下の騒ぎはおれたちを追い出す訳ではないのだな」
「ああ、いくらすす払いと言っても、こんな天井裏まで掃除する人間はおらん。
だから安心するがいい」
「何だ、そうだったのか」


 

ネズミたちはホッとして、お互いに顔を見合わせました。
 そしてネズミの親分が、急に威張った態度で言いました。
「今日一日、ここに置いてやってもいいぞ。
だが家賃(やちん)の代わりに、お前さんの足の爪と牙を残らず渡してくれ」
「何だって! 爪と牙はネコの大切な武器だぞ!」
「嫌なら、すぐにここから出て行ってくれ。
家賃も払わずにここにいるつもりなら、わしらにも覚悟がある。
ここにいるみんなが死ぬ気でかかれば、お前さんを倒す事も出来るだろう」
 

それを聞いて、ネズミたちが一斉に立ち上がりました。

確かにこれだけの数なら、ネコに勝ち目はありません。
「わかった。わかった。お前の言う通りにするよ」
 ネコは泣く泣く、爪と牙を抜いて親分の前に差し出しました。




「よし、確かに家賃は受け取った。今日一日、ここでゆっくり過ごすがいい。
・・・ただし、どんな事があっても、わしらの体には指一本触らないこと。
と言っても、武器を無くしたお前さんなんて、怖くないがね」

 やがて夕方になって、すす払いも終わったらしく、家の中が静かになりました。
「では帰るよ。お世話になった」
 ネコは天井裏から降りると、家の中に入っていきました。
 すると小僧さんたちがネコを見つけて、つきたての餅を持って来てくれました。
「お前、餅が大好きだろ。さあ食べな」
 でもネコは牙が無くなってしまったので、餅どころかご飯も満足に食べれません。




(ふん、さんざん邪魔者にしておきながら、何を言うか)
 ネコは腹を立てて、こたつの中へ潜り込みました。
 するとそこへ、主人がやって来て、
「こら、何を寝ている。
お前はネズミに餅を取られない様に、しっかり番をしていろ」
と、言って、ネコを台所へ連れて行ったのです。
 

ネコは仕方なく台所に座って、
むしろに広げられた餅をうらめしそうに見張っていました。



 さて、みんなが寝静まった頃、急に天井裏が騒がしくなって、
ネズミたちが親分を先頭にゾロゾロと降りてきました。

「さあ、みんな、餅をどんどん運ぶのだ」
 親分は、ネコを見ても気にしません。
 ネコはたまりかねて言いました。
「おいおい、わしが見えないのか? 
餅を持って行くと承知(しょうち)しないぞ」
 




それを聞いて、親分が笑いました。
「承知しないと言っても、爪も牙もなくてどうするつもりだ?」
「それは、・・・・・・」
 ネコは、何も言い返す事が出来ません。
 

悔しいけれど、ネズミたちが餅を運ぶのを見ているより仕方ありませんでした。

「さあ、餅をどんどん運ぶんだ」
 やがてすっかり餅を運び終えた親分は、ネコを振り返って言いました。
「それじゃ、よいお正月を」

 さて次の朝、
台所にやって来た主人は餅がすっかり無くなっているのを見て、ネコを叱りつけました。



「この役立たず。ネコのくせに、ネズミの番もできないのか!」
 気の毒なネコは、泣きながら正月をおくる事をなりました。
 一方ネズミの方は餅をたらふく食べて、楽しい正月をおくったそうです。



おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 10:00Comments(0)むかしばなし

2015年06月04日

ききみみ百物語♪

お暑い毎日・・・少し早いですが
ききみみ百物語で涼んでくださいませ♪




嵯峨の化け猫

むかしむかし、世の中が豊臣(とよとみ)から徳川(とくがわ)に移ると、
佐賀の殿さまも、竜造寺築前守(りゅうぞうじちくぜんのかみ)から
鍋島直茂(なべしまなおしげ)に代わり、
裏舞台では両家の激しい権力争いが火花を散らしていました。

