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2015年03月14日

ききみみ・・・昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

じいさんはくさかった!

 むかしむかし、ある村に、 
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 

おじいさんはいつもの様に山へしばかりに出かけ、 
おばあさんもいつもの様に川へせんたくに出かけました。
 




すると川上から大きなイモが、ドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。
「こりゃあ、うまそうなイモだこと」
 おばあさんは大喜びでイモを拾うとイモを家に持って帰り、 
そのイモを小さく切ってカマでむしあげました。
 むしあがったイモはとてもホクホクしていて、とってもおいしそうです。
 
おばあさんはさっそく一つつまんで、口に入れてみました。
「おやおや、何ておいしいんでしょう」
 
おばあさんはまた一つ、また一つと、イモをどんどん食べていきました。
 するとそのうちに、お腹がはってきて、
「プーーー、プーーー」
と、おならが出るようになりました。
 それが何ともくさいおならで、おばあさんは思わず鼻をつまみました。


「こりゃ、イモを食べ過ぎたかな」
 おばあさんはしょうじを開けて、おならのにおいを外へ出しました。
 そのおならのにおいは風にのって、山の方へ流れて行きました。
「おや? なんだかくさいぞ」
 山でしばかりをしていたおじいさんは、あわてて両手をふりました。
「くさい、くさい」
 あまりのくささに、しばかりどころではありません。
 

そこでおじいさんは山をおりて、ウシに食べさせる草をかって帰りました。
 それを見たおばあさんが、おじいさんに言いました。
「おや? おじいさん、今日はしばかりじゃなかったのですか?」
 すると、おじいさんは鼻をつまんで言いました。
「とんでもない。今日はくさかった」

おしまい

おやじギャグのルーツのようなお話ですね~(*^_^*)  


Posted by ききみみあんこ at 16:20Comments(0)むかしばなし

2015年02月10日

ききみみ・・・昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

ネズミの嫁入り




むかしむかし、ネズミの一家がいました。
 父さんネズミと、母さんネズミと、一人娘のチューコです。


「ねえ、お父さん。そろそろチューコにも、
お婿さんを見つけなくてはなりませんね」
「そうだな、チューコは世界一の娘だから、
世界一のお婿さんを見つけてやらないとな。
ところで世界一強いのは、やっぱりお日様だろうな」


 

父さんネズミと母さんネズミは、お日様のところへ行って頼んでみました。
「世界一強いお日様。チューコをお嫁にもらってくれませんか?」

「そりゃうれしいが、雲はわしより強いぞ。わしを隠してしまうからな」
 




そこで父さんネズミと母さんネズミは、雲のところへ行ってみました。
「世界一強い雲さん。チューコをお嫁にもらってくれませんか?」

「そりゃうれしいが、風はわしより強いぞ。
わしを簡単に吹き飛ばしてしまうからな」
 




そこで父さんネズミと母さんネズミは、風のところへ行ってみました。
「世界一強い風さん、チューコをお嫁にもらってくれませんか?」

「そりゃうれしいが、壁はわしより強いぞ。わしがいくら吹いても、
わしをはね返してしまうんじゃ」
 




そこで父さんネズミと母さんネズミは、壁のところへ行ってみました。
「世界一強い壁さん。チューコをお嫁にもらってくれませんか?」

「そりゃうれしいが、わしよりも強いものがいるぞ。それはネズミじゃ。
ネズミにかじられたら、わしもお終いだからな」





「何と! 世界で一番強いのは、わしらネズミだったのか」
 そこでチューコは、めでたくネズミのお嫁さんになりました。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 07:10Comments(0)むかしばなし

2015年02月05日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

笛の名人




 むかしむかし、京の都に、源博雅(みなもとのひろまさ)という、
とても笛の上手な人がいました。
 

その頃、都では集団の泥棒がいて、人々は大変困っていました。
 
ある晩の事、博雅(ひろまさ)の屋敷にも集団の泥棒が押し入りました。
 泥棒たちは手に手に、弓や、なぎなたを持っています。



「みんな、すぐに隠れるんだ! 見つかっても決して抵抗はするな!」
 
博雅の言葉に、
召し使いたちはみんな思い思いのところへ逃げたり隠れたりしました。
 博雅も縁の下に隠れて、ジッと息を潜めました。
 

やがて泥棒たちは、品物やお金を取って出て行きました。
 博雅は縁の下からはい出すと、

「行ってしまったらしい。みんな、出てきても大丈夫だ」
と、召し使いたちに声をかけました。


 

さいわいみんなは無事で、怪我人もいません。

「なにより無事で良かった。・・・しかし、よく取って行ったものだ。
壊れたなべのふたまでないではないか」
 
博雅があきれながら座敷の中を調べてみると、
さいわい置き戸棚が一つ残されていました。

「どうせ、中の物は持って行ってしまったのだろう」
 それでも開けてみると、中には博雅が愛用している笛が一本入っていました。



「これはありがたい。良い物を残してくれた」
 博雅は笛を取ってそこに座ると、静かに笛を吹き始めました。


♪ひゅー、ひゅるるりりるー
 美しい笛の音色は、高く、低く、暗い外へ流れていきました。
 博雅の家から引き上げた泥棒たちは、夜ふけの都を歩いていましたが、

「いい笛の音だなあ」
と、先頭にいた泥棒の親分が、ふと足を止めました。
「本当に、いい音色だ」
「うん、いい音色だ」
 
みんな耳をすませて、ウットリとして聞き入りました。
 そして聞いているうちに、
泥棒たちは自分たちのしたことが恥ずかしくなってきたのです。
 



みんな博雅の素晴らしい笛の音色を聞いて、心が清らかになったのです。
「おい、みんな引きかえそう。取って来た物を返そうではないか」
 親分の言葉に、子分たちも頷きました。

 さて、それからしばらくすると、あの泥棒たちが引き返してきたので、
博雅は驚いて笛を吹くのを止めました。
 
そして泥棒の親分は、驚く博雅の前に両手をついて言いました。
「あなたの笛の音を聞いているうちに、泥棒が恥ずかしくなりました。
取った物はお返しします。これからは心を入れ替えて、真面目に働きます。
ですからどうか、お許し下さい」
 

手下たちも、そろって頭を下げました。
 そして盗んだ荷物を元の場所に置くと、泥棒たちはどこかへ行ってしまいました。

おしまい

  


Posted by ききみみあんこ at 21:00Comments(0)むかしばなし

2015年01月31日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

テングの腕比べ


 むかしむかし、
中国にチラエイジュというテングがいました。
 



このテングがはるばる海の上を飛んで来て、
日本にやって来ました。
 
そして、日本のテングに言いました。
「わが中国の国には偉い坊さんがたくさんいるが、
われわれの自由にならぬ者は一人もいない。
 
日本にも修行をつんだ偉い坊さんがいると聞いたので、
わざわざやって来たのだ。
 一つその坊さんたちにあって腕比べをしたいと思うが、どうであろう」
 

中国のテングは、偉そうな態度で言いました。
 日本のテングはその態度に腹を立てましたが、
しかしそんなそぶりは見せず、丁寧な口調で言いました。




「それは、それは。遠いところを、わざわざごくろうさまです」
 実は日本には、名僧、高僧と呼ばれる偉い坊さんがたくさんいて、
テングたちよりも強いのです。
 
そこでこの傲慢(ごうまん)な中国テングに、
ギャフンと言わせてやろうと思ったのです。


「いや、この国の偉い坊さんといっても、あまり大した事はありません。
 我々でも、こらしめてやろうと思えばいつでも出来ます。
 しかし、せっかく遠い国から来られたのですから、
適当な坊さんを、二、三人お教えしましょう。
 どうぞ、わたしと一緒においで下さい」
 

そう言って日本のテングは、
中国のテングを連れて比叡山(ひえいざん)にやって来ました。
 

そこは、京都から比叡山の延暦寺(えんりゃくじ)にのぼる道です。
「わたしたちは人に顔を知られているから、
あの谷のやぶの中に隠れておりましょう。
 あなたは年寄りの法師に化けて、ここを通る人をこらしめて下され」
 




そう言うと日本のテングは、さっさとやぶに隠れてしまいました。
 そして、中国のテングの様子をうかがっていました。
 

中国のテングは、見事な老法師(ろうほうし)に化けました。
 しばらくすると山の上から、余慶律師(よぎようりつし)という坊さんが
手ごしに乗り、たくさんの弟子たちを従えて京都の方に下りて来ました。
 
余慶律師の一行は、次第に近づいて来ました。
(さて、いよいよだぞ)
 
しかし、ふと中国のテングの方を見ると、もう姿が見えません。
 余慶(よぎよう)の方は何事もない様に、
静かに山を下って行きました。
(おかしいな、どこへ行ったんだ?)
 そう思いながら中国のテングの探すと、
何と南の谷にお尻だけ上に突出して、
ブルブルと震えているではありませんか。
 

日本のテングは、そこへ近寄ると、
「どうしてこんな所に、隠れておられるのか?」
と、尋ねました。
 

すると中国のテングは、わなわなと震える声で、
「さっき通ったお方は、どなたじゃ?」
と、尋ねました。


「余慶律師という、お方でござる。
それより、なぜこらめしては下さらんのじゃ?」
 
日本のテングが言うと、中国のテングは頭をかきながら、
「いやそれ、その事でござる。
 一目見て、これがこらしめるという相手だとすぐにわかった。
 そこで立ち向かおうとしたのだが、
何と相手の姿は見えず、手ごしの上は一面の火の海。
 これはとうていかなわぬと思って、隠れたというわけでござる」
 

それを聞いた日本のテングは、心の中でニヤリと笑いました。
(やはり中国のテングと言っても、大した事はない。
もう少しからかってやれ)
 

しかし、真面目くさった顔をして言いました。
「はるばると中国の国からやって来られて、
これしきの者さえ、こらしめる事が出来ないとは。
今度こそは、必ずこらしめてくだされ」


「いや、いかにも、もっともでござる。よし、見ておられい。
今度こそは必ずこらしめてごらんにいれよう。ふん! ふん!!」
 




中国のテングは気合を入れると、また老法師に化けました。
 

しばらくすると、また手ごしに乗った坊さんが山を下りて来ました。
 それは、深禅権僧正(しんぜんごんそうじょう)という坊さんで、
手ごしの少し前には、先払いの若い男が太い杖をついて歩いています。
 

日本のテングは、やぶの中からじっと見ていました。


 中国のテングは手ごしの近づいてくると、
通せんぼうする様に立っていましたが、
先払いの若い男が怖い顔をして太い杖を振り上げると、
思わず頭をかかえてそのまま一目散に谷に駆け下りました。


「いかがなされた。また、逃げて来られたではないか」
 日本のテングは、やぶの中から声をかけました。
 

すると中国のテングは、苦しそうに息をはずませながら、
「無理な事を言われるな。手ごしの方どころか、
あの先払いにさえ近寄る事が出来ぬわ」

「そんなに、恐ろしい相手でござるか」

「いかにも。
 わしの羽の早さは、はるか中国から日本まで飛ぶ事が出来るが、
とてもあの男の足の早さにはかなわぬ。
 もし捕まったら、あの太い鉄の杖で頭をぶちわられてしまうわ」


「さようか。では、次こそ頑張って下され。
せっかく日本まで来られたのに、手柄話一つなしに帰られたとあっては、
めんぼくない事ではござらぬか」
 

日本のテングはそう言うと、さっさとやぶの中に入ってしまいました。
 

中国のテングは仕方なく、次に来る坊さんを待つ事にしました。
 

しばらく待っていると、下の方からたくさんの人が
山を上って来るのが見えました。
 先頭には、赤いけさを着た坊さんがいて、
その次には若い坊さんが、立派な箱をささげて続きます。
 
その後ろから、こしに乗った人が山を上って来たのでした。
 そして、こしの左右には二十人ぐらいの童子たちが、
こしを守る様にしてついています。
 

このこしに乗っている人こそ、
比叡山延暦寺の慈恵大僧正(じえだいそうじょう)で、
一番偉い坊さんだったのです。
 

日本のテングは、やぶの中からそっとあたりを見回しました。
 

しかし中国のテングの老法師の姿は、どこにも見えません。


「また逃げたかな。
それとも、どこかに隠れて、すきを狙っているのかな」
 

すると童子たちの中の一人が、
大声で話しているのが聞こえてきました。


「こういう所には、とかく仏法(ぶっぽう)の妨げをする者が
ひそんでいるものだ。よく探してみようではないか」
 

すると元気のいい童子たちは、手に手に棒きれを持って、
道の両側に散らばって行きました。
 

見つけられては大変と、
日本のテングはやぶの中深く潜って行き、そっと息をひそめていました。

と、谷のすぐ向う側で、童子たちの怒鳴っている声が聞こえてきました。

「そら、ここに怪しい者がいるぞ。ひっとらえろ!」

「何だ、誰がいたのだ?」

「おいぼれの法師が隠れていたぞ。
あの目を見ろ、普通の人間には見えぬぞ」


(大変だ。中国のテングが、とうとう捕まったぞ)
 




日本のテングも恐ろしさに、
ただ頭を地にすりつけるようにして、じっとひれ伏していました。
 

やがて足音が、遠ざかって行きました。
 
日本のテングは、そっとやぶからはい出すと、
あたりを見回しました。
 
すると十人ばかりの童子たちが、
老法師姿の中国テングを取り巻いているのが見えました。

「どこの法師だ、名前を言え。
なんの用があって、こんな所に隠れていた!」

 一人の童子が、大声で言いました。
 
中国のテングは大きな体を小さくして、あえぎあえぎ答えました。
「わたくしは、中国から渡って来た、テングでございます」

「なに、中国のテングか。何をしに来たんだ」

「はい、偉いお坊さんが、ここをお通りになると聞いて待っていました。
 一番始めにこられたお坊さんは、
火界(かかい)の呪文を唱えておられたので、
こしの上は一面の火の海でございました。
 うっかり近寄ろうものなら、
こちらが焼け死んでしまいますので、一目散に逃げました。
 

次に来られたお坊さんは、不動明王(ふどうみょうおう)の呪文を
唱えておられたうえに、セイタカ童子が鉄の杖を持って守っておられました。
 
それでまた、大急ぎで逃げました。
 

今度のお坊さまは、恐ろしい呪文はお唱えにならず、
ただ、お経を心の中でよんでおられただけでした。
 
それで恐ろしいとも思わなかったのですが、
こうして、捕まえられてしまいました」
 

中国のテングが、やっとこう答えると、童子たちは、

「大して、重い罪人でもなさそうだ。許して逃がしてやろう」
と、言って、みんなでひと足ずつ老法師の腰を踏みつけると、
向こうへ行ってしまいました。
 

慈恵大僧正(じえだいそうじょう)の一行が山を上って行ってしまうと、
日本のテングはそっとやぶの中からはい出して来ました。
 

そして腰の辺りをさすっている、中国のテングのそばに行きました。

「いかがなされた。今度は、うまく行きましたかな?」
 日本のテングは、しらぬ顔で聞きました。
 
すると中国のテングは、目に涙を浮かべながら答えました。
「そんな、ひどい事を言って下さるな。
 さながら、生き仏の様な徳の高い名僧たち相手に、
勝てるはずもないではないか」

「ごもっともでござる。
 しかし、あなたは中国という大国のテングではござらぬか。
 それゆえ、日本の様な小国の人など、たとえ高僧、名僧とはいっても、
心のままにこらしめる事が出来ると思うたまでの事でござる。
 ・・・が、この様に腰まで折られるとは、まことにお気の毒な事でござるわ」
 

日本のテングもさすがに気の毒だと思い、
中国のテングを北山にある温泉に連れて行きました。


 
そして折られた腰を温泉に入れて治してやってから、
中国の国へ送り返してやったという事です。

おしまい
長文のお話を最後までお読みいただいてありがとうございましたm(*^_^*)m
  


Posted by ききみみあんこ at 15:03Comments(0)むかしばなし

2015年01月30日

ききみみ・・・昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

若返りの水



むかしむかし、山のふもとの小さな村に、
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 
おじいさんの仕事は、炭焼きです。

 山の木を切って、炭を焼いて俵(たわら)に詰めて、
近くの町ヘ売りに行くのです。
 
でもおじいさんは、この頃年を取って仕事が辛くなりました。
「ああ、腰は曲がるし、目はしょぼしょぼするし。
・・・嫌になってしもうたなあ」


 
その日もおじいさんは炭俵をかついで、
ヨタヨタと山を下り始めました。
 
とても暑い日だったので、喉がカラカラに渇きます。
 ふと見ると、道ばたに突き出た岩から、
きれいな水がチョロチョロと吹き出していました。

「こいつは、ありがたい」
 おじいさんは、その冷たい水を飲みました。
 とてもおいしい水です。

「ああ、うまかった。何だか腰がシャンと伸びた様だぞ」
 
おじいさんは水のおかげで元気が出たのだと思い、
深く考えもせずに山を下りて家へ帰ってきました。

「ばあさんや、帰ったよ」

「おや、早かったですね。おじいさん・・・!」
 
おばあさんはビックリ。
 目をパチパチさせて、おじいさんを見上げました。
 
いいえ、おじいさんではなく、
そこにいたのはおばあさんがお嫁に来た頃の、
あの頃の若いおじいさんでした。



「・・・わたしは、夢でも見ているんじゃあ、ないでしょうかね」
 
おじいさんもおばあさんに言われて始めて、
自分が若返っている事に気づきました。

「若返りの水というのがあると聞いていたが、
それではあれがその水だったんだな」
 

おじいさんは岩から吹き出していた、
きれいな冷たい水の事をおばあさんに話して聞かせました。


「まあ、そんなけっこうな水があるんなら、
わたしも行って頂いてきましょう」
 
おばあさんはそう言って、次の日さっそく山へ出かけて行きました。

 おじいさんはおばあさんがさぞかし若くきれいになって、
帰って来るだろうと楽しみにして待っていました。
 

ところが昼になっても、夜になっても、おばあさんは帰ってきません。
 
おじいさんは心配になって、村の人と山へ探しに行きました。
 
でも、おばあさんはいません。

「いったい、どこへ行ってしまったんだろうなあ?」
「キツネに化かされて、山奥へ連れて行かれてしまったのとちがうか?」
 
みんなが話し合っていると、



「オギャー、オギャー」
と、そばの草むらの中から、
赤ん坊の泣き声が聞こえて来ました。
 
おじいさんが近づいてみると、おばあさんの着物を着た赤ちゃんが、
顔をまっ赤にして泣きじゃくっていました。




「・・・馬鹿だなあ、ばあさんの奴。飲み過ぎて赤ん坊になってしもうた」
 仕方がないので、おじいさんは赤ん坊を抱いて家へ帰りました。

おしまい

  


Posted by ききみみあんこ at 18:58Comments(2)むかしばなし

2015年01月15日

ききみみ…昔話♪

年末年始、ばたばたですっかりブログもお休みでした。

今年もまた
昔話をお読みいただけたら嬉しいです!

では、今日はこんなお話を~


招き猫になった猫

むかしむかし、江戸の上野の山の下にある乾物屋(かんぶつや)で
飼われているネコが、たった一匹、子ネコを生みました。




その子ネコというのが、何と人間が怒った顔そっくりだったのです。
 何日かすると、乾物屋の主人は、
「何とも気味が悪い。まるで人を恨んでおるような顔じゃ。
これでは客も怖がって、店に来なくなる。そんなネコ、早くどこかへ捨ててこい」
と、店の若い者に、お寺の多い寺町に捨てに行かせました。
 


店の若い男は子ネコをふところに入れると、
大きな池のほとりを歩いて寺町に向かいました。

「ニャー」
 途中でお腹が空いたのか、子ネコが鳴き始めました。
「これ、鳴くのを止めないか」


 店の若い男は、叱ろうとしてふところを開きました。
 すると子ネコはいきなり飛び上がって、
喉元に小さな口を押し当ててきたのです。




 子ネコは、おっぱいを探していたのですが、
それを噛みついて来たと勘違いした店の若い男は、
「わあー! 何だこいつ!」
と、大声を上げて、子ネコを振り落としました。
 

男の叫び声を聞いて、
池のほとりにある茶屋のおじいさんが飛び出してきました。

「何じゃ。一体何事だ」
 茶屋のおじいさんは、若い男から子ネコの話を聞くと、
「そんな事で捨てられるとは、何と可愛そうな事を。
まあ、確かに少し変わった顔をしておるが、
よく見れば可愛いじゃないか。
よし、わしが飼ってやるから、置いて行きなさい」
と、言って、その子ネコを茶屋で飼う事にしたのです。




 さて、それからはこの子ネコの顔が変わっているというので、
わざわざ遠くから茶屋に見に来る人が増えてきました。



 子ネコはお客さんを招いてくれる『招きネコ』となって、
池のほとりにあるおじいさんの茶屋を繁盛させたという事です。


おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 07:15Comments(2)むかしばなし

2014年12月16日

ききみみ・・・昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

ねことねずみ



 むかしむかし、あるところに、
おじいさんとおばあさんが住んでいました。

 ある日の事、おじいさんが山の畑で草むしりをしていると、
草むらに一匹の子ネコがいました。
「おおっ、可哀想に。腹を空かせとるようじゃな。
どれ、一緒に家に帰ろうな」
 山で拾った子ネコを、
おじいさんとおばあさんはまるで自分の子どものように大事に育てました。



 ある日の事、納屋(なや→物置)の中で何やら変な音がするのに
気がついたネコが、納屋へ入っていきました。

♪それやれ、みがけやみがけ、ネズミのお宝。
♪つゆのしっけをふきとばせ。
♪それやれ、みがけやみがけ、ネズミのお宝。
♪みがいてみがいて、ピッカピカ。

 納屋の床にある小さな穴の中から、
ネズミたちの歌う声が聞こえてきます。

 次の日も、ネコは納屋に入ってみました。
 するとキョロキョロと、
まわりを見回しているネズミを見つけました。

 

ネズミは袋からこぼれた豆を、拾おうとしています。
 
そのとたん、ネコはネズミに飛びかかっていきました。
「ひゃ~っ!」
 おどろいたネズミは、今にも泣きそうな声で言いました。
「お願いです。
 どうかわたしを、見逃して下さい。
 わたしたちネズミは、ネズミのお宝をみがかなくてはなりません。
 これは、大変な仕事なのです。
 疲れがたまったのか、お母さんが病気で倒れてしまったのです。
 それでお母さんに栄養をつけさせようと、
豆を探しに出て来たところです。
 お母さんが元気になったら、
わたしはあなたに食べられに出てきます。
 それまでどうか、待ってください」
「・・・・・・」


  

ネコは、ネズミをはなしてやりました。
「ありがとうございます。約束は必ず守りますから」
 子ネズミが穴の中へ帰ってしばらくすると、
ネズミたちの前に豆がバラバラと落ちてきました。
 

子ネズミが驚いて顔をあげてみると、
なんとネコが一粒一粒、豆を穴から落としているのです。
 子ネズミは豆をお母さんに渡すと、ネコの前に出て言いました。
「ネコさん、ありがとう。
 これでお母さんも、元気になる事でしょう。
 さあ約束通り、わたしを食べて下さい」
 しかしネコは持っていた残りの豆を子ネズミの前に置くと、
そのまま納屋から出て行きました。




「ありがとう。ネコさん」
 ネズミの目から、涙がポロリとこぼれました。

 それから何日かたった、ある日の事。


 納屋の方から、
♪チャリン、チャリン
と、いう音がします。
 納屋の戸を開けたおじいさんとおばあさんは、目を丸くしました。
「これは、どうした事じゃ?」
 なんと床の穴の中から、小判がどんどんと出てくるのです。
 そして小判のあとから子ネズミ、母ネズミ、
ほかのネズミたちも出て来ました。


 

子ネズミが小さな頭をペコリと下げると、
「おかげさまで、お母さんの病気もすっかりよくなりました。
 本当に、ありがとうございました。
 それとネズミのお宝を、無事にみがき終える事が出来ました。
 お礼に少しではございますが、この小判をお受け取りください」
と、山のように積み上げられた小判を指さしました。

「なんと、このお宝をわしらにくれるじゃと」
 それはおじいさんとおばあさんが二人で暮らしていくには、
十分すぎるほどのお宝でした。

 こうしておじいさんとおばあさんは、
いつまでも何不自由なく元気に暮らす事が出来ました。
 もちろんネコと一緒に、ネズミたちもとても可愛がったという事です。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 11:50Comments(0)むかしばなし

2014年12月12日

ききみみ…昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

ウサギと太郎

 むかしむかし、ささ山とよばれる山に、
おじいさんと孫の太郎が住んでいました。
 このささ山には、尻尾が長くて大きなウサギがいます。



 ある日、山へ出かけるおじいさんが太郎に言いました。
「夕方には帰ってくる来るから、おかゆをつくって待っててくれ」
「うん、わかった」
 太郎はおじいさんを見送ると、おかゆを作るなべを洗い始めました。
 するとその音に気づいたウサギが、
「おや? なべを洗っているのか。
という事は、今から飯を作るんだな。
よしよし、飯が出来上がるまで、ひと眠りだ」
と、横になって昼寝をはじめました。

 さて、夕方になるとおかゆも出来あがり、いいにおいがしてきました。
 ウサギは飛び送ると、太郎の家へ行って言いました。
「太郎、何をしているんだ?」
「ああ、おかゆをつくっているんだよ」
「おかゆ? うまいんか、そのおかゆってのは?」
「そりゃあ、うまいよ」
「なら、ちょっと食わせてくれや」
「だめだめ、そんな事をしたら、じいさまに怒られる」
「なあ、ちょびっとだ、ほんのちょびっとだけだ。
おら、おかゆってのを食ってみてえよ」
 



ウサギがあんまりしつこいので、
太郎はしかたなくなべをウサギに渡しました。
「じゃあ、ほんのちょびっとだぞ」
 するとウサギは、うれしそうにおかゆを食べ始め、
「あち、あち、あちいがうまい、いやあ、うまい! じつにうまい! 
ほんとうにうまい! ああ、うまかった。じゃあ、さいなら」
と、ウサギはなべを返すと、あっという間に山へ帰ってしまいました。
 

太郎がなべの中を見ると、なんと空っぽです。
 こうしてウサギは太郎をだまして、
おかゆをみんな食べてしまいました。

 おじいさんが山から帰って来ると、
太郎はなべをかかえてションボリしています。
「太郎、おめえ、なべをかかえて何をしてるだ?」
「あっ、じいさま。実は、ウサギにおかゆを全部食われちまっただ」
「なんと・・・」
 これには、おじいさんもガッカリです。

 翌朝、おじいさんは山へ出かける前に、太郎に言いました。
「太郎、今日はウサギに、おかゆを食われるでねえぞ」
「うん、大丈夫だ」
 太郎ははりきって、おかゆを作りはじめました。
 そしてタ方になると、またウサギがやって来ました。
「あっ、お前の昨日の! 
やい、お前に食わすおかゆはないぞ! とっとと帰れ!」


 

するとウサギは、まじめな顔をして言いました。
「太郎! そんな事を言ってる場合じゃないぞ! 
お前のじいさまが、山で倒れたんだ!」
「えっ! 本当か!? そりゃあ大変だ!」
 太郎はあわてて、山ヘ走って行きました。
 するとその後ろ姿を見送りながら、ウサギはニンマリです。
「ウッヒヒヒヒ、うまくいったぞ」

「じいさま、待っていろよ!」
 

太郎が山を登って行くと、
ちょうどおじいさんが山からおりて来るところでした。
「これ太郎。そんなにあわてて、どこへ行くんじゃ?」
 

元気なおじいさんを見た太郎は、
自分がだまされた事に気づきました。
「しまった!」
 



おじいさんと太郎が大急ぎで家に戻ってみると、
おかゆのなべが空っぽになっていました。
 またウサギに晩ご飯をを食べられてしまった二人は、
お腹が空いたままふとんにもぐり込みました。

 そしてまた次の日、太郎がおかゆをつくっていると、
「太郎さん」
と、またウサギがやって来ました。
「また来たなっ! 
もうかんべんならねえ、ウサギ汁にしてやる!」
 

人の良い太郎も、さすがに怖い顔です。
 するとウサギは、ペコペコと頭を下げて言いました。
「まっ、待ってください。
今日は、あやまりに来たんです。本当に、すまん事です」
 

そんなウサギを見て、やさしい太郎はウサギを許してやりました。
「よし、許してやるから、とっとと山へ帰れ」
「いや、それではおらの気がすまねえ。
じいさまに、これをやってくれ。
これは不老長寿(ふろうちょうじゅ)の薬じゃ」
 

ウサギはそう言うと、竹の水筒を太郎に渡しました。
「ふろうちょうじゅって?」
 

首をかしげる太郎に、ウサギは言いました。
「お前、じいさまに長生きしてほしいだろ。
これは、長生きの薬なんじゃ」
「本当か?」
「もちろんだ。でもこの薬は、すぐになべで煮ないとだめなんだ」
「なべ? お前、うまい事を言って、またおかゆを食うつもりじゃろ?!」
「何を言っているんだ。
太郎、お前はじいさまに長生きしてほしくねえのか?」
「そりゃあ、長生きしてほしいが」
「そうだろう。さあ、おらがなべを空っぽにしてやるから、
早くその薬を煮込むんだ」
 そう言うとウサギは、またまたおかゆをたいらげてしまいました。

 やがておじいさんが山から帰って来ると、
太郎はうれしそうに不老長寿の薬の事を話して、
さっそくなべで煮た薬をおじいさんに差し出しました。


「さあ、じいさま。これ飲んで長生きしてくれ」
「ああ、だが、変な色合いじゃのう。それに、においも少々」
 

おじいさんは首をかしげながら、一口飲んでみました。
 そして目を白黒させると、
おじいさんは飲み込んだ物をはき出しました。


「うえ~っ! なんじゃ、こりゃあ!
 これは、ウサギのしょんべんでねえか!」
 怒ったおじいさんは、太郎に言いました。
「太郎! まきを切るナタを持って来い! 
今からウサギを、ひどい目にあわせてやる!」

 山では、おかゆをお腹いっぱい食べたウサギが、
草むらで大きくなったお腹をさすっていました。


「ああ、今日も食った食った。
さて、明日はどうやって太郎をだましてやろうか」
 するとそこへ、ナタを振り上げたおじいさんがやって来たのでビックリ。

「やばい、じいさまだ!」
 ウサギは、あわてて逃げ出しました。
「このウサギめ! よくもしょうべんを飲ませたな! 
ウサギ汁にしてやるからな! えいっ! とうっ!」
 
おじいさんはナタをふりまわしながらウサギを追いかけますが、
ウサギは素早くピョンピョン飛んで、おじいさんをからかいました。


「やーい、じいさま、年じゃのう。くやしかったら、つかまえてみろ」
「このー! これでもくらえっ!」
 おじいさんはウサギめがけて、ナタを投げつけました。
 ウサギはピョンと飛びはねてナタをよけましたが、
長い尻尾だけはよけそこなって、ナタでスパッと切れてしまいました。




「・・・ああっ! いてっ! いてっー!」
 尻尾を切られたウサギはあまりの痛さに、
何日も何日も山の中を泣きながら走りまわりました。
 

そのためにウサギの目は泣きすぎて赤くなり、
足も走りすぎて前足と後ろ足の長さが違うようになってしまいました。
 



それからです、
ウサギの尻尾が短く、目が赤くて後ろ足が長くなったのは。

おしまい  


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2014年12月11日

ききみみ・・・昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~

タヌキの手習い



 むかしむかし、ある空き寺に、
源哲(げんてつ)という名前の新しい和尚(おしょう)さんがやって来ました。
 
村人たちは新しい和尚さんにあいさつをしようと、
畑仕事を途中で終えるとお寺にやって来ました。

「こんにちは、和尚さん。・・・?」
「はて? どこにも、おらんようじゃが」
 村人たちが和尚さんを探すと、
何と源哲和尚はお堂の屋根の上でお酒を飲んでいたのです。
 
これには村人たちも、すっかりあきれて、
「坊主のくせに、昼間から酒を飲んでおるとは」
「あんなやつ、相手にしとれんわい」
と、みんな帰ってしまいました。
 

村人たちからは相手にされなくなった源哲和尚ですが、
裏山に住む子ダヌキたちには気に入られて、
「和尚さん。 おらたちに、何か教えてくれ」
と、子ダヌキたちは人間の子どもに化けて、遊びに来たのです。




「いいとも、いいとも。それじゃあ、読み書きを教えてやろう」
 子ども好きの源哲和尚は、子ダヌキたちに喜んで勉強を教えてやりました。

「和尚さん。お月さまって、どう書くんじゃ?」
「和尚さん。おらには、山と海じゃ」
 子ダヌキたちは熱心に勉強をして、読み書きがとても上手になりました。
 

すると村の子どもたちもやって来て、一緒に勉強を教えて欲しいと言いました。
「ああ、遠慮はいらんぞ。仲間は多ければ多いほど、はげみになるからのう」
 こうして子ダヌキと村の子どもたちは、一緒に勉強をする様になりました。


 ある日の事。
 村の子どもたちが近くの川でとった魚を、源哲和尚に差し出しました。
「勉強を教えてくれる、お礼だよ。酒のさかなに、してくれろ」

 その日の帰り道、子ダヌキたちは集まって相談をしました。
「人間の子が、和尚さんに勉強を教えてくれるお礼をしたぞ。
おらたちも、何かお礼をせんとな」

「ああ、恩は返さんとな。しかし、おらたちは何をする?」
「うーん。そう言えば和尚さんは、
雨の日に酒を買いに行くのがなんぎじゃと言うとったぞ」
「それじゃ! 雨の日は、おらたちが酒を買いに行こう」

 それから雨の日になると、子ダヌキたちは人間の子どもに化けて
酒屋にお酒を買いに行き、源哲和尚に届ける様になりました。
 

ところが酒屋の主人が、雨の日に子どもたちがお酒を買いに来ると、
お金の中に木の葉がまじっている事に気づいたのです。

「あの子どもたちは、きっとタヌキかキツネに違いない。
今日こそは、尻尾をつかんでやる!」
 そうとは知らない子ダヌキたちは、
いつもの様に木の葉をお金に変えてお酒を買いに行きました。


 すると酒屋の主人が店の入り口にカギをかけて、
太鼓(たいこ)を『ドン!』 とならしました。
 
いきなりの太鼓にびっくりした子ダヌキたちは、
尻尾を出してタヌキの姿に戻ってしまいました。
「やっぱり、お前らはタヌキじゃったんだな! 
このいたずらダヌキめ!」
 




酒屋の主人にひどいめにあわされた子ダヌキたちは、
それからは二度と人前に姿を現さなくなりました。

 この話を聞いた源哲和尚は、ぽろりと涙をこぼしました。
「あの子たちが、タヌキじゃったとはな。
よく勉強の出来る子どもたちだったのに、わしの為にかわいそうな事をした」
 



でも、この事で村人たちは源哲和尚のやさしい人柄(ひとがら)を知り、
それからはお寺に親しく行き来する様になったそうです。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 15:30Comments(0)むかしばなし

2014年12月08日

ききみみ・・・昔話♪

ききみみあんこの今日のお話は~



大きな運と小さな運

 むかしむかし、ある山奥のほら穴に、
ぐひんさんが住んでいました。
 ぐひんさんとは、テングの事です。
 

このぐひんさんの占いはとても良く当たると評判なので、
もうすぐ子どもが生まれる木兵衛(もくべえ)と賢二郎(けんじろう)が
生まれる子どもの運を占ってもらいました。


「オン! オン! 山の神、地の神、天の神、
木兵衛と賢二郎の子のぶにをお教えたまえー!」
 
ぐひんさんは大声で呪文(じゅもん)を唱えると、
まずは木兵衛に言いました。
「神のおおせられるには、お前には竹三本のぶにの子が生まれるそうだ」
「竹三本の、ぶに?」
「そうじゃあ。人には生まれながらにそなわった、
運というものがある。それすなわち、ぶにじゃ」
「と、言うと、おらの子には、たった竹三本の運しかそなわらんのか?」
 木兵衛は、がっかりです。
 

ぐひんさんは、次に賢二郎に言いました。
「お前のところには、長者(ちょうじゃ)のぶにの子が生まれる。
お前の子は、長者になるさだめじゃあ」
「貧乏なおらの子が、長者にねえ」
 ぐひんさんの占いを聞いて、二人は村に帰りました。

 それからしばらくして、二人の家に子どもが生まれました。
「玉の様な、男の子じゃ」



「うちは、女の子じゃ」



 どちらも元気な子どもで、二人は手を取り合って喜びました。
 木兵衛の子どもは吾作(ごさく)、賢二郎の子どもは
お紗希(おさき)と名付けられ、二人は病気もせずにスクスクと育ちました。

 ある日の事、木兵衛と賢二郎が畑仕事をしているところへ、
吾作とお紗希がにぎり飯を持って来ました。
「おとう、昼飯じゃあ」
「みんなで、一緒に食べようよ」
「賢二郎、そうするか」
「おうおう、そうすべえ」
 



四人はあぜ道にならんで、にぎり飯を食べました。
 ムシャムシャ・・・、ガチン!
 木兵衛が食べていたにぎり飯の中に、小さな石が入っていました。
「なんや、石なぞ入れおって。・・・ペっ!」
 木兵衛は小石を、ご飯粒ごと吐き出しました。
 すると吾作も親の真似をして、
「ぺっ、ペっ、ペっ」
と、ご飯粒を吐き出しました。
 

それを見た賢二郎は、木兵衛に言いました。
「ああ、もったいない事をして。石だけを、吐き出したらよかろうに」
 すると木兵衛は、笑いながら言いました。


「石だけを選ぶなんて、けちくさいわい。
 おらは、けちくさい事は大嫌いじゃ。
 賢二郎どんは、よくよくの貧乏性じゃのう。
 アハハハハハッ」
「そうは言っても、
おらはどうももったいない事が出来んのや。なあ、お紗希」
「うん!」

 それから何年か過ぎて、吾作は町の竹屋で修行をして
古いおけを修理する輪がけの職人になりました。
 お紗希は、隣村で働く事になりました。
 竹職人になって村に帰って来た吾作に、
木兵衛はうれしそうに言いました。
「よしよし、それだけ技術を身につけたら立派なものや。
ぐひんさんには竹三本のぶにと言われたが、がんばれば竹百本、
うんにゃ、竹千本の大金持ちにだってなれるわい」
「ああ、がんばるぞ」
 

こうして吾作は村々をまわって輪がえの仕事をしましたが、
しかしいくら働いても輪がえはそれほどお金になりません。
「ああ、輪がえというのは、つまらん仕事じゃあ」

 そんなある日、隣村まで足をのばした吾作は、
長者屋敷の前で呼び止められました。

「輪がえ屋さん、おけの輪がえをお願いします」
 お手伝いの娘が、こわれたおけを持って屋敷から出て来ました。
「へい、ありがとうございます」
 




吾作は輪がえをしながら、お手伝いの娘にたずねました。
「ずいぶんと、使い込んだおけですね。
しかし長者さまなら輪がえなんぞしないで、
新しいおけを買った方がはやいんじゃないですか?」


「はい。以前はそうでしたが、新しい若奥さまが来られてから、
使える物は直して使う様になったんです。
でもそのおかげで、
若奥さまが来られてから屋敷がずいぶんと大きくなりましたよ」

「へえー、そんなものですかね。わたしはどうも、けちくさいのが苦手で」
 するとそこへ長者の若奥さまが通りかかり、
輪がえをしている吾作を見てなつかしそうに言いました。

「あれぇ、あんた、吾作さんやないの? ほら、あたしよ。
小さい頃によく遊んだ、隣の」
 吾作は若奥さまの顔を見て、びっくりしました。

「ありゃあ! お紗希ちゃんでねえか。
こ、ここの、奥さまになられたのでござりまするか?」
「ええ。あとでにぎり飯をつくってあげるから、待っとって」
 
お紗希は台所に行くと、さっそくにぎり飯をつくりました。
 そして長者の嫁になった自分の幸せを吾作にも分けてあげたいと思い、
にぎり飯の中に小判を一枚ずつ入れたのです。
 この小判は、お紗希が何年もかかってためた物でした。

 輪がえを終えた吾作は、
川岸へ行ってお紗希からもらったにぎり飯を食べる事にしました。



「ほう、こりゃうまそうじゃ。さすがは、長者さま。飯のつやが違うわい」
 そしてにぎり飯を口に入れると、
 力チン!
と、歯にかたい物があたりました。
「ペッ! なんや、えらい大きな石が入っとるぞ」
 吾作はにぎり飯を川の中に吐き出すと
、二つ目のにぎり飯を口に入れました。
 カチン!
「これもか。ペッ!」
 三つ目も。
 力チン!
「なんや、これもか。ペッ!」
 四つ目も、五つ目も。
 カチン! カチン!
「何じゃ、このにぎり飯は? どれもこれも、みんな石が入っとるやないか」
 そして最後の一つも、やはり力チンときました。
 吾作はこれも川に吐きすてようとして、ふとにぎり飯を割ってみました。




「長者の家の飯には、どんな石が入っとるんじゃ? ・・・ややっ、これは!」
 にぎり飯の中から出て来た物は、石ではなく小判です。
「し、しもうた。前に入っていたのも、小判やったんか」
 お紗希が心を込めたおくり物は、深い川の底に沈んでしまいました。

 この話を聞いて、木兵衛は吾作をしかりました。
「なんで初めに力チンときた時に、中を確かめなかったんや! 
そうすりゃ、六枚の小判が手に入ったのに!」
「けど、石だけを選んで吐き出すなんて、
そんなけちくさい事はおとうも嫌いやろ? やっぱりおらには、運がないんや」
 

その言葉を聞いて、木兵衛はぐひんさんの言葉を思い出しました。
「ぐひんさんの言う通り、お紗希は長者の嫁になった。
やはり吾作には、竹三本のぶにしかないのか・・・」

 木兵衛ががっかりしていると、
どこからともなくぐひんさんが現れて言いました。


「木兵衛よ、それは違うぞ。
 お紗希が長者の嫁になれたのは、物を大切にする良いおなごだったからじゃ。
 いくら良いぶにを持っていても、それを生かせん者もおる。
 反対に小さなぶにしかなくても、大きな運をつかむ者もおる。
 ぶにとは努力しだいで、どうとでも変わる物じゃ。
 長者になっても物を大切にするお紗希を見習えば、
お前たちにも運がつかめるだろう」

 それからというもの木兵衛と吾作は物を大切にする様になり、
やがて竹千本の山を持つ長者になったそうです。

おしまい  


Posted by ききみみあんこ at 19:34Comments(0)むかしばなし