2015年11月05日
【顔で心読む力、3歳半から 京大が解明、「子育ては顔合わせて」】ききみみあんこのこんな記事見つけました!

顔で心読む力、3歳半から 京大が解明、
「子育ては顔合わせて」
京都新聞 11月5日(木)10時30分配信
他人の顔から心を読み解くという人間に備わった能力が、
従来の説より早く3歳半ごろには芽生えていることを、
京都大教育学研究科の明和政子教授と
野生動物研究センターの平田聡教授らが明らかにした。
知性の発達過程の解明にもつながるという。
米科学誌に5日、発表する。
人間は赤ん坊や成人を問わず、飲み物を注ぐなど他人の行動を
前にすると、手元だけでなく顔に目を向けると分かっている。
今回、飲み物を注ぐと見せかけてこぼし、予想外の行動の原因である
他人の「心」を、顔から探るかを調べた。
成人と3歳半、1歳の計47人に対し、視線を検出する装置を使い実験。
顔の動きで注意を向けないよう行為者は無表情で行った。
その結果、成人では飲み物をこぼした後に行為者の顔を見直し、
3歳半でも見直す傾向があった。
一方、1歳はこぼした行動を見ても、顔を見直す視線の動きはなかった。
また、同じ実験をチンパンジーで実施しても視線の変化はなかった。
明和教授は「これまで言われていたより1年ほど早く、
心を読む能力が芽生え始めると分かった」と説明。
さらに他人の表情から心を読み解く能力は人間に特徴的と指摘し、
「幼児は大人の顔を見て、相手の心を理解しようとしていると裏付けられた。
子育てでは、しっかり顔を合わせてあげて」と呼びかける。
2015年08月15日
ききみみあんこの百物語♪
ききみみあんこの今夜のお話は・・・
ものいう布団
このお話は、小泉八雲の書いた「怪談」にも集話されているかなしいお話です。

むかしむかし、因幡の国(いなばのくに→鳥取県)の町に、
小さな宿屋がありました。
ある冬の晩の事。
この宿屋に泊まった男が、
真夜中に人の声がしたので目を覚ましました。
「兄さん、寒かろ」
「お前、寒かろ」
それは、ささやく様な子どもの声です。
「はて、どこの子どもだろう? この部屋には、誰もいないはずだが」
男は布団を抜け出して、隣の部屋の様子をうかがってみました。
「・・・・・・」
しかし、物音一つ聞こえてきません。
「おかしいな? 確かに聞こえたはずだが」
男がもう一度布団にもぐってねむろうとすると、
今度は耳元ではっきりとささやいたのです。

「兄さん、寒かろ」
「お前、寒かろ」
男はびっくりして飛び起きると、
急いで行灯(あんどん)の灯をつけましたが、部屋には誰もいません。
聞こえて来るのは、自分の心臓の音だけです。
男は行灯をつけたまま、横になりました。
するとまたしても、悲しい、ささやくような声がするのです。
「兄さん、寒かろ」
「お前、寒かろ」
何とその声は、かけ布団の中から聞こえて来るではありませんか。
男は布団を払いのけると、転がる様に部屋を飛び出して、
宿屋の主人のところへ駆けつけました。
「た、大変だ! 布団がものを言い出した!」
「はあ? そんな馬鹿な。お客さんは、夢でも見ていたんでしょう」
「夢ではない! 本当に、布団がものを言ったんだ!」
「はいはい。夢とは、そういうものですよ」
「だから、夢ではない!」
男がいくら説明しても、宿屋の主人はとりあってくれません。
それどころか、しまいには腹を立てて、
「縁起でもない! 悪いが、出て行ってもらいましょう!」
と、男を宿屋から追い出してしまったのです。
ところが次の晩、同じ部屋に泊まった客が真夜中に逃げ出して来て、
やっぱり同じ事を言うのです。
「おかしな客が、二度も続くとは。・・・まさか、本当に幽霊がいるはずは」
気になった主人はその部屋に行き、しばらく布団のそばに座ってみました。
すると、かけ布団から、ささやくような声が聞こえて来たのです。
「兄さん、寒かろ」
「お前、寒かろ」
びっくりした主人は、青くなって部屋から飛び出しました。
「や、やっ、やっぱり。ほっ、本当だったのか。
それにしても、こんな布団を売るなんて、とんでもない店だ!」
次の日、主人はさっそく布団を買った古着屋へ、
文句を言いに出かけました。
そこで主人は、この布団にまつわる、
とても悲しい話を聞かされたのです。
何でもこの町のはずれに、貧しい四人の親子が住んでいたのですが、
何日か前に病気で寝込んでいた父親が亡くなり、
続いて母親までも亡くなったのです。
あとには、六歳と四歳の兄弟だけが残されました。
身寄りのない兄弟は、その日その日の食べる物もなく、
たった一枚残された布団にもぐって、じっと寒さとひもじさに震えていました。
「兄さん、寒かろ」
やさしい弟が、布団を兄にかけてやろうとすると、
「お前、寒かろ」
と、兄がその布団を、弟の方にかけてやります。