 三代目、鍋島家茂(なべしまいえしげ)が城主の頃、
ご城下に竜造寺家(りゅうぞうじけ)の跡継ぎである
又一郎(またいちろう)という目の見えない若侍が、
母親のおまさとひっそり暮らしていると、
お城から殿さまの碁(ご)の相手に来るようにとのお達しがありました。
 

目が見えないながらも碁の達人であった又一郎は、
長年の恨みをせめて碁ではらそうと心に決めて、城へ出かけていきました。
 ところが又一郎は、そのまま行方不明になってしまいました。
 心配のあまり夜も眠れないおまさは、
家族同様に可愛がっていたコマという名の黒猫に、又一郎を探してくれるように頼みました。





「ニャー」
 コマは身をひるがえして、城へと走り出しました。

 それから何日かが過ぎた雨の降りしきる夜ふけに、ず
ぶぬれになったコマが又一郎の生首をくわえて帰ってきたのです。
「・・・・・・!」
 そのくやしそうな我が子の顔を見るなり、
母は碁の相手というのは表向きの理由で、
本当は又一郎を亡き者にするのが目的だった事を知ったのです。
 

泣いて泣いて、泣きつかれたおまさは、思いつめた声でコマを呼ぶと、
いきなり自分ののどもとに小刀を突き立て、
「コマよ、このしたたる血を吸って、母の恨みをはらしておくれ」
 そう言い残して、死んでしまいました。

 さて、桜の花が美しく咲きそろった春、
お城の中庭では花見が開かれていました。
 
殿さまは大のお気に入りのおとよをそばにしたがえて、ご機嫌の様子です。
 その時、突然に冷たい風が吹きすぎたと思うと、
城中の灯がいっせいに消えて、女たちの悲鳴がおこりました。
 家来の一人が急いでかけつけると、腰元(こしもと)の一人がのどを引き裂かれて、
血まみれになって死んでいたのです。

 この日から、怪我人や死人が毎日の様に出るようになりました。
 そしてついに殿さままでが原因不明の病いに倒れると、
城中でいろんなうわさが飛び交う様になりました。

 殿さまと又一郎の碁の話は、
家老(かろう)の小森半左衛門(こもりはんざえもん)が仕組んだもの。

 碁に負けた腹いせに殿さまが又一郎を切り殺すと、
小森半左衛門が腹心に命じて、その死体を人気のない森に埋めた。

 そしてその仕返しに、竜造寺家の黒猫が城に忍び込んでいる。

と、言うのです。



 このうわさを耳にして一番恐れたのは、もちろん家老の小森半左衛門です。
 そこですぐさま、小森半左衛門は槍の名人の坂本兵衛門(さかもとひょうえもん)を
殿の見張り役に命じて、自分はどこかへ姿をくらましてしまいました。

 兵衛門(ひょうえもん)は、この役目について間もなく、
奇妙な事に気付きました。
 いつも夜中になると決まって眠気をもよおし、
翌朝になると殿の病状が悪化しているのです。
 そこで次の夜、兵衛門が眠気覚ましの薬草を口に含んで
眠ったふりをしていると、どこからか現われたおとよが殿の居間に入って行きました。
 そしてそのすぐ後、殿の苦しむ声が聞こえてきました。

「何と、おとよの方こそが、曲者(くせもの)であったか」
 兵衛門は、おとよが居間から出てきたところを、
 ブスリ!
と、槍で胸を突き刺しました。
「フギャーーー!」
 おとよは猫の様な悲鳴を上げると、ものすごい形相で兵衛門をにらみつけて、
胸に槍を突き刺したままどこかへ消えてしまいました。



 この騒動に驚いて集まってきた家来たちが、
ふと庭の池を見ると、家老の小森半左衛門の裸の死体が浮かんでいたのです。
 そしてその頃、城下にある竜造寺家の墓の前でも、
兵衛門の長い槍が突き刺さった黒猫が死んでいたという事です。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 22:00Comments(0)むかしばなしききみみ百物語♪

2015年05月30日

ききみみ・・・昔話♪

小槌の柄




むかしむかし、大分のある田舎に、
仕事もしないで遊んでばかりいる男がいました。

 ある日の事、男が木陰で寝ていると、
働き者のアリがやって来て言いました。


「お前、そうして寝ていても、
食べる物は集まらんじゃろう。早く起きて働け」
 




すると男は、
「ばか言え、こんなに暑いのに、働くなんてごめんじゃ」
 男がそう言うと、アリはしばらく考えてから、こう言いました。


「そんなら、ええことを教えてやろう。
 この山奥のお宮さんに、大黒さんがいる。
 その大黒さんは、振れば何でも欲しい物が出る
打出(うちで)の小槌(こづち)という物を持っておるから、
それを借りて来たらどうじゃ。
 そうすれば、働かんで食えるぞ」




「おおっ、振るだけで何でもか! そいつはありがたい」
 男は起き上がると、喜んで大黒さんのところへ行きました。
 そして、
「大黒さん、大黒さん、打出の小槌とやらをわしに貸してくれんか。
それで食い物を出そうと思うんじゃ」
と、頼みました。
 

すると大黒さんは、
「貸してやってもええが、あいにく小槌の柄が折れとってのう。
 その柄は、普通の物では役に立たん。
 握るところがくぼんで黒光りするような、
使い込んだクワの柄でなければならんのじゃ」
と、言うのです。
 

男はそれを聞くと、その日から毎日毎日クワを握って、
「まだ、くぼまんか。まだ、くぼまんか」
と、言いながら、畑仕事を始めたのです。
 こうして一年たち、二年たちと、何年もまじめに働いているうちに、
食べ物がだんだんと家にたまってきたのです。

 ある日の事、大黒さんが山からおりて来て、
「くぼんで黒光りする柄は、まだ出来んのか? 
出来たらすぐに、打ち出の小槌を貸してやるぞ」
と、言いました。


 

すると男は、
「ああ、大黒さん。
 柄はまだ出来んが、まじめに働いたおかげで
家にはこんなに食べ物がたまった。
 それに、働くのが楽しくなった。
 だからもう、小槌はいらんようになった」
と、言いました。
 



するとそれを聞いた大黒さんは、にっこり笑って、
「そうか。
 それは、めでたい。
 どうやらお前の心に、立派な打ち出の小槌が出来たようだな。
 これからもまじめにクワを振れば、
欲しい物は何でも出てくるようになるぞ」
と、言って、山に帰って行ったそうです。

おしまい
  


Posted by ききみみあんこ at 14:50Comments(0)むかしばなし

2015年04月11日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

家が栄える、おまじない




 むかしむかし、きっちょむさんと言う、
とんちの上手な人がいました。

 きっちょむさんの村には、先祖代々田畑や山をたくさん持っている
金助(きんすけ)さんという大百姓がいました。
 しかしどうしたわけか金助さんの代になってから
少しずつ財産が減っていき、もうどうにもならない状態でした。

「あれほど栄えていた家が、こうもすたれるとは。
これはきっと、福の神が家を出て行ったからに違いない」
 金助さんが、こう考えたのも無理はありません。
 
なぜなら金助さんはとても良い人で、
これまでに悪い事もお金をむだに使った事もないからです。
 それなのに金助さんの田畑だけに虫がついてお米が出来なかったり、
大事な牛や馬が病気になって死んだりと、次から次へと悪い事が重なって行くのです。
 有名な易者(えきしゃ)に占ってもらっても原因がわからず、
神主さんにお払いをしてもらっても効き目がありませんでした。



 そんなある日、金助さんはふと思いました。
「そうだ、あのきっちょむさんだったら、何か良いまじないを知っているかもしれんぞ」
 
金助さんから相談を受けたきっちょむさんは、しばらく首をひねって考えていましたが、
やがて何かを思いついたのか、ひざをぽんとたたいて言いました。



「よし。ほかならぬ金助さんの頼みだから、とっておきのまじないをお教えしましょう」
「それは、ありがたい。して、それはどんなまじないだね?」
「まあ、待ってください。
 ここでは説明出来ない事だから、明日の朝早く八幡さまの鳥居の下に来て下さい。
 そこで、とっておきのまじないをお教えしますから。
 でもその代わり、ほかの村人が起きる前に起きて、
自分の家のまわりとよその家のまわりを回ってくるのですよ。
 そうしないと、とっておきのまじないも効き目がありませんからね」
「いいとも、いいとも」

 さて次の朝、金助さんは約束通り、まだ薄暗いうちに起き出しました。
 金助さんは生まれた時からのお坊ちゃんなので、
こんなに早起きをしたのは生まれて初めてです。

「ああ、早起きの朝と言うのは気持ちが良い物だな。
今日はきっと、村一番の早起きに違いないぞ」
 
金助さんは家の者を起こさないように着替えると、
きっちょむさんの言葉通りに家のまわりを一回りしました。
 

すると納屋の前に、昨日の仕事を終えた使用人が、
すきやかまなどの道具をてきとうに置いていたのを見つけました。
(なんだ、これは? うちの使用人は、いつもこんなにだらしないのか?)


 
金助さんは少し嫌な顔をしましたが、きっちょむさんとの約束通り、
ほかの家々をまわりながら八幡さまの方へと向かいました。
 
すると驚いた事に、今日は村一番の早起きだと思っていたのは間違いでした。
 他の家ではもう仕事を始めていて、まだ寝ている家は金助さんの家だけです。
(これは・・・)
 金助さんが八幡さまへ着いてみると、
野良着を着たきっちょむさんがもう先に来ていました。

「きっちょむさん」
 金助さんが声をかけると、きっちょむさんがふり返りました。
「やあ、金助さん。今日は、早く起きましたね。
では約束通り、家が栄えるまじないをお教えしましょう」
 
すると金助さんは、手をふって答えました。

「きっちょむさん。
 これ以上、わしにはじをかかさないでくれ。
 早起きしたおかげで、家がおとろえたわけがわかったよ。
 さっそく家に帰って、家の者たちと働かないとな」
「それは結構。がんばれば、すぐに元の暮らしが取り戻せますよ」

 それから金助さんは、
毎日誰よりも早く起きて家の者たちと一緒に仕事をしました。
 そのおかげできっちょむさんの言葉通り、
金助さんの家は以前の豊かさを取り戻したのです。



おしまい

  


Posted by ききみみあんこ at 20:00Comments(0)むかしばなし

2015年04月10日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

にわとりのおなら




 むかしむかし、ある家に、一羽のニワトリがいました。
 ある日の事。
 ニワトリが庭の木にとまって鳴いていると、
その下をキツネが一匹通りました。


 
キツネはニワトリを見ると、何とか取って食いたいと思い、
「ニワトリさん、とてもいい声ですね。
でも、もっと下で鳴けば、もっといい声が出ますよ」
 
キツネの言葉に、ニワトリは下の枝に飛び移って鳴きました。
 するとキツネは、
「ニワトリさん、前よりもずいぶんいい声になりました。
でも、もう一つ下がらないと」
 
ニワトリは喜んで、もう一つ下の枝にとまって鳴きました。
 ところがそこはキツネの頭のすぐ上だったので、
ニワトリはたちまちキツネに捕まってしまいました。


「ヒッヒヒヒ。バカなニワトリさん。では、いただきまーす」
 大きな口を開けるキツネに、ニワトリはあわてて言いました。
「まっ、待ってください、キツネさん。
 実は、おらの家でも今夜おらを食うと言っていたから、
おら、闘う武器として針を一本盗んでおいたんだ。
 尻尾のところに隠してあるから、
おらを食うんだったらその針を抜いてからの方がいいよ」
「そうか、それはご親切に」
 キツネはさっそく、尻尾のまわりを探してみました。
 するとニワトリはキツネの顔めがけて、

「ブッ!」と、おならを浴びせました。

「わあっ~!」


 キツネがビックリして手をはなしたすきに、
ニワトリは木の上に逃げてしまいました。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 14:42Comments(0)むかしばなし

2015年04月06日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

キツネの仕返し



むかしむかし、村人から家族の病気回復のお祈りを頼まれた
山伏(やまぶし)が村へ出かけて行く途中、
川の草むらで一匹のキツネが昼寝をしているのに出会いました。


「よく寝ておるな。・・・よし、おどかしてやれ」
 山伏はキツネの耳に、ほらがいを当てて、



「ブオーッ!」
と、一吹きしました。
「コンコーン!」
 驚いたキツネは飛び上がったはずみで、川に転げ落ちてしまいました。
 それを見た山伏は、お腹を抱えて大笑いです。
「ワハハハハッ。これはゆかい」


 さて、山伏は間もなく、お祈りを頼まれた家に到着しました。
 すると主人が、落ち込んだ顔で出て来て言いました。
「残念ながら、おいでいただくのが一足遅く、病気の女房が死んでしまいました。
人を呼んで来る間、留守をお願いいたします」



「いや、それは」
「では、頼みましたよ。女房は奥の部屋です。
せめて女房が成仏出来る様に、お祈りの一つもあげてください」
 
主人はそう言うと、どこかへ行ってしまいました。
「何とも、嫌な事を頼まれたものだ。だが、仕方がない」
 山伏が奥の部屋に行ってみると、
部屋の真ん中にびょうぶが置かれていました。
 そのびょうぶの向こうには死んだ女房が寝ているのですが、
山伏は気味が悪くてびょうぶの向こうに行く気がしません。


「早く、帰って来ないかな」
 山伏が主人の帰りを待っていると、突然、
びょうぶがガタガタと動き出しました。

「わあ、わあ、わあ」
 山伏が情けない声をあげながらビックリしていると、
びょうぶがガタンと倒れて、その向こうから死んだはずの女房が
髪を振り乱しながら近寄ってきました。
「あなたが、もっと早く来ていれば、
わたしは死なずにすんだのに。・・・うらみますよ」




 恐ろしさに腰を抜かした山伏は、後ずさりしながら死んだ女房に謝りました。
「すまん、おれが悪かった。謝る。謝るから、もう近寄るな」
 そして、どんどん後ずさりしていった山伏は、急に床がなくなるのを感じて、
そのまま川の中へドブーン! と、落ちてしまいました。




「あれ? ここはどこだ?」
 辺りを見回すと、山伏が落ちたのはキツネをおどかした川の中です。
 さっきまでいた家は、どこにもありません。
 山伏は、ようやく気づきました。
「そうか、おれはさっきほらがいでおどかしたキツネに、仕返しをされたのか」

 その頃、山伏にお祈りを頼んでいた家の人たちが、
山伏が来るのが遅いので迎えに出てきました。
 
そして川の中にいた山伏を見つけて、山伏から事情を聞いた家の人たちは、
「キツネに化かされる様な山伏では、お祈りをしてもらっても無駄だ」
と、言って、山伏に頼んでいたお祈りを断ったそうです。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 22:30Comments(0)むかしばなし

2015年04月06日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

みなごろしとはんごろし



 むかしむかし、尼さんが旅をしていると、
途中で日が暮れてしまいました。
 
そこで尼さんは近くにある家をたずねて、
一晩泊めてもらう事にしました。
「さあ、どうぞ。大した物はありませんが、ゆっくり休んで下さいな」
 家の夫婦は温かい晩ご飯を作って、尼さんをもてなしてくれました。

 その夜遅く、尼さんがふと目を覚ますと、
夫婦が小声でヒソヒソ話しをしていたのです。



「明日は、どうしますか?」
「そうだな、はんごろしにするか?」
「いいえ、はんごろしよりも、みなごろしの方がよいのでは」
「そうだなあ、やっぱりみなごろしの方がよさそうじゃ」
「ええ、みなごろしにしましょう」
 

このやりとりを聞いた尼さんは、びっくりです。
「半殺しに、皆殺し! ここに寝ていては、殺されてしまう」
 尼さんは荷物をまとめると、夜中にこっそりと逃げ出しました。

 次の朝、夫婦は尼さんがいない事に気がついてがっかりしました。
「あーあ、せっかくおいしいみなごろしを作ろうと思っていたのに」
「ほんとうにね」

 尼さんは知りませんでしたが、
この地方ではぼたもちの事を 『はんごろし』とよぶのです。


 
そして、よくついたもちの事を 『みなごろし』とよぶのです。



 勘違いをした尼さんは、
せっかくのおもちを食べる事が出来ませんでした。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 18:01Comments(2)むかしばなし

2015年04月03日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

カチカチ山


 
むかしむかし、おじいさんの家の裏山に、
一匹のタヌキが住んでいました。
 タヌキは悪いタヌキで、おじいさんが畑で働いていますと、
「やーい、ヨボヨボじじい。ヨボヨボじじい」
 と、悪口を言って、
夜になるとおじいさんの畑からイモを盗んでいくのです。



おじいさんはタヌキのいたずらにがまん出来なくなり、
畑にワナをしかけてタヌキを捕まえました。
 
そしてタヌキを家の天井につるすと、
「ばあさんや、こいつは性悪ダヌキだから、
決してなわをほどいてはいけないよ」
と、言って、 そのまま畑仕事に出かけたのです。
 
おじいさんがいなくなると、タヌキは人の良いおばあさんに言いました。
「おばあさん、わたしは反省しています。
 もう悪い事はしません。
 つぐないに、おばあさんの肩をもんであげましょう」
「そんな事を言って、逃げるつもりなんだろう?」
「いえいえ。では、タヌキ秘伝(ひでん)のまんじゅうを作ってあげましょう」



「秘伝のまんじゅう?」
「はい。
 とってもおいしいですし、一口食べれば十年は長生き出来るのです。
 きっと、おじいさんが喜びますよ。
もちろん作りおわったら、また天井につるしてもかまいません」

「そうかい。おじいさんが長生き出来るのかい」
 おばあさんはタヌキに言われるまま、
しばっていたなわをほどいてしまいました。
 そのとたん、タヌキはおばあさんにおそいかかって、
そばにあった棒(ぼう)でおばあさんを殴り殺したのです。



「ははーん、バカなババアめ。タヌキを信じるなんて」
 タヌキはそう言って、裏山に逃げて行きました。

 しばらくして帰ってきたおじいさんは、
倒れているおばあさんを見てビックリ。
「ばあさん! ばあさん! ・・・ああっ、なんて事だ」
 
おじいさんがオイオイと泣いていますと、心やさしいウサギがやって来ました。
「おじいさん、どうしたのです?」





「タヌキが、タヌキのやつが、ばあさんをこんなにして、逃げてしまったんだ」
「ああ、あの悪いタヌキですね。おじいさん、
わたしがおばあさんのかたきをとってあげます」
 
ウサギはタヌキをやっつける方法を考えると、タヌキをしばかりに誘いました。


「タヌキくん。山へしばかりに行かないかい?」
「それはいいな。よし、行こう」
 さて、そのしばかりの帰り道、ウサギは火打ち石で『カチカチ』と、
タヌキの背負っているしばに火を付けました。
「おや? ウサギさん、今の『カチカチ』と言う音はなんだい?」
「ああ、この山はカチカチ山さ。だからカチカチというのさ」
「ふーん」
 しばらくすると、タヌキの背負っているしばが、
『ボウボウ』と燃え始めました。



「おや? ウサギさん、この『ボウボウ』と言う音はなんだい?」
「ああ、この山はボウボウ山さ、だからボウボウというのさ」
「ふーん」
 そのうちに、タヌキの背負ったしばは大きく燃え出しました。
「なんだか、あついな。・・・あつい、あつい、助けてくれー!」
 タヌキは背中に、大やけどをおいました。

 次の日、ウサギはとうがらしをねって作った塗り薬を持って、
タヌキの所へ行きました。
「タヌキくん、やけどの薬を持ってきたよ」
「薬とはありがたい。
 まったく、カチカチ山はひどい山だな。
 さあウサギさん、背中が痛くてたまらないんだ。
 はやくぬっておくれ」
「いいよ。背中を出してくれ」



 ウサギはタヌキの背中のやけどに、とうがらしの塗り薬をぬりました。
「うわーっ! 痛い、痛い! この薬はとっても痛いよー!」
「がまんしなよ。よく効く薬は、痛いもんだ」
 そう言ってウサギは、もっとぬりつけました。
「うぎゃーーーーっ!」
 タヌキは痛さのあまり、気絶してしまいました。

 さて、数日するとタヌキの背中が治ったので、
ウサギはタヌキを釣りに誘いました。



「タヌキくん。舟をつくったから、海へ釣りに行こう」
「それはいいな。よし、行こう」
 海に行きますと、二せきの舟がありました。
「タヌキくん、きみは茶色いから、こっちの舟だよ」
 そう言ってウサギは、木でつくった舟に乗りました。
 そしてタヌキは、泥でつくった茶色い舟に乗りました。
 二せきの船は、どんどんと沖へ行きました。

「タヌキくん、どうだい? その舟の乗り心地は?」
「うん、いいよ。ウサギさん、舟をつくってくれてありがとう。
・・・あれ、なんだか水がしみこんできたぞ」
 泥で出来た舟が、だんだん水に溶けてきたのです。




「うわーっ、助けてくれ! 船が溶けていくよー!」
 大あわてのタヌキに、ウサギが言いました。
「ざまあみろ、おばあさんを殺したバツだ」
 やがてタヌキの泥舟は全部溶けてしまい、
タヌキはそのまま海の底に沈んでしまいました。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 18:03Comments(2)むかしばなし

2015年04月01日

ききみみ…昔話♪


ききみみあんこの今日のお話は~

大工と鬼六



 むかしむかし、あるところに、大きくて流れの速い川がありました。
川のこちら側に住んでいる村人たちは、
向こう岸へ行くには川を渡らなければなりません。
でもその川には、橋がありません。
 それと言うのも何度橋を作っても、
大雨が降ると川の流れが激しくなって橋が流されてしまうからです。

「何とかして、雨にも風にも大水にも負けない丈夫な橋をかけなければ」
村人たちは話し合って、日本一の橋作り名人と言われる大工に頼む事にしました。

「よし、引き受けた!」
大工はそう言って、さっそく川岸へやって来ました。
ところが、その川の流れの速さを見てびっくりです。
「こんなに流れの速い川を見たのは、始めてだ。
どうしたら、これに負けない丈夫な橋をかける事が出来るのだろう?」
大工は、考え込んでしまいました。




すると川の真ん中から、大きな鬼がヌーッと現れました。
「話は、聞いたぞ。丈夫な橋が欲しいのなら、
おれが橋をかけてやろうじゃないか」
「それは、ありがたい。ぜひとも、橋をこしらえてくれ」
「よし、約束しよう。その代わりに橋が出来たら、お前の目玉をもらうぞ」
鬼はそう言うと、パッと消えてしまいました。



 次の朝、大工が川にやって来ると、もう大きくて立派な橋が出来ていました。
村人たちは、大喜びです。
けれど大工は、困ってしまいました。
鬼との約束で、目玉を取られてしまうからです。
(大事な目玉を、取られてたまるか)



大工はこっそりと、山奥へ逃げて行きました。
すると山奥のもっと奥から、不思議な歌が聞こえて来ました。
♪大きな鬼の、鬼六さん。
♪人間の目玉を、おみやげに。
♪早く帰って、来ておくれ。
「あれは、鬼の子どもが歌っているんだな。
この山は鬼の住みかで、鬼の子どもがおれの目玉を欲しがっているんだ」
歌を聞いた大工は、あわてて山から逃げ出しました。
 



そして着いた先が、あの橋の近くだったのです。
「しまった! またここに戻ってしまった」
大工は再び逃げ出そうとしましたが、そこへあの鬼が現れたのです。

「どこへ逃げても無駄だ。約束通り、目玉をもらうぞ」
「どうか、かんべんしてくれ。目玉がなくなったら、仕事が出来ねえ。
仕事が出来なければ、家族が困るんだ」
大工が一生懸命に頼むと、鬼は言いました。
「家族か。おれにも家族がいるから、お前の気持ちはよく分かる。
・・・よし、かんべんしてもらいたかったら、おれの名前を三べん言ってみろ」
「名前を?」
 鬼の名前なんて、大工は知りません。

そこで、適当に、
「鬼太郎」
「ちがう!」
「鬼一郎、鬼次郎、鬼三郎、鬼四朗、鬼五郎・・・」
「ちがう、ちがう。ちがうぞ!」




その時、大工はあの不思議な歌を思い出しました。
「そうだ、鬼六だ。鬼六、鬼六、鬼六!」
大工は、大声で叫びました。
 すると鬼はびっくりして、
「何で、知っているんだー!」
と、逃げる様にいなくなってしまいました。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 07:30Comments(0)むかしばなし

2015年03月27日

ききみみ・・・昔話♪


八百比丘尼(やおびくに・はっぴゃくびくに)




 若狭の国(わかさのくに→福井県)の古いほら穴には、
人魚の肉を食べた女が八百才まで生きて身を隠したとの言い伝えがあります。
 その女は尼さんになって諸国をまわったので、
いつの頃からか八百才の尼さんという意味の、
八百比丘尼(やおびくに)と呼ばれるようになりました。

 さて、その八百比丘尼がまだ子供の頃、
近くの村の長者たちが集まって宝比べをした事がありました。
 その中に見た事もない白いひげの上品な老人が仲間入りをして、
一通りみんなの宝自慢が終ると、自分の屋敷へ長者たちを招いたのです。
 

浜辺には美しい小舟が用意されていて、
全員が乗り込むと絹の様な白い布がまるで目隠しでもするように
みんなの上にかけられました。
 そして舟が着いた先は、とても立派なご殿でした。
 老人の案内でたくさんの部屋にぎっしりとつまった宝物を見せてもらっている途中、
一人の長者が台所をのぞくと、まさに女の子の様な生き物を料理しているところだったのです。


「なっ、何じゃ、あれは!?  人間の子どもの様だが、腰から下が魚の尾びれだ」
 驚いた長者がその事をすぐにみんなに知らせたので、
後から出たごちそうには、誰一人手をつけませんでした。
 それを見た老人は、
「せっかく人魚の肉をごちそうしようと思ったのに、残ってしまってはもったいない」
と、長者たちが帰る時に土産として持たせたのです。
 帰りもまたあの白い布がかけられて、
どこを走っているかわからないままに元の浜辺へとたどり着きました。
 

そして舟がどこへともなく姿を消すと、
長者たちは気味の悪い人魚の肉を海に投げ捨てました。
 
ところが珍しい物が大好きな高橋(たかはし)長者だけは
人魚の肉を捨てずに家に持って帰り、とりあえず戸だなの中に隠したのです。
 
そして高橋長者には十五歳になる娘がいたのですが、
この娘は長者が眠ってしまった後で、こっそりその肉を食べてしまったのでした。


 

人魚の肉を食べた娘は、年頃になると色の白い美しい娘になりました。
 やがて結婚をして時が流れ、夫は老人になっていきましたが、
どうした事か嫁は若くて美しいままなのです。
 その美しさに夫が死んだ後も求婚者は後を絶たず、
とうとう三十九人もの男に嫁入りをしたのでした。


その間、夫や村人が次々と死んで行くのに、
女は年を取る事も死ぬ事もないのです。
 人々は、
「年を取らんのは、人魚の肉を食べたからじゃ。
あの女は人魚の肉を食べて、化け物になったのじゃ」
と、噂をしました。
 
とうとう誰からも相手にされなくなった女は、
一人ぼっちの悲しさに尼の姿になって、諸国行脚(しょこくあんぎゃ)に出たのです。

 

そして行く先々で良い事をしながら白い椿(つばき)を植えて歩き、
やがて古里(ふるさと)に帰ってくると、



浜辺近くのほら穴のそばに白椿(しろつばき)の木を植えて、
その中に入ったきり出てくる事はありませんでした。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 20:10Comments(0)むかしばなし