2014年11月28日
ききみみ・・・昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
仁王とどっこい

むかしむかし、仁王(におう)という大変な力持ちがいました。
もう日本では、仁王にかなう者はいません。
「唐の国(からのくに→中国)に、
どっこいという力持ちがいると聞いたが、
どーれ、出かけて行って、すもうでもとってくるか」
仁王は舟に乗って唐の国に行くと、どっこいの家に行きました。

「どっこいは、いるかな? 日本一の仁王さまが、力比ベに来たぞ」
すると家の中から、おばあさんが出てきました。
「ああ、どっこいは、じきに帰って来るよ。少し、待ってください」
おばあさんはそう言って、せっせとお昼ご飯のしたくを始めました。
仁王が見ていると、おふろよりも大きなカマがあって、
そこにお米を何俵も入れています。
仁王は思わず、おばあさんにたずねました。
「そんなにいっぱいご飯をたいて、祭りでもあるのか?」
「いんや、これはおらとじいさまと、
あとはおらの子どものどっこいの三人で食べるよ」
「これを、三人で・・・」
仁王も大食いで有名ですが、これにはとてもかないません。
「あの、ちょっくら、お便所を貸してくれや」
仁王は体がブルブルふるえてくるのをガマンして便所に入ると、
そこの窓から逃げ出しました。

「どっこいというのは、きっと化け物に違いない。
これは、逃げるが勝ちだ」
やがて浜辺に着いた仁王は舟に乗ると、大急ぎでこぎ出しました。
さて、間もなく家に帰ったどっこいは、
戸口に大きな足あとがあるのを見つけました。
「でっかい足あとだな。こんな足をしているのは、
日本の国の仁王しかいねえぞ。さては、力比べに来たな。
おっかあ、仁王はどこにいるだ?」
どっこいが聞くと、おばあさんが言いました。
「あんれ、なんて長いお便所だベ」
そこで便所をのぞいて見ると、中は空っぽです。
「さては、逃げたな。ここまで来て、おらと勝負をしないで帰るなんて、
うわさほどでもない弱虫だ。よーし、ひっとらえてやっつけてやる」
どっこいは長いくさりのついた大きなイカリをかついで、仁王の足あとを追いかけました。
「おーい、待てえ!」
どっこいが浜辺に着くと、仁王はもう舟をこぎ出して遠くにいます。
「逃がさないぞ!」
どっこいは仁王の舟に向かって、くさりのついたイカリを投げつけました。
「えいやっ!」
イカリはピューンと空を飛び、仁王の舟に突きささりました。
仁王はひっしで舟をこぎますが、
どっこいが怪力でくさりをどんどん引っ張ります。
「このままでは、舟が引き戻されてしまう!」
その時、仁王は日本を出る時に、武家の神さまである
八幡(やはた)さまにもらったヤスリの事を思い出しました。
このヤスリは、どんな鉄でも切れるヤスリです。
「八幡さま、お守りください」
仁王がヤスリでくさりをこすると、くさりはプッツリと切れました。
とたんに力一杯くさりを引っ張っていたどっこいは、
ズデーンと海の中に尻もちをつきました。
どっこいは、切れたくさりを見ておどろきました。

「仁王とは、何という怪力だ。
おらでも、このくさりは切れないのに。・・・勝負しなくてよかった」
それからです。
重い物を持つ時に、唐の国では『におう』とかけ声をかけ、
日本では『どっこいしょ』と言うようになったのは。
おしまい
仁王とどっこい

むかしむかし、仁王(におう)という大変な力持ちがいました。
もう日本では、仁王にかなう者はいません。
「唐の国(からのくに→中国)に、
どっこいという力持ちがいると聞いたが、
どーれ、出かけて行って、すもうでもとってくるか」
仁王は舟に乗って唐の国に行くと、どっこいの家に行きました。

「どっこいは、いるかな? 日本一の仁王さまが、力比ベに来たぞ」
すると家の中から、おばあさんが出てきました。
「ああ、どっこいは、じきに帰って来るよ。少し、待ってください」
おばあさんはそう言って、せっせとお昼ご飯のしたくを始めました。
仁王が見ていると、おふろよりも大きなカマがあって、
そこにお米を何俵も入れています。
仁王は思わず、おばあさんにたずねました。
「そんなにいっぱいご飯をたいて、祭りでもあるのか?」
「いんや、これはおらとじいさまと、
あとはおらの子どものどっこいの三人で食べるよ」
「これを、三人で・・・」
仁王も大食いで有名ですが、これにはとてもかないません。
「あの、ちょっくら、お便所を貸してくれや」
仁王は体がブルブルふるえてくるのをガマンして便所に入ると、
そこの窓から逃げ出しました。

「どっこいというのは、きっと化け物に違いない。
これは、逃げるが勝ちだ」
やがて浜辺に着いた仁王は舟に乗ると、大急ぎでこぎ出しました。
さて、間もなく家に帰ったどっこいは、
戸口に大きな足あとがあるのを見つけました。
「でっかい足あとだな。こんな足をしているのは、
日本の国の仁王しかいねえぞ。さては、力比べに来たな。
おっかあ、仁王はどこにいるだ?」
どっこいが聞くと、おばあさんが言いました。
「あんれ、なんて長いお便所だベ」
そこで便所をのぞいて見ると、中は空っぽです。
「さては、逃げたな。ここまで来て、おらと勝負をしないで帰るなんて、
うわさほどでもない弱虫だ。よーし、ひっとらえてやっつけてやる」
どっこいは長いくさりのついた大きなイカリをかついで、仁王の足あとを追いかけました。
「おーい、待てえ!」
どっこいが浜辺に着くと、仁王はもう舟をこぎ出して遠くにいます。
「逃がさないぞ!」
どっこいは仁王の舟に向かって、くさりのついたイカリを投げつけました。
「えいやっ!」
イカリはピューンと空を飛び、仁王の舟に突きささりました。
仁王はひっしで舟をこぎますが、
どっこいが怪力でくさりをどんどん引っ張ります。
「このままでは、舟が引き戻されてしまう!」
その時、仁王は日本を出る時に、武家の神さまである
八幡(やはた)さまにもらったヤスリの事を思い出しました。
このヤスリは、どんな鉄でも切れるヤスリです。
「八幡さま、お守りください」
仁王がヤスリでくさりをこすると、くさりはプッツリと切れました。
とたんに力一杯くさりを引っ張っていたどっこいは、
ズデーンと海の中に尻もちをつきました。
どっこいは、切れたくさりを見ておどろきました。

「仁王とは、何という怪力だ。
おらでも、このくさりは切れないのに。・・・勝負しなくてよかった」
それからです。

重い物を持つ時に、唐の国では『におう』とかけ声をかけ、
日本では『どっこいしょ』と言うようになったのは。
おしまい
2014年11月20日
ききみみ・・・昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
石のいも
むかしむかし、ある村に、
空海(くうかい)という名のお坊さんがやって来ました。

お坊さんは朝から何も食べずに、山をこえて谷を渡り、
やっとこの村にたどりついたのです。

「ああ、腹がへった。目が回りそうじゃ」
すると向こうから、一人の女の人が歩いてきました。
女の人は、畑から帰って来たところでした。
手にザルをかかえ、
その中にはおいしそうなイモがいっぱい入っていました。

それを見て、お坊さんは思わず声をかけました。
「お願いじゃ、そのザルの中のイモを一つでいい、わしにくだされ」
女の人は、ジロリとお坊さんを見ました。
(ふん。なんて汚い坊主だろう)
この女の人は、
みすぼらしいお坊さんにイモをあげるのがいやだったので、
「それは残念。このおイモは、食べられませんよ」
と、言いました。
「えっ、どうして?」
「これは、おイモそっくりの石なんです」

「石ですか。それは仕方がない」
お坊さんは頭を下げると、
またトボトボと道を歩いていきました。
「うふふ。うまくいったわ。
だれが、大事なおイモをあげるもんですか」

次の年の秋になりました。
「今年も、おいしいおイモがたくさん取れますように」
あの女の人は大きなザルをかかえて、
自分の畑に行きました。
さっそく畑の土をほり返してみますと、
去年よりも大きなイモがどんどんと出てきます。
「今年は豊作だわ。それにズッシリと重くて、よく実がつまっている。
・・・しかし、本当に重たいわね。まるで石みたい。・・・あれ、これは!」

イモだと思っていたのは、イモそっくりの石だったのです。
「あら、これも、これも、これも、ぜんぶ石だわ!」
女の人の畑のイモは、全てイモにそっくりな石だったのです。
その時、女の人は去年の今ごろ、
お坊さんにうそをついた事を思い出しました。

「ああ、あの時、わたしがうそをついたから、
神さまが天罰(てんばつ)をあたえたんだわ」
女の人は反省して、
それからは貧しい人にほどこしをする心やさしい人になりました。

おしまい
石のいも
むかしむかし、ある村に、
空海(くうかい)という名のお坊さんがやって来ました。

お坊さんは朝から何も食べずに、山をこえて谷を渡り、
やっとこの村にたどりついたのです。

「ああ、腹がへった。目が回りそうじゃ」
すると向こうから、一人の女の人が歩いてきました。
女の人は、畑から帰って来たところでした。
手にザルをかかえ、
その中にはおいしそうなイモがいっぱい入っていました。

それを見て、お坊さんは思わず声をかけました。
「お願いじゃ、そのザルの中のイモを一つでいい、わしにくだされ」
女の人は、ジロリとお坊さんを見ました。
(ふん。なんて汚い坊主だろう)
この女の人は、
みすぼらしいお坊さんにイモをあげるのがいやだったので、
「それは残念。このおイモは、食べられませんよ」
と、言いました。
「えっ、どうして?」
「これは、おイモそっくりの石なんです」

「石ですか。それは仕方がない」
お坊さんは頭を下げると、
またトボトボと道を歩いていきました。
「うふふ。うまくいったわ。
だれが、大事なおイモをあげるもんですか」

次の年の秋になりました。
「今年も、おいしいおイモがたくさん取れますように」
あの女の人は大きなザルをかかえて、
自分の畑に行きました。
さっそく畑の土をほり返してみますと、
去年よりも大きなイモがどんどんと出てきます。
「今年は豊作だわ。それにズッシリと重くて、よく実がつまっている。
・・・しかし、本当に重たいわね。まるで石みたい。・・・あれ、これは!」

イモだと思っていたのは、イモそっくりの石だったのです。
「あら、これも、これも、これも、ぜんぶ石だわ!」
女の人の畑のイモは、全てイモにそっくりな石だったのです。
その時、女の人は去年の今ごろ、
お坊さんにうそをついた事を思い出しました。

「ああ、あの時、わたしがうそをついたから、
神さまが天罰(てんばつ)をあたえたんだわ」
女の人は反省して、
それからは貧しい人にほどこしをする心やさしい人になりました。

おしまい
2014年11月14日
ききみみ・・・昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
宝の下駄

むかしむかし、あるところに、
さすけという男の子がお母さんと二人で暮らしていました。
ある日、お母さんが重い病気になりましたが、
医者にかかりたくてもお金がありません。
(このままでは、お母さんが死んでしまう。
お金持ちのごんぞうおじさんに、お金を借りよう)
と、さすけは出かけて行きました。
しかし、ごんぞうおじさんは、
「なに? 金を貸せというのか?
それなら、おらの家の広い畑をたがやすんだ!」
と、怒鳴りました。
さすけは早くお母さんを助けようとがんばり、一日で畑をたがやしました。
でも、ごんぞうおじさんは、
「はん。まだ金は貸せん。大おけに、水をいっぱい入れろ!」
と、また怒鳴りました。
次の日、さすけは水を運びました。
ところがおけには小さな穴が開けてあって、
いくら運んでも水はいっぱいになりません。
「この、なまけ者! 金は貸せん、帰れっ!」
ごんぞうおじさんは、さすけを追い返しました。
追い出されたさすけは、トボトボ歩いてとあるお宮の前に来ました。
「お腹がへったなあ。もう歩けない。どうしたらいいんだろう?」
さすけはその場に座り込むと、ウトウトといねむりをしてしまいました。
♪カラーン カラーン カラーン カラーン
夢の中でしょうか。
ゲタの音が、近づいてきます。
そして現れたのは、やさしい顔のおじいさんでした。

「母親思いのさすけよ。
お前に、一本のはのゲタをさずけよう。
このゲタをはいて転ぶと、そのたびに小判が出る。
だが転ぶたびに、背が低くなる。
やたらと、転ぶではないぞ」
「は、はっ、はい。ありがとうございます」
おじいさんの姿は、パッと消えてしまいました。
「ありゃ? 夢か? でも、本当にゲタがあるぞ」
さすけはおっかなびっくりゲタをはいてみましたが、
なにしろ一本はのゲタです。

立つか立たないうちに、スッテン!
「あっ、いてててえ」
と、言ったとたん、
♪チャリーン。
「ああ、小判だ!」

さすけは、大喜びです。
その小判を持って、すぐに医者のところへ行きました。
医者に診てもらったお母さんは、みるみる元気になりました。
それであのゲタは大事にしまって、
さすけはお母さんと一緒に毎日よく働きました。
そこへごんぞうおじさんが、さすけの様子を見にやって来ました。
そっとのぞくと、二人はごちそうを食ベています。
「やいやい。このごちそうはどうした!
ごちそうを買う金があるくせに、おらのところに金を借りに来たのか!」
「まあまあ、気をしずめてください。これには、深いわけが」
さすけは、あのゲタの話をしました。
「なに、小判の出るゲタだと。
こいつはいい。
これは貧乏人のお前たちより、金持ちのおらが持つべきだ。
もらっていくぞ」
ごんぞうおじさんは、ゲタを持って帰りました。
家に帰ったごんぞうおじさんは、さっそく大きなふろしきを広げました。
そしてゲタをはいて、ふろしきの上に乗ると、
「へっヘっへ、まずは、ひと転び」
と、言って、スッテンと転びました。

すると小判が
♪チャリーン。
「おおっ! 本物の小判じゃ!」
さあ、それからというもの、
♪転んで転んで、小判がほしい。
♪チャリンコ、チャリンコ、小判がほしい。
ごんぞうおじさんは、夢中になって転びました。
「おおっ! 小判がだんだんでっかくなるぞ!
おらよりでっかくなっていくぞ!
おら、日本一の大金持ちじゃあー!」
ごんぞうおじさんは、転ぶたびに自分が
小さくなっていく事にぜんぜん気づいていません。
その頃、さすけはゲタをはいて転ぶと背が低くなる事を
言い忘れたのを思い出して、
あわててごんぞうおじさんに会いに行きました。

家に行ってみますと、
閉めきった家の中でチャリーン、チャリーンと音がします。
「おじさーん、おじさーん!」
と、呼んでみましたが、返事がありません。
さすけは、とびらを力まかせに開けました。
すると中から、小判がジャラジャラと流れ出てきます。
「うああっ! ごんぞうおじさん。どこだあー!」
小判を押しのけて家の中へ入ると、
ごんぞうおじさんは山のようにつまれた小判のすみで、
バッタのように小さくなっていました。

それでも転んでは起き、転んでは起きして、
小判をどんどん出しています。
そのうちにとうとう小さな虫になって、
どこかへ飛んでいってしまいました。
その後、さすけはごんぞうおじさんの家をひきとって
長者(ちょうじゃ)になり、お母さんと幸せに暮らしました。
欲張りすぎると、ろくな事がありませんね。
おしまい
宝の下駄

むかしむかし、あるところに、
さすけという男の子がお母さんと二人で暮らしていました。
ある日、お母さんが重い病気になりましたが、
医者にかかりたくてもお金がありません。
(このままでは、お母さんが死んでしまう。
お金持ちのごんぞうおじさんに、お金を借りよう)
と、さすけは出かけて行きました。
しかし、ごんぞうおじさんは、
「なに? 金を貸せというのか?
それなら、おらの家の広い畑をたがやすんだ!」
と、怒鳴りました。
さすけは早くお母さんを助けようとがんばり、一日で畑をたがやしました。
でも、ごんぞうおじさんは、
「はん。まだ金は貸せん。大おけに、水をいっぱい入れろ!」
と、また怒鳴りました。
次の日、さすけは水を運びました。
ところがおけには小さな穴が開けてあって、
いくら運んでも水はいっぱいになりません。
「この、なまけ者! 金は貸せん、帰れっ!」
ごんぞうおじさんは、さすけを追い返しました。
追い出されたさすけは、トボトボ歩いてとあるお宮の前に来ました。
「お腹がへったなあ。もう歩けない。どうしたらいいんだろう?」
さすけはその場に座り込むと、ウトウトといねむりをしてしまいました。
♪カラーン カラーン カラーン カラーン
夢の中でしょうか。
ゲタの音が、近づいてきます。
そして現れたのは、やさしい顔のおじいさんでした。

「母親思いのさすけよ。
お前に、一本のはのゲタをさずけよう。
このゲタをはいて転ぶと、そのたびに小判が出る。
だが転ぶたびに、背が低くなる。
やたらと、転ぶではないぞ」
「は、はっ、はい。ありがとうございます」
おじいさんの姿は、パッと消えてしまいました。
「ありゃ? 夢か? でも、本当にゲタがあるぞ」
さすけはおっかなびっくりゲタをはいてみましたが、
なにしろ一本はのゲタです。

立つか立たないうちに、スッテン!
「あっ、いてててえ」
と、言ったとたん、
♪チャリーン。
「ああ、小判だ!」

さすけは、大喜びです。
その小判を持って、すぐに医者のところへ行きました。
医者に診てもらったお母さんは、みるみる元気になりました。
それであのゲタは大事にしまって、
さすけはお母さんと一緒に毎日よく働きました。
そこへごんぞうおじさんが、さすけの様子を見にやって来ました。
そっとのぞくと、二人はごちそうを食ベています。
「やいやい。このごちそうはどうした!
ごちそうを買う金があるくせに、おらのところに金を借りに来たのか!」
「まあまあ、気をしずめてください。これには、深いわけが」
さすけは、あのゲタの話をしました。
「なに、小判の出るゲタだと。
こいつはいい。
これは貧乏人のお前たちより、金持ちのおらが持つべきだ。
もらっていくぞ」
ごんぞうおじさんは、ゲタを持って帰りました。
家に帰ったごんぞうおじさんは、さっそく大きなふろしきを広げました。
そしてゲタをはいて、ふろしきの上に乗ると、
「へっヘっへ、まずは、ひと転び」
と、言って、スッテンと転びました。

すると小判が
♪チャリーン。
「おおっ! 本物の小判じゃ!」
さあ、それからというもの、
♪転んで転んで、小判がほしい。
♪チャリンコ、チャリンコ、小判がほしい。
ごんぞうおじさんは、夢中になって転びました。
「おおっ! 小判がだんだんでっかくなるぞ!
おらよりでっかくなっていくぞ!
おら、日本一の大金持ちじゃあー!」
ごんぞうおじさんは、転ぶたびに自分が
小さくなっていく事にぜんぜん気づいていません。
その頃、さすけはゲタをはいて転ぶと背が低くなる事を
言い忘れたのを思い出して、
あわててごんぞうおじさんに会いに行きました。

家に行ってみますと、
閉めきった家の中でチャリーン、チャリーンと音がします。
「おじさーん、おじさーん!」
と、呼んでみましたが、返事がありません。
さすけは、とびらを力まかせに開けました。
すると中から、小判がジャラジャラと流れ出てきます。
「うああっ! ごんぞうおじさん。どこだあー!」
小判を押しのけて家の中へ入ると、
ごんぞうおじさんは山のようにつまれた小判のすみで、
バッタのように小さくなっていました。

それでも転んでは起き、転んでは起きして、
小判をどんどん出しています。
そのうちにとうとう小さな虫になって、
どこかへ飛んでいってしまいました。
その後、さすけはごんぞうおじさんの家をひきとって
長者(ちょうじゃ)になり、お母さんと幸せに暮らしました。
欲張りすぎると、ろくな事がありませんね。
おしまい
2014年10月31日
ききみみ・・・昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
むかしむかし、ある村に、
人を化かしていたずらをするキツネがいました。

村人たちの中には、ドロのだんごを食べさせられたという人や、
お風呂だと言われてこやしのおけに入れられた人など、
色々ないたずらをされる人がふえてきました。
そこで、村人たちは、
「なんとかしてキツネをこらしめ、
いたずらをやめさせなければいけない」
と、言い出しました。
それには、おこんギツネというキツネの親分を
つかまえなくてはいけないのですが、
そのキツネはかしこくて、なかなか捕まりません。

すると、ある若者が、
「今度の盆踊りで化け比べをすれば、
化けるのが好きなおこんギツネは、きっと出てくるよ」
と、言いました。
おこんギツネをおびき出すために、
今年の盆踊りでは特別に工夫をこらして、
いろいろな姿に化けて踊って一番うまく化けた者には
ほうびをやろうというのでした。
「ほう、それはおもしろい」
と、みんなは賛成しました。
そこで踊りに出る人たちは、こっそりいろんな用意をしました。
そしていよいよ盆踊りの夜、
村人たちは森のおみやの前の広場に集まりました。
たいこがなりひびき、歌声が流れていきます。
♪よいやさ、よいやさ。
♪よいやさ、よいやさ。

みんなは輪になって、グルグルと踊りまわっています。
カゴを背負った、花売り娘。
槍をかついだ、やっこさん。
美しい、お姫さま。
ひょっとこのお面の男。
ひげを生やしたお侍。
お坊さん、赤鬼、金太郎など。
色々な姿に変装した、踊り手たちがいます。
その向こうには、ごほうびにもらうお酒の樽や
焼き鳥のごちそうなどが、たくさん並べてあります。
踊りまわるうちに、お姫さまとひょっとこがぶつかったり、
お侍が転んだひょうしに立派な口ひげを落としたりして、
見物している人たちはドッと笑い転げています。
するといつのまにか踊りの輪の中に、
立派な若いお侍の姿をした踊り手がまじっていました。
「ほう、見事な若侍じゃな」
「うん、大した若侍じゃ」
と、みんながほめます。
それに踊る手ぶりや体の動かし方が、なかなか見事です。
やがて夜もふけたころ、たいこの音もやみ、
踊り手たちの輪もとけて盆踊りが終わりました。
みんなはまわりのむしろの上に座って、ホッと汗をふいています。
「さあ、だれが一番うまく化けて、うまく踊ったかな」
見物していた人たちが、
一番良いと思った人を決める事になりました。
やっこさん、お姫さま、ひょっとこも、人気がありましたが、
一番になったのはあの若侍の踊りでした。
「ほんとに、見事じゃったのう」
ごほうびのお酒を入れた樽が、若侍の前に並べられました。

もちろん、食べきれないほどのごちそうも出されました。
「そら、お祝いじゃ。飲め、飲め、いくらでも飲め」
たくさんの酒をすすめられた若侍は、
たちまち酔っぱらってしまいました。
そして、ゴロンと横になりました。
すると体の後ろの方から、長い尻尾がポックリと出てきました。
「ほれ、あれあれ、あの尻尾は、キツネだぞ」
「やっぱり、キツネのおこんじゃ」
そこでみんなはしめたとばかりにキツネのおこんを捕まえて、
なわでしばってしまいました。

「さあ、おこん。もう逃げられないぞ、覚悟しろ!」
「いたずら者の尻尾を、切ってやる!」
おこんギツネは、すっかりキツネの姿に戻って、
「尻尾ばかりは、ごかんべんを。尻尾は、キツネの宝物です。
どうか、許してください。コーン、コーン」
と、頭を下げました。
「では、もういたずらはしないか?」
「はいはい、もう二度といたしません。コーン、コーン」
おこんギツネは、一生懸命にあやまりました。
そこでみんなは尻尾を切るのをやめて、
なわをといてやりました。

喜んだおこんギツネは何度もお礼をいって、
頭と尻尾をフリフリ、森の奥へ逃げていきました。
コーン、コーン
おしまい
むかしむかし、ある村に、
人を化かしていたずらをするキツネがいました。

村人たちの中には、ドロのだんごを食べさせられたという人や、
お風呂だと言われてこやしのおけに入れられた人など、
色々ないたずらをされる人がふえてきました。
そこで、村人たちは、
「なんとかしてキツネをこらしめ、
いたずらをやめさせなければいけない」
と、言い出しました。
それには、おこんギツネというキツネの親分を
つかまえなくてはいけないのですが、
そのキツネはかしこくて、なかなか捕まりません。

すると、ある若者が、
「今度の盆踊りで化け比べをすれば、
化けるのが好きなおこんギツネは、きっと出てくるよ」
と、言いました。
おこんギツネをおびき出すために、
今年の盆踊りでは特別に工夫をこらして、
いろいろな姿に化けて踊って一番うまく化けた者には
ほうびをやろうというのでした。
「ほう、それはおもしろい」
と、みんなは賛成しました。
そこで踊りに出る人たちは、こっそりいろんな用意をしました。
そしていよいよ盆踊りの夜、
村人たちは森のおみやの前の広場に集まりました。
たいこがなりひびき、歌声が流れていきます。
♪よいやさ、よいやさ。
♪よいやさ、よいやさ。

みんなは輪になって、グルグルと踊りまわっています。
カゴを背負った、花売り娘。
槍をかついだ、やっこさん。
美しい、お姫さま。
ひょっとこのお面の男。
ひげを生やしたお侍。
お坊さん、赤鬼、金太郎など。
色々な姿に変装した、踊り手たちがいます。
その向こうには、ごほうびにもらうお酒の樽や
焼き鳥のごちそうなどが、たくさん並べてあります。
踊りまわるうちに、お姫さまとひょっとこがぶつかったり、
お侍が転んだひょうしに立派な口ひげを落としたりして、
見物している人たちはドッと笑い転げています。
するといつのまにか踊りの輪の中に、
立派な若いお侍の姿をした踊り手がまじっていました。
「ほう、見事な若侍じゃな」
「うん、大した若侍じゃ」
と、みんながほめます。
それに踊る手ぶりや体の動かし方が、なかなか見事です。
やがて夜もふけたころ、たいこの音もやみ、
踊り手たちの輪もとけて盆踊りが終わりました。
みんなはまわりのむしろの上に座って、ホッと汗をふいています。
「さあ、だれが一番うまく化けて、うまく踊ったかな」
見物していた人たちが、
一番良いと思った人を決める事になりました。
やっこさん、お姫さま、ひょっとこも、人気がありましたが、
一番になったのはあの若侍の踊りでした。
「ほんとに、見事じゃったのう」
ごほうびのお酒を入れた樽が、若侍の前に並べられました。

もちろん、食べきれないほどのごちそうも出されました。
「そら、お祝いじゃ。飲め、飲め、いくらでも飲め」
たくさんの酒をすすめられた若侍は、
たちまち酔っぱらってしまいました。
そして、ゴロンと横になりました。
すると体の後ろの方から、長い尻尾がポックリと出てきました。
「ほれ、あれあれ、あの尻尾は、キツネだぞ」
「やっぱり、キツネのおこんじゃ」
そこでみんなはしめたとばかりにキツネのおこんを捕まえて、
なわでしばってしまいました。

「さあ、おこん。もう逃げられないぞ、覚悟しろ!」
「いたずら者の尻尾を、切ってやる!」
おこんギツネは、すっかりキツネの姿に戻って、
「尻尾ばかりは、ごかんべんを。尻尾は、キツネの宝物です。
どうか、許してください。コーン、コーン」
と、頭を下げました。
「では、もういたずらはしないか?」
「はいはい、もう二度といたしません。コーン、コーン」
おこんギツネは、一生懸命にあやまりました。
そこでみんなは尻尾を切るのをやめて、
なわをといてやりました。

喜んだおこんギツネは何度もお礼をいって、
頭と尻尾をフリフリ、森の奥へ逃げていきました。
コーン、コーン
おしまい
2014年10月30日
ききみみ・・・昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
果報者と阿呆もの
むかしむかし、
長門の国(ながとのくに→山口県)の北浦のある里に、
とても貧しい夫婦が住んでいました。

二人はわずかな田んぼをたがやし、
山から拾ってきた薪(たきぎ)を売って、
ようやくその日の暮らしをたてていました。
ある日の事、だんなが女房にこんな事を言いました。
「毎日毎日、汗水流して働いているのに、
わしらの暮らしは少しも良くならんな。
わしは、もう働くのにあきてしもうた」
すると女房が、こう言いました。
「確かに、そうですね。
そう言えばこの間、大寧寺(だいねいじ)の和尚さんが
説教で『果報は寝て待て』と言っていましたよ。
あわてずに寝て待っていれば、
良い事は向こうからやって来るんだそうです。
あなたもひとつ、果報を寝て待ってはどうですか?」
「なるほど、寝て待てばいいのか。そいつは楽だ」
そこでだんなは、その次の日から寝てばかりいました。
しかし果報は、いつまでたってもやって来ません。
そんなある満月の夜、
寝ながら果報を待っていただんなが大声で叫びました。
「おい、こっちへ来てみろ。ほれほれ、この天井窓から、
お月さんのウサギが餅をついとるのがよく見えるぞ」
「あら、ほんとうね」
確かに、天井窓からお月さんのウサギがはっきりと見えました。

さて、この話がたちまち村中に広がり、
月夜の晩には大勢の村人たちが夫婦の家へ集まって来て、
天井窓から月をのぞくようになりました。
それがやがて、
「あの家の天井窓からウサギの餅つきを拝んだ者には、
果報が来るそうだ」
と、言ううわさなって、
だんだん遠くからも人が集まって来るようになりました。

そしてお月さんを見に来た人々がお礼のお金やお供物を置いて行くので、
夫婦はたちまち大金持ちになったのです。
ついに、果報がやってきたのです。

喜んだ二人は、ぼろ家をこわして立派な家を建てると、
もっとお金がもうかるようにと、十も二十も天井窓を取付けました。
しかしどうしたわけか、
新しい天井窓からはいくらお月さんをのぞいても、
ちっともウサギの餅つきが見えないのです。

やがて夫婦の家には、誰も来なくなりました。
それどころか雨が降ると天井窓から雨もりがして、
雨水で家が腐り始めたのです。

困った二人は、大寧寺の和尚さんのところへ相談に行きました。
すると和尚さんは、大声で笑いながら、

「あはははははは。
人間は欲を起こすと、果報者も阿呆者になるという事じゃ」
と、言ったそうです。
おしまい
果報者と阿呆もの
むかしむかし、
長門の国(ながとのくに→山口県)の北浦のある里に、
とても貧しい夫婦が住んでいました。

二人はわずかな田んぼをたがやし、
山から拾ってきた薪(たきぎ)を売って、
ようやくその日の暮らしをたてていました。
ある日の事、だんなが女房にこんな事を言いました。
「毎日毎日、汗水流して働いているのに、
わしらの暮らしは少しも良くならんな。
わしは、もう働くのにあきてしもうた」
すると女房が、こう言いました。
「確かに、そうですね。
そう言えばこの間、大寧寺(だいねいじ)の和尚さんが
説教で『果報は寝て待て』と言っていましたよ。
あわてずに寝て待っていれば、
良い事は向こうからやって来るんだそうです。
あなたもひとつ、果報を寝て待ってはどうですか?」
「なるほど、寝て待てばいいのか。そいつは楽だ」
そこでだんなは、その次の日から寝てばかりいました。
しかし果報は、いつまでたってもやって来ません。
そんなある満月の夜、
寝ながら果報を待っていただんなが大声で叫びました。
「おい、こっちへ来てみろ。ほれほれ、この天井窓から、
お月さんのウサギが餅をついとるのがよく見えるぞ」
「あら、ほんとうね」
確かに、天井窓からお月さんのウサギがはっきりと見えました。

さて、この話がたちまち村中に広がり、
月夜の晩には大勢の村人たちが夫婦の家へ集まって来て、
天井窓から月をのぞくようになりました。
それがやがて、
「あの家の天井窓からウサギの餅つきを拝んだ者には、
果報が来るそうだ」
と、言ううわさなって、
だんだん遠くからも人が集まって来るようになりました。

そしてお月さんを見に来た人々がお礼のお金やお供物を置いて行くので、
夫婦はたちまち大金持ちになったのです。
ついに、果報がやってきたのです。

喜んだ二人は、ぼろ家をこわして立派な家を建てると、
もっとお金がもうかるようにと、十も二十も天井窓を取付けました。
しかしどうしたわけか、
新しい天井窓からはいくらお月さんをのぞいても、
ちっともウサギの餅つきが見えないのです。

やがて夫婦の家には、誰も来なくなりました。
それどころか雨が降ると天井窓から雨もりがして、
雨水で家が腐り始めたのです。

困った二人は、大寧寺の和尚さんのところへ相談に行きました。
すると和尚さんは、大声で笑いながら、

「あはははははは。
人間は欲を起こすと、果報者も阿呆者になるという事じゃ」
と、言ったそうです。
おしまい
2014年10月28日
ききみみ・・・昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
しずが浦の狸

むかしむかし、青海島(おうみしま)というところに、
一人の漁師が八歳になる娘と二人で暮らしていました。
娘の名前は『おしず』で、とても心やさしい娘です。
ある日の事、この島に来た猟師が子ダヌキを生け捕りにしました。
猟師はお昼ご飯に、その子ダヌキをタヌキ汁にしようと考えました。
するとこれを見たおしずが子ダヌキを可愛そうに思って、
父親にせがんで子ダヌキを買い取ってもらったのです。

おしずは子ダヌキを裏山に連れて行くと、逃がしてやりました。
「もう、人間に捕まったら駄目だよ」
おしずのおかげで命拾いをした子ダヌキは、
何度も何度も頭を下げて山奥へと帰って行きました。
さて、それから十年後。
戦に破れて傷を負った一人の若い落武者が、
この島に逃れて来ました。
それを見つけたおしずが親身になって看護した為、
やがて落ち武者の若者は元気になり、
それが縁で二人は夫婦になったのです。

ですが、やがて落ち武者狩りが始まり、
追手がこの島までやって来たのです。
そこで父親は二人を舟に乗せると、
こっそりと九州へ逃がしてやりました。
二人がいなくなり一人ぼっちになった父親は、
とてもさびしい毎日を送りました。
そんなある寒い夜の事、父親が家に帰ってみると、
不思議な事に家の中は灯りがともり、
ろばたの火が温かく燃えていたのです。
「おや? 一体誰が?」
父親が家の中を見てみると、
なんとそこには十年前の子ダヌキだったあのタヌキが、
父親の大好きなどぶろくを持って座っていたのです。

父親がさびしい毎日を送っている事を知ったタヌキが、
父親をなぐさめようとやって来たのでした。
それからタヌキは、毎日どぶろくを持って父親の家にやって来ました。
しばらくしたある日、九州へ行ったおしず夫婦が、
父親を迎えに島へ帰って来ました。
「お父さん、九州で新しい家を見つけました。
そこで一緒に暮らしましょう」
そして満月の晩、三人は舟に乗って九州へ行く事にしました。
その時、あのタヌキが裏山に駆け上り、
三人を見送りながら腹包みを打ち鳴らしたのです。

♪ポンポコポン
♪ポンポコポン
♪ポンポコポンのポンポン
それ以来、タヌキは満月になると九州へ行った三人を思い出すのか、
三人が舟で旅立った浜には満月になると
タヌキの腹包みが鳴りひびいたそうです。
人々はその浜をおしずの名前を取って、
『しずが浦』と呼ぶ様になりました。
おしまい
しずが浦の狸

むかしむかし、青海島(おうみしま)というところに、
一人の漁師が八歳になる娘と二人で暮らしていました。
娘の名前は『おしず』で、とても心やさしい娘です。
ある日の事、この島に来た猟師が子ダヌキを生け捕りにしました。
猟師はお昼ご飯に、その子ダヌキをタヌキ汁にしようと考えました。
するとこれを見たおしずが子ダヌキを可愛そうに思って、
父親にせがんで子ダヌキを買い取ってもらったのです。

おしずは子ダヌキを裏山に連れて行くと、逃がしてやりました。
「もう、人間に捕まったら駄目だよ」
おしずのおかげで命拾いをした子ダヌキは、
何度も何度も頭を下げて山奥へと帰って行きました。
さて、それから十年後。
戦に破れて傷を負った一人の若い落武者が、
この島に逃れて来ました。
それを見つけたおしずが親身になって看護した為、
やがて落ち武者の若者は元気になり、
それが縁で二人は夫婦になったのです。

ですが、やがて落ち武者狩りが始まり、
追手がこの島までやって来たのです。
そこで父親は二人を舟に乗せると、
こっそりと九州へ逃がしてやりました。
二人がいなくなり一人ぼっちになった父親は、
とてもさびしい毎日を送りました。
そんなある寒い夜の事、父親が家に帰ってみると、
不思議な事に家の中は灯りがともり、
ろばたの火が温かく燃えていたのです。
「おや? 一体誰が?」
父親が家の中を見てみると、
なんとそこには十年前の子ダヌキだったあのタヌキが、
父親の大好きなどぶろくを持って座っていたのです。

父親がさびしい毎日を送っている事を知ったタヌキが、
父親をなぐさめようとやって来たのでした。
それからタヌキは、毎日どぶろくを持って父親の家にやって来ました。
しばらくしたある日、九州へ行ったおしず夫婦が、
父親を迎えに島へ帰って来ました。
「お父さん、九州で新しい家を見つけました。
そこで一緒に暮らしましょう」
そして満月の晩、三人は舟に乗って九州へ行く事にしました。
その時、あのタヌキが裏山に駆け上り、
三人を見送りながら腹包みを打ち鳴らしたのです。

♪ポンポコポン
♪ポンポコポン
♪ポンポコポンのポンポン
それ以来、タヌキは満月になると九州へ行った三人を思い出すのか、
三人が舟で旅立った浜には満月になると
タヌキの腹包みが鳴りひびいたそうです。
人々はその浜をおしずの名前を取って、
『しずが浦』と呼ぶ様になりました。
おしまい
2014年10月18日
ききみみ・・・昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
竹の子童子
むかしむかし、三ちゃんという、おけ屋の小僧さんがいました。
ある日の事、三ちゃんは竹やぶへ竹を切りに行きました。

「どの竹を切ろうかな?」
三ちゃんがひとりごとを言うと、後ろの方から、
「・・・三ちゃん、・・・三ちゃん」
と、小さな声も聞こえました。
「おや、だれだろう?」
三ちゃんは、グルリとあたりを見回しました。
しかし、誰もいません。
ただ竹が、ザワザワとゆれるばかりです。
「なんだ、誰もいないじゃないか」
三ちゃんが歩き出すと、また、
「三ちゃあん、三ちゃあん」
と、さっきよりも大きな声が聞こえるのです。
「誰だい? さっきから呼んでるのは?
どこにかくれているんだ?」
三ちゃんが言うと、すぐそばの竹が答えました。
「ここだよ、ここだよ。この竹の中だよ」
「この竹の中?」
三ちゃんは、竹に耳をつけてみました。
すると竹の中から、はっきりと声が聞こえてきます。
「三ちゃん、お願いだよ。この竹を切っとくれ」
そこで三ちゃんは、その竹を切り倒してみました。
すると竹の中から、小さな小さな男の子が飛びだしてきたのです。

「わぁーい、助かった。ありがとう!」
その男の子は、三ちゃんの小指ぐらいの大きさです。
「お前は、何者だ?!」
「ぼくは、天の子どもだよ」
小さな男の子は、
ピョンと三ちゃんの手のひらに飛び乗りました。
「ゆうべ、流れ星に乗って遊んでいたら、
いじわるな竹がぼくを閉じこめてしまったんだ。
でも三ちゃんのおかげで、助かったよ。これでやっと、天に帰れる」
「そうか、それはよかったね。でもどうして、ぼくの名まえを知ってるの?」
「天の子はね、世界中の事をみんな知っているんだよ」
「ふーん、すごいね。それで、きみの名前は?」
「ぼくの名前は、竹の子童子(たけのこどうじ)だよ」
「竹の子童子か。いくつ?」
「ぼくの年かい? まだ、たったの千二百三十四才だよ」
「うへぇ!」
三ちゃんがビックリすると、
竹の子童子はニコニコして言いました。
「助けてもらったお礼に、三ちゃんの願いをかなえてあげるよ」
「ほんとうかい?」
「ほんとうさ。天の子は、うそをつかないんだ。
それで、何が願いだい?」
三ちゃんは、しばらく考えてから答えました。
「ぼくを、お侍にしておくれ。
強いお侍になって武者修行(むしゃしゅぎょう)にいきたい」

「よし、じゃ、目をつぶって」
三ちゃんが目をつぶると、
竹の子童子が大きな声で言いました。
「竹の子、竹の子、三ちゃんをお侍にしておくれ。
・・・ほら三ちゃん、お侍になったよ」
三ちゃんが目を開けると、そこはにぎやかな京の都で、
三ちゃんはいつの間にか立派なお侍になっていました。
「わあ、ほんとうにお侍だ! 竹の子童子、ありがとう」
三ちゃんが手のひらを見ると、竹の子童子はいなくなっていました。
おしまい
竹の子童子
むかしむかし、三ちゃんという、おけ屋の小僧さんがいました。
ある日の事、三ちゃんは竹やぶへ竹を切りに行きました。

「どの竹を切ろうかな?」
三ちゃんがひとりごとを言うと、後ろの方から、
「・・・三ちゃん、・・・三ちゃん」
と、小さな声も聞こえました。
「おや、だれだろう?」
三ちゃんは、グルリとあたりを見回しました。
しかし、誰もいません。
ただ竹が、ザワザワとゆれるばかりです。
「なんだ、誰もいないじゃないか」
三ちゃんが歩き出すと、また、
「三ちゃあん、三ちゃあん」
と、さっきよりも大きな声が聞こえるのです。
「誰だい? さっきから呼んでるのは?
どこにかくれているんだ?」
三ちゃんが言うと、すぐそばの竹が答えました。
「ここだよ、ここだよ。この竹の中だよ」
「この竹の中?」
三ちゃんは、竹に耳をつけてみました。
すると竹の中から、はっきりと声が聞こえてきます。
「三ちゃん、お願いだよ。この竹を切っとくれ」
そこで三ちゃんは、その竹を切り倒してみました。
すると竹の中から、小さな小さな男の子が飛びだしてきたのです。

「わぁーい、助かった。ありがとう!」
その男の子は、三ちゃんの小指ぐらいの大きさです。
「お前は、何者だ?!」
「ぼくは、天の子どもだよ」
小さな男の子は、
ピョンと三ちゃんの手のひらに飛び乗りました。
「ゆうべ、流れ星に乗って遊んでいたら、
いじわるな竹がぼくを閉じこめてしまったんだ。
でも三ちゃんのおかげで、助かったよ。これでやっと、天に帰れる」
「そうか、それはよかったね。でもどうして、ぼくの名まえを知ってるの?」
「天の子はね、世界中の事をみんな知っているんだよ」
「ふーん、すごいね。それで、きみの名前は?」
「ぼくの名前は、竹の子童子(たけのこどうじ)だよ」
「竹の子童子か。いくつ?」
「ぼくの年かい? まだ、たったの千二百三十四才だよ」
「うへぇ!」
三ちゃんがビックリすると、
竹の子童子はニコニコして言いました。
「助けてもらったお礼に、三ちゃんの願いをかなえてあげるよ」
「ほんとうかい?」
「ほんとうさ。天の子は、うそをつかないんだ。
それで、何が願いだい?」
三ちゃんは、しばらく考えてから答えました。
「ぼくを、お侍にしておくれ。
強いお侍になって武者修行(むしゃしゅぎょう)にいきたい」

「よし、じゃ、目をつぶって」
三ちゃんが目をつぶると、
竹の子童子が大きな声で言いました。
「竹の子、竹の子、三ちゃんをお侍にしておくれ。
・・・ほら三ちゃん、お侍になったよ」
三ちゃんが目を開けると、そこはにぎやかな京の都で、
三ちゃんはいつの間にか立派なお侍になっていました。
「わあ、ほんとうにお侍だ! 竹の子童子、ありがとう」
三ちゃんが手のひらを見ると、竹の子童子はいなくなっていました。
おしまい
2014年10月17日
ききみみ・・・昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
三笠山
むかしむかし、木曽(きそ)の山中に、
天狗(てんぐ)が住んでいました。

天狗は毎日、御嶽山(おんたけさん)のてっぺんに寝そべって
富士山をながめては、
(わしの力で、あの富士山よりも高くて立派な山をつくりたいな)
と、考えていました。
そんなある日の事、天狗はこんな事を思いつきました。
(富士山よりも高くて立派な山を一から作るのは大変だが、
この山のてっぺんにほかの山を持ってきて三つ笠(かさ)のように並べたら、
きっと富士山よりも高くて立派な山になるに違いない)
そこで天狗は真夜中になると、形の良い山を探しました。
三岳村(みたけむら)にやってきた天狗は、
倉越山(くらごえやま)に目をつけて、
ためしに倉越山を御嶽山(おんたけさん)のてっぺんに乗せてみました。
すると、なかなかの良い出来です。

「よし、この分なら、夜明けまでには出来上がるだろう。
とりあえず、倉越山は元に戻してと」
天狗はすっかり安心して、少し休むつもりで横になると、
そのままグーグーと眠ってしまいました。
やがて朝が来て、
「コケコッコー!」
と、一番どりが鳴きました。
「しまった! もうそんな時間か!」
天狗はあわてて飛び起きたものの、東の空はすでに明るくなっており、
おまけに朝の早い百姓に見つかってしまったのです。
ここあたりに住む天狗は、
人間に姿を見られてはいけない決まりになっています。
「もう少しで、富士山よりも立派な三笠山が出来たのに!」
天狗はそう叫びながら山の方へ逃げて行き、
それっきり二度と姿を現わしませんでした。
この時からこの山を、三笠山と呼ぶようになったそうです。

おしまい
三笠山
むかしむかし、木曽(きそ)の山中に、
天狗(てんぐ)が住んでいました。

天狗は毎日、御嶽山(おんたけさん)のてっぺんに寝そべって
富士山をながめては、
(わしの力で、あの富士山よりも高くて立派な山をつくりたいな)
と、考えていました。
そんなある日の事、天狗はこんな事を思いつきました。
(富士山よりも高くて立派な山を一から作るのは大変だが、
この山のてっぺんにほかの山を持ってきて三つ笠(かさ)のように並べたら、
きっと富士山よりも高くて立派な山になるに違いない)
そこで天狗は真夜中になると、形の良い山を探しました。
三岳村(みたけむら)にやってきた天狗は、
倉越山(くらごえやま)に目をつけて、
ためしに倉越山を御嶽山(おんたけさん)のてっぺんに乗せてみました。
すると、なかなかの良い出来です。

「よし、この分なら、夜明けまでには出来上がるだろう。
とりあえず、倉越山は元に戻してと」
天狗はすっかり安心して、少し休むつもりで横になると、
そのままグーグーと眠ってしまいました。
やがて朝が来て、
「コケコッコー!」
と、一番どりが鳴きました。
「しまった! もうそんな時間か!」
天狗はあわてて飛び起きたものの、東の空はすでに明るくなっており、
おまけに朝の早い百姓に見つかってしまったのです。
ここあたりに住む天狗は、
人間に姿を見られてはいけない決まりになっています。
「もう少しで、富士山よりも立派な三笠山が出来たのに!」
天狗はそう叫びながら山の方へ逃げて行き、
それっきり二度と姿を現わしませんでした。
この時からこの山を、三笠山と呼ぶようになったそうです。

おしまい
2014年10月16日
聞き耳・・・昔話♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦
ききみみあんこの今日のお話は~
ふるやのもり

むかしむかし、雨の降る暗い晩の事、
おじいさんが子どもたちに話を聞かせていました。
「じいさま、一番こわいもの、なんだ?」
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうが一番こわい」
ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを
盗もうと屋根裏にひそんでいました。
どろぼうは、これを聞いてニヤリ。
(ほほう。このおれさまが、一番こわいだと)
「じいさま、けもので一番こわいもの、なんだ?」
「けものならば、・・・オオカミだの」
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」
「そりゃ、ふるやのもりだ」

ウマを食べようとウマ小屋にひそんでいたオオカミは、
それを聞いておどろきました。
ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる雨もりの事です。
だけどオオカミは、そんな事とは知りません。

「おらよりこわいふるやのもりとは、いったいどんな化物だ?」
と、ガタガタふるえ出しました。
屋根裏のどろぼうも話を聞いて、ヒザがガクガクふるえています。
「ふるやのもりというのは、どんな化物だ?」
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もりが首にポタリと落ちました。
「ヒェーーッ! で、でたあー!」
どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン!
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりだっ!」
オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、
ウマ小屋から飛び出しました。
振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、
オオカミは振り落とそうとメチャクチャに走り続けます。

夜明けごろ、うまいぐあいに突き出ている木の枝を見つけたどろぼうは、
「とりゃー!」
と、飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。
「たっ、助かった」
オオカミの方は背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。
友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」
と、トラのところへ出かけました。
話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、
いつもいばっているオオカミの前でそんな事は言えません。
「ふるやのもりという化け物、必ずわしが退治してやる。安心せい」
トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。
すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
オオカミはそれを見て、ガタガタとふるえ出しました。
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」
トラは、こわいのをガマンして、
「ウォーッ! ウォーッ!」
と、ほえながら木をゆさぶりました。
するとどろぼうが、二匹の上にドシン! と落ちてきました。
「キャーン!」
「ニャーン!」
トラとオオカミはなさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。

どろぼうは地面に腰を打ちつけて大けがをし、
オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って
遠い国まで逃げて行って二度と帰ってはきませんでした。
おしまい
ふるやのもり

むかしむかし、雨の降る暗い晩の事、
おじいさんが子どもたちに話を聞かせていました。
「じいさま、一番こわいもの、なんだ?」
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうが一番こわい」
ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを
盗もうと屋根裏にひそんでいました。
どろぼうは、これを聞いてニヤリ。
(ほほう。このおれさまが、一番こわいだと)
「じいさま、けもので一番こわいもの、なんだ?」
「けものならば、・・・オオカミだの」
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」
「そりゃ、ふるやのもりだ」

ウマを食べようとウマ小屋にひそんでいたオオカミは、
それを聞いておどろきました。
ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる雨もりの事です。
だけどオオカミは、そんな事とは知りません。

「おらよりこわいふるやのもりとは、いったいどんな化物だ?」
と、ガタガタふるえ出しました。
屋根裏のどろぼうも話を聞いて、ヒザがガクガクふるえています。
「ふるやのもりというのは、どんな化物だ?」
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もりが首にポタリと落ちました。
「ヒェーーッ! で、でたあー!」
どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン!
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりだっ!」
オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、
ウマ小屋から飛び出しました。
振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、
オオカミは振り落とそうとメチャクチャに走り続けます。

夜明けごろ、うまいぐあいに突き出ている木の枝を見つけたどろぼうは、
「とりゃー!」
と、飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。
「たっ、助かった」
オオカミの方は背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。
友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」
と、トラのところへ出かけました。
話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、
いつもいばっているオオカミの前でそんな事は言えません。
「ふるやのもりという化け物、必ずわしが退治してやる。安心せい」
トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。
すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
オオカミはそれを見て、ガタガタとふるえ出しました。
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」
トラは、こわいのをガマンして、
「ウォーッ! ウォーッ!」
と、ほえながら木をゆさぶりました。
するとどろぼうが、二匹の上にドシン! と落ちてきました。
「キャーン!」
「ニャーン!」
トラとオオカミはなさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。

どろぼうは地面に腰を打ちつけて大けがをし、
オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って
遠い国まで逃げて行って二度と帰ってはきませんでした。
おしまい
2014年10月14日
ききみみ…昔話♪
ききみみあんこの今日のお話は~
どうも と、こうも
むかし江戸の町に、『どうも』」という医者と、
『こうも』という医者が住んでいました。


二人とも腕が良く、日本一の医者と言われていました。
ところが、日本一が二人もいるのは変です。
そこで二人はいつも、
「わしが、日本一の医者じゃ」
「いいや、わしが、日本一の医者よ」
と、けんかをしていました。
ある日の事、どちらが本当の日本一か、
二人は腕比べをすることにしました。
まず、どうもが言いました。
「切った腕を、すぐにつなぐ事が出来るか?」
「そんな事は、たやすい事よ」
「それなら、やってみろ」
どうもが自分の腕を、刀で切り落としました。
するとこうもが、たちまちどうもの腕をつなぎました。
つないだ腕は元通りで、つないだあとが全くわかりません。
「次は、お前の番だ」
今度は、こうもが自分の腕を刀で切り落としました。
するとどうもが、すぐに腕をつなぎました。
これもつないだあとがわからないくらい、上手につないであります。
どっちも見事な腕前で、これではどちらが日本一かわかりません。
すると、こうもが言いました。
「腕をつないだくらいでは、腕比べにならん。
次は首のつなぎ比べでどうじゃ?」
「よかろう。たやすい事よ」

すると、こうもがどうもの首を切って、どうもを殺してしまいました。
まわりで見物していた人々は、ビックリです。
でも、こうもは、
「みんな、おどろく事はない」
と、たちまちどうもの首をつないで生き返らせました。
「おおっ、これは見事!」
みんなは、手をたたいて感心しました。
「今度は、わしの番じゃ」
次は、どうもがこうもの首を切りました。
そしてどうもも、たちまちこうもの首を元通りにつないで
生き返らせました。
どちらも見事な腕前で、なかなか勝負がつきません。
「うーん。代わりばんこでは、勝負にならん。
今度は両方いっぺんに、首を切ってみてはどうじゃ?
そしてはやく首をつないだ方が、勝ちじゃ」
どうもが言うと、こうもも賛成しました。
「それは、おもしろい。では、一、二、三! で、はじめるぞ」
「おおっ」
「それ、一、二、三!」
二人は一緒に、相手の首を切りました。
ところが両方一緒に首を切ってしまったので、
首をつないで生き返らせてくれる人がいません。

どうする事も出来ず、二人は死んでしまいました。
それからです。
『どうもこうもできない』
と、いう言葉が出来たのは。
おしまい
どうも と、こうも
むかし江戸の町に、『どうも』」という医者と、
『こうも』という医者が住んでいました。


二人とも腕が良く、日本一の医者と言われていました。
ところが、日本一が二人もいるのは変です。
そこで二人はいつも、
「わしが、日本一の医者じゃ」
「いいや、わしが、日本一の医者よ」
と、けんかをしていました。
ある日の事、どちらが本当の日本一か、
二人は腕比べをすることにしました。
まず、どうもが言いました。
「切った腕を、すぐにつなぐ事が出来るか?」
「そんな事は、たやすい事よ」
「それなら、やってみろ」
どうもが自分の腕を、刀で切り落としました。
するとこうもが、たちまちどうもの腕をつなぎました。
つないだ腕は元通りで、つないだあとが全くわかりません。
「次は、お前の番だ」
今度は、こうもが自分の腕を刀で切り落としました。
するとどうもが、すぐに腕をつなぎました。
これもつないだあとがわからないくらい、上手につないであります。
どっちも見事な腕前で、これではどちらが日本一かわかりません。
すると、こうもが言いました。
「腕をつないだくらいでは、腕比べにならん。
次は首のつなぎ比べでどうじゃ?」
「よかろう。たやすい事よ」

すると、こうもがどうもの首を切って、どうもを殺してしまいました。
まわりで見物していた人々は、ビックリです。
でも、こうもは、
「みんな、おどろく事はない」
と、たちまちどうもの首をつないで生き返らせました。
「おおっ、これは見事!」
みんなは、手をたたいて感心しました。
「今度は、わしの番じゃ」
次は、どうもがこうもの首を切りました。
そしてどうもも、たちまちこうもの首を元通りにつないで
生き返らせました。
どちらも見事な腕前で、なかなか勝負がつきません。
「うーん。代わりばんこでは、勝負にならん。
今度は両方いっぺんに、首を切ってみてはどうじゃ?
そしてはやく首をつないだ方が、勝ちじゃ」
どうもが言うと、こうもも賛成しました。
「それは、おもしろい。では、一、二、三! で、はじめるぞ」
「おおっ」
「それ、一、二、三!」
二人は一緒に、相手の首を切りました。
ところが両方一緒に首を切ってしまったので、
首をつないで生き返らせてくれる人がいません。

どうする事も出来ず、二人は死んでしまいました。
それからです。
『どうもこうもできない』
と、いう言葉が出来たのは。
おしまい