けれども強欲な家主がやって来て、家賃の代わりに、
たった一枚の布団まで取りあげた上、
二人を家から追い出してしまったのです。
何日も食事をしていない二人には、もう歩く力もありません。
そして雪の降る夜、
近くの家の軒下で抱き合いながら死んでいったのです。
この事を知った町の人たちは、かわいそうな兄弟を
近くの観音さまにほうむってやったのです。
「そうだったのか。・・・かわいそうになあ」
宿屋の主人は観音さまにお参りをして、
かわいそうな兄弟の為に、お坊さんに来てもらってあらためて
お経をあげてやる事にしました。
それからというもの、この布団は何も言わなくなったそうです。
おしまい
ものいう布団
このお話は、小泉八雲の書いた「怪談」にも集話されているかなしいお話です。

むかしむかし、因幡の国(いなばのくに→鳥取県)の町に、
小さな宿屋がありました。
ある冬の晩の事。
この宿屋に泊まった男が、
真夜中に人の声がしたので目を覚ましました。
「兄さん、寒かろ」
「お前、寒かろ」
それは、ささやく様な子どもの声です。
「はて、どこの子どもだろう? この部屋には、誰もいないはずだが」
男は布団を抜け出して、隣の部屋の様子をうかがってみました。
「・・・・・・」
しかし、物音一つ聞こえてきません。
「おかしいな? 確かに聞こえたはずだが」
男がもう一度布団にもぐってねむろうとすると、
今度は耳元ではっきりとささやいたのです。

「兄さん、寒かろ」
「お前、寒かろ」
男はびっくりして飛び起きると、
急いで行灯(あんどん)の灯をつけましたが、部屋には誰もいません。
聞こえて来るのは、自分の心臓の音だけです。
男は行灯をつけたまま、横になりました。
するとまたしても、悲しい、ささやくような声がするのです。
「兄さん、寒かろ」
「お前、寒かろ」
何とその声は、かけ布団の中から聞こえて来るではありませんか。
男は布団を払いのけると、転がる様に部屋を飛び出して、
宿屋の主人のところへ駆けつけました。
「た、大変だ! 布団がものを言い出した!」
「はあ? そんな馬鹿な。お客さんは、夢でも見ていたんでしょう」
「夢ではない! 本当に、布団がものを言ったんだ!」
「はいはい。夢とは、そういうものですよ」
「だから、夢ではない!」
男がいくら説明しても、宿屋の主人はとりあってくれません。
それどころか、しまいには腹を立てて、
「縁起でもない! 悪いが、出て行ってもらいましょう!」
と、男を宿屋から追い出してしまったのです。
ところが次の晩、同じ部屋に泊まった客が真夜中に逃げ出して来て、
やっぱり同じ事を言うのです。
「おかしな客が、二度も続くとは。・・・まさか、本当に幽霊がいるはずは」
気になった主人はその部屋に行き、しばらく布団のそばに座ってみました。
すると、かけ布団から、ささやくような声が聞こえて来たのです。
「兄さん、寒かろ」
「お前、寒かろ」
びっくりした主人は、青くなって部屋から飛び出しました。
「や、やっ、やっぱり。ほっ、本当だったのか。
それにしても、こんな布団を売るなんて、とんでもない店だ!」
次の日、主人はさっそく布団を買った古着屋へ、
文句を言いに出かけました。
そこで主人は、この布団にまつわる、
とても悲しい話を聞かされたのです。
何でもこの町のはずれに、貧しい四人の親子が住んでいたのですが、
何日か前に病気で寝込んでいた父親が亡くなり、
続いて母親までも亡くなったのです。
あとには、六歳と四歳の兄弟だけが残されました。
身寄りのない兄弟は、その日その日の食べる物もなく、
たった一枚残された布団にもぐって、じっと寒さとひもじさに震えていました。
「兄さん、寒かろ」
やさしい弟が、布団を兄にかけてやろうとすると、
「お前、寒かろ」
と、兄がその布団を、弟の方にかけてやります。

けれども強欲な家主がやって来て、家賃の代わりに、
たった一枚の布団まで取りあげた上、
二人を家から追い出してしまったのです。
何日も食事をしていない二人には、もう歩く力もありません。
そして雪の降る夜、
近くの家の軒下で抱き合いながら死んでいったのです。
この事を知った町の人たちは、かわいそうな兄弟を
近くの観音さまにほうむってやったのです。
「そうだったのか。・・・かわいそうになあ」
宿屋の主人は観音さまにお参りをして、
かわいそうな兄弟の為に、お坊さんに来てもらってあらためて
お経をあげてやる事にしました。
それからというもの、この布団は何も言わなくなったそうです。
おしまい
2015年08月01日
ききみみあんこの百物語♪
ききみみあんこ今夜の百物語は・・・

朝顔
むかしむかし、江戸に、岡田弥八郎(おかだやはちろう)という
侍(さむらい)が住んでいました。
弥八郎(やはちろう)には、ただ一人の娘がいて、
その名をしずと言います。
しずは朝顔の花が大好きで、
十四才の時に朝顔のつぼみを見つけて、こんな歌をつくりました。

♪いかならん
♪色に咲くかと
♪あくる夜を
♪まつのとぼその
♪朝顔の花
父はこの歌をたんざくに書いて、妻に見せました。
「あの小さな胸に、
どんな色に花が咲くであろうと、次の朝を待つ心じゃ」
「はい、まこと素直に、うたわれております」
ところが娘のしずは、この年の冬にかぜをこじらせて、
そのまま死んでしまったのです。

残された父と母は、とても悲しみました。
さて、夏も近いある日の事。
母が何げなく娘の手箱(てばこ→小物入れ)を開けてみると、
中には小さな紙包みがいくつも入っていました。
そしてどの包みにも細いきれいな字で、
桃色、空色、しぼり(→青色の一種)、などと、
色の名が書きしるされていました。
一色ずつ紙にていねいに包んだ、その色の朝顔のタネです。
(ああ、娘はこのタネをまいて、
それぞれの色の美しい花の咲くのを、どれほど見たかった事でしょう)
そう思うと母はたまらなく、せつなくなりました。
「そうだわ。せめてこのタネをまいて、娘をとむらいましょう」
母は庭に、その朝顔のタネをまきました。
日がたってつるがのび、やがてつぼみがつきました。
ある夏の朝、
弥八郎(やはちろう)を仕事に送り出した母は、
ふと庭の朝顔を見ました。
すると美しい一輪の花がパッと咲いていて、
その花のそばに娘のしずが立っているではありませんか。
「おおっ。しず、しずかい?」
母が思わず声をかけると、
娘はうれしそうにニッコリほほ笑み、そして小さな声で、

「お花を、ありがとう」
と、言って、そのままスーッと消えてしまいました。
夕方になって父の弥八郎(やはちろう)が帰って来た時、
夕方にはしぼむはずの朝顔は、まだ美しい色で咲いていたという事です。

おしまい

朝顔
むかしむかし、江戸に、岡田弥八郎(おかだやはちろう)という
侍(さむらい)が住んでいました。
弥八郎(やはちろう)には、ただ一人の娘がいて、
その名をしずと言います。
しずは朝顔の花が大好きで、
十四才の時に朝顔のつぼみを見つけて、こんな歌をつくりました。

♪いかならん
♪色に咲くかと
♪あくる夜を
♪まつのとぼその
♪朝顔の花
父はこの歌をたんざくに書いて、妻に見せました。
「あの小さな胸に、
どんな色に花が咲くであろうと、次の朝を待つ心じゃ」
「はい、まこと素直に、うたわれております」
ところが娘のしずは、この年の冬にかぜをこじらせて、
そのまま死んでしまったのです。

残された父と母は、とても悲しみました。
さて、夏も近いある日の事。
母が何げなく娘の手箱(てばこ→小物入れ)を開けてみると、
中には小さな紙包みがいくつも入っていました。
そしてどの包みにも細いきれいな字で、
桃色、空色、しぼり(→青色の一種)、などと、
色の名が書きしるされていました。
一色ずつ紙にていねいに包んだ、その色の朝顔のタネです。
(ああ、娘はこのタネをまいて、
それぞれの色の美しい花の咲くのを、どれほど見たかった事でしょう)
そう思うと母はたまらなく、せつなくなりました。
「そうだわ。せめてこのタネをまいて、娘をとむらいましょう」
母は庭に、その朝顔のタネをまきました。
日がたってつるがのび、やがてつぼみがつきました。
ある夏の朝、
弥八郎(やはちろう)を仕事に送り出した母は、
ふと庭の朝顔を見ました。
すると美しい一輪の花がパッと咲いていて、
その花のそばに娘のしずが立っているではありませんか。
「おおっ。しず、しずかい?」
母が思わず声をかけると、
娘はうれしそうにニッコリほほ笑み、そして小さな声で、

「お花を、ありがとう」
と、言って、そのままスーッと消えてしまいました。
夕方になって父の弥八郎(やはちろう)が帰って来た時、
夕方にはしぼむはずの朝顔は、まだ美しい色で咲いていたという事です。

おしまい
2015年07月30日
ききみみあんこの百物語♪
ききみみあんこの今夜の百物語は・・・

魂のある人形
むかしむかし、江戸のある料理屋で、
三代春(みよはる)という三十歳になる女の人が働いていました。
ある時、三代春はお客から小さな人形をもらいました。
四、五歳くらいの女の子の姿をした、とても可愛らしい人形です。
三代春はこの人形を大変気に入り、自分で着物をつくっては人形に着せて、
我が子の様に可愛がっていました。
ところがある日、どうしてもお金に困る事があったので、
三代春は人形に何枚もの着物を着せて絹の布で大事に包むと、
立派な木の箱に入れて質屋に預けてお金を借りました。
そして人形をそのままにして、
三代春はお店をやめると十数年ぶりに実家へ戻り、母親と一緒に暮らし始めたのです。
さて、それから数ヶ月たった、春の夜の事。
三代春は、不思議な夢を見ました。
お店にいた時に可愛がっていた人形が夢に現れて、
こんな事を言うのです。
「あなたはお店をやめて、お母さんと楽しく暮らしていますが、
わたしは何枚も着物を着せられて、その上、絹の布でぐるぐる巻きにされて、
暑さと息苦しさで着物のそでを食いちぎって、やっと息をしています。
まっ暗な質屋の蔵から、早く出してください。
ああ、暑い。
ああ、苦しい。
早く、早く」
娘がうなされている声を聞いて、母親は三代春を起こしました。
「これ、どうしたんだい? 汗びっしょりでうなされて」
そして娘から、人形の話を聞いた母親は、
「お前は、なんて事をしたんだい。
いいかい、人形には魂があるんだよ。
それをそのまま質屋の蔵なんかに入れておくなんて、
うらまれたらどうするんだね。
お金が必要なら、兄さんの市蔵(いちぞう)に頼んで、
早く人形を出してもらわないと」
そう言って、ほかの町に住む三代春の兄のところへ出かけて行きました。
市蔵は母親の話を聞くと、すぐに質屋へ行ってお金を返し、
妹の三代春が預けていた人形を蔵から出してくれたのです。

市蔵は店先で、引き取った人形の木箱を開いてみました。
そしてくるんである絹の布をとくと、人形のそでが食いちぎられていました。
おしまい
少しは涼しくなっていただけたでしょうか・・・・・・・・・

魂のある人形
むかしむかし、江戸のある料理屋で、
三代春(みよはる)という三十歳になる女の人が働いていました。
ある時、三代春はお客から小さな人形をもらいました。
四、五歳くらいの女の子の姿をした、とても可愛らしい人形です。
三代春はこの人形を大変気に入り、自分で着物をつくっては人形に着せて、
我が子の様に可愛がっていました。
ところがある日、どうしてもお金に困る事があったので、
三代春は人形に何枚もの着物を着せて絹の布で大事に包むと、
立派な木の箱に入れて質屋に預けてお金を借りました。
そして人形をそのままにして、
三代春はお店をやめると十数年ぶりに実家へ戻り、母親と一緒に暮らし始めたのです。
さて、それから数ヶ月たった、春の夜の事。
三代春は、不思議な夢を見ました。
お店にいた時に可愛がっていた人形が夢に現れて、
こんな事を言うのです。
「あなたはお店をやめて、お母さんと楽しく暮らしていますが、
わたしは何枚も着物を着せられて、その上、絹の布でぐるぐる巻きにされて、
暑さと息苦しさで着物のそでを食いちぎって、やっと息をしています。
まっ暗な質屋の蔵から、早く出してください。
ああ、暑い。
ああ、苦しい。
早く、早く」
娘がうなされている声を聞いて、母親は三代春を起こしました。
「これ、どうしたんだい? 汗びっしょりでうなされて」
そして娘から、人形の話を聞いた母親は、
「お前は、なんて事をしたんだい。
いいかい、人形には魂があるんだよ。
それをそのまま質屋の蔵なんかに入れておくなんて、
うらまれたらどうするんだね。
お金が必要なら、兄さんの市蔵(いちぞう)に頼んで、
早く人形を出してもらわないと」
そう言って、ほかの町に住む三代春の兄のところへ出かけて行きました。
市蔵は母親の話を聞くと、すぐに質屋へ行ってお金を返し、
妹の三代春が預けていた人形を蔵から出してくれたのです。
市蔵は店先で、引き取った人形の木箱を開いてみました。
そしてくるんである絹の布をとくと、人形のそでが食いちぎられていました。
おしまい
少しは涼しくなっていただけたでしょうか・・・・・・・・・
2015年07月26日
【子供のころ怖かったものは?】ききみみあんこのこんな記事見つけました♪
子供のころ怖かったものは?Ads by Yahoo! JAPAN

1位にランクインしたのは「日本人形」。
幼い頃…でなくとも、たくさん並ぶと今でもそら恐ろしい
雰囲気がする1位にランクインしたのは「日本人形」。
幼い頃…でなくとも、たくさん並ぶと今でもそら恐ろしい雰囲気がする
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」という句のように、
恐怖によって意外なものがオバケに見えてしまうことがある。
大人になった今でこそ少ないだろうが、想像力豊かな子どもの頃は
「いろんなものがオバケに見えて怖い思いをした」という人も多いはず。
そこで編集部では、20~30代の男性200人に
「子どもの頃に怖かったもの」について、アンケート調査を行った。
■子どもの頃に怖かったものTOP10
(1~3位まで選んでもらい、1位を3pt、2位を2pt、3位を1ptとして集計 協力/アイリサーチ)
1位 日本人形 210pt
2位 能面 120pt
3位 人体模型 103pt
4位 トイレ 98pt
5位 マネキン 64pt
6位 夜の電柱 61pt
7位 ピエロ 57pt
8位 井戸 55pt
8位 仏壇 55pt
10位 押入れの中 49pt
上位を占めたのは、「日本人形」「能面」「人体模型」などの
“人体を模した造形物”。
また、暗闇を想起する「トイレ」「夜の電柱」「押入れの中」などもランクイン。
背筋を凍らせた理由は、以下のとおりだった。
【1位 日本人形 210pt】
「髪が伸びるとか言われていたから」(24歳)、
「表情が怖くて、よくお化けの番組でも取り上げられたりしているから」(35歳)と、
噂話やテレビ番組で怖くなった人の意見とともに、「不気味な存在感がある」(33歳)、
「今にも動き出しそうで怖かった」(36歳)のように人形に
“何か”を感じ取り、恐怖を感じたという声も多数。
【2位 能面 120pt】
「表情のない仮面に恐怖を感じたから」(35歳)、
「目つきが鋭くじっと見ていると目が合っているような気持ちになるので」(33歳)と、
表情に恐怖を覚えた人が多い。そのほか、「呪われそう」(37歳)という声も。
【3位 人体模型 103pt】
“学校の怪談”の定番「人体模型」については、
「夜の理科の実験室を連想するから」(29歳)、
「夜中に動きそうな感じがしたから」(35歳)のほか、
そのビジュアルから「見た目が怖い」(39歳)、
「人間の姿と臓器丸出しが気持ち悪い」(27歳)というコメントもあった。
【4位 トイレ 98pt】
「はなこさんを連想して」(34歳)とオバケを想像した人もいるが、
「ボットン便所でトイレに落ちるかと思っていたから」(37歳)、
「一人になるのが怖かったから」(39歳)、「狭い密室感が嫌」(29歳)と、
“狭い場所で一人になる”というシチュエーションに対する恐怖も寄せられた。
【5位 マネキン 64pt】
「無機質な感じが死体の様だったから」(38歳)、
「人ではないが、人の形をしているため」(26歳)と、
人の形でありながら人でないことに恐怖を感じた人が多かったようだ。
そのほか、6位【夜の電柱】「怪獣に見えるから」(35歳)、7位【ピエロ】「『IT』という映画の影響で怖くなった」(32歳)、8位【井戸】「貞子が出てきそうだから」(23歳)、9位【仏壇】「死のイメージが強いから」(30歳)、10位【押入れの中】「父親に叱られて閉じ込められた」(31歳)というコメントも。
ちなみに11位以下は、「鏡」「天井の木目」「お地蔵さま」「狛犬」。
「日本人形」や「能面」に対しては、「今でも怖い…」という人がいそうだが、
年末実家に帰った時には、昔の記憶をさかのぼり、
懐かしんでみるのも面白いかもしれない。

1位にランクインしたのは「日本人形」。
幼い頃…でなくとも、たくさん並ぶと今でもそら恐ろしい
雰囲気がする1位にランクインしたのは「日本人形」。
幼い頃…でなくとも、たくさん並ぶと今でもそら恐ろしい雰囲気がする
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」という句のように、
恐怖によって意外なものがオバケに見えてしまうことがある。
大人になった今でこそ少ないだろうが、想像力豊かな子どもの頃は
「いろんなものがオバケに見えて怖い思いをした」という人も多いはず。
そこで編集部では、20~30代の男性200人に
「子どもの頃に怖かったもの」について、アンケート調査を行った。
■子どもの頃に怖かったものTOP10
(1~3位まで選んでもらい、1位を3pt、2位を2pt、3位を1ptとして集計 協力/アイリサーチ)
1位 日本人形 210pt
2位 能面 120pt
3位 人体模型 103pt
4位 トイレ 98pt
5位 マネキン 64pt
6位 夜の電柱 61pt
7位 ピエロ 57pt
8位 井戸 55pt
8位 仏壇 55pt
10位 押入れの中 49pt
上位を占めたのは、「日本人形」「能面」「人体模型」などの
“人体を模した造形物”。
また、暗闇を想起する「トイレ」「夜の電柱」「押入れの中」などもランクイン。
背筋を凍らせた理由は、以下のとおりだった。
【1位 日本人形 210pt】
「髪が伸びるとか言われていたから」(24歳)、
「表情が怖くて、よくお化けの番組でも取り上げられたりしているから」(35歳)と、
噂話やテレビ番組で怖くなった人の意見とともに、「不気味な存在感がある」(33歳)、
「今にも動き出しそうで怖かった」(36歳)のように人形に
“何か”を感じ取り、恐怖を感じたという声も多数。
【2位 能面 120pt】
「表情のない仮面に恐怖を感じたから」(35歳)、
「目つきが鋭くじっと見ていると目が合っているような気持ちになるので」(33歳)と、
表情に恐怖を覚えた人が多い。そのほか、「呪われそう」(37歳)という声も。
【3位 人体模型 103pt】
“学校の怪談”の定番「人体模型」については、
「夜の理科の実験室を連想するから」(29歳)、
「夜中に動きそうな感じがしたから」(35歳)のほか、
そのビジュアルから「見た目が怖い」(39歳)、
「人間の姿と臓器丸出しが気持ち悪い」(27歳)というコメントもあった。
【4位 トイレ 98pt】
「はなこさんを連想して」(34歳)とオバケを想像した人もいるが、
「ボットン便所でトイレに落ちるかと思っていたから」(37歳)、
「一人になるのが怖かったから」(39歳)、「狭い密室感が嫌」(29歳)と、
“狭い場所で一人になる”というシチュエーションに対する恐怖も寄せられた。
【5位 マネキン 64pt】
「無機質な感じが死体の様だったから」(38歳)、
「人ではないが、人の形をしているため」(26歳)と、
人の形でありながら人でないことに恐怖を感じた人が多かったようだ。
そのほか、6位【夜の電柱】「怪獣に見えるから」(35歳)、7位【ピエロ】「『IT』という映画の影響で怖くなった」(32歳)、8位【井戸】「貞子が出てきそうだから」(23歳)、9位【仏壇】「死のイメージが強いから」(30歳)、10位【押入れの中】「父親に叱られて閉じ込められた」(31歳)というコメントも。
ちなみに11位以下は、「鏡」「天井の木目」「お地蔵さま」「狛犬」。
「日本人形」や「能面」に対しては、「今でも怖い…」という人がいそうだが、
年末実家に帰った時には、昔の記憶をさかのぼり、
懐かしんでみるのも面白いかもしれない。
2015年07月25日
ききみみあんこの百物語♪

ききみみ百物語…今夜のお話は?
亡者道
むかし、乗鞍岳(のりくらだけ)の西ふもとにある千町が原に、
猟が好きな百姓の平十郎(へいじゅうろう)がいました。
平十郎は秋の刈り入れが終わると、
さっそく大好きな猟へと出かけました。
平十郎が出かけた猟場は、青屋(あおや)から平金(ひらがね)に
通じる乗鞍岳のふもとの、桜が岡(さくらがおか)という亡者道(もうじゃみち)です。
亡者道とは死んだ人間があの世へ行く時に通る道で、
地元の人は怖がってめったに近寄らないさびしいところです。
ですが平十郎は気にする様子もなく、
のんきにかすみアミを張ってツグミをとっていました。
「霧が出てきたな」
小屋の中から様子を見ていると、白い霧の中を何かが通り過ぎ、
かすみアミの方から人の叫び声が聞こえてきました。
(いけねえ、誰か引っかかったな)
平十郎が小屋から出てかすみアミに近づくと、
何と、かすみアミに人間の生首が何個もかかっていたのです。
そして生首は平十郎に気づくと、
「・・・平十郎、・・・平十郎」
と、口々に叫び出しました。
びっくりした平十郎はあわてて小屋に戻ると、
震える手で小屋の戸を閉めてカギをかけました。
(何なんだ、あれは?!)
腰が抜けた平十郎が、その場でブルブル震えていると、
あの生首たちがふわふわと空中を漂いながら、

「平十郎、平十郎」
と、言いつつ、小屋の方へと近づいてきます。
平十郎が窓の外を見ると、空中に浮かんだ生首たちが
平十郎を見てニヤリと笑いました。
(神さま、仏さま、ご先祖さま。助けてくだせえ~)
生首たちはカギのかかっていない窓を口で開けると、
次々と小屋の中に入ってきました。
そして大口を開けて、平十郎に襲いかかろうとしています。
(神さま、仏さま、ご先祖さま。助けてくだせえ~!!)
そして生首たちが平十郎に噛み付こうとしたその時、
生首は平十郎に噛み付く直前で動きを止めると、
いまいましそうに言いました。

「お前は三日前に、仏さまのお下がりを食ったな。
・・・くやしいが、わしらでは捕える事が出来ん」
やがて霧が晴れると、恐ろしい生首たちはどこかに消えていました。
助かった平十郎は転がる様に山を降りて、
無事に自分の家へと戻りましたが、
それから原因不明の高熱を出して何日も寝込んだという事です。
おしまい
2015年07月10日
ききみみあんこの百物語♪
今夜のききみみあんこ百物語は・・・

約束の日
むかし、江戸の本所(ほんじょ)の『いろは長屋』に、
山口浪之介(やまぐちなみのすけ)と
光川新衛門(みつかわしんえもん)という浪人(ろうにん)が
一緒に暮らしていました。

二人は小さい頃からの友だちで、ずっと同じ殿さまに仕えていましたが、
殿さまの家がつぶれてから長い浪人生活で、
今ではその日の米代にも困るありさまです。
「のう、浪之介(なみのすけ)。
こんな事をしておっては、二人とものたれ死にをするばかりだ。
いっその事、別々に暮らしを考えてはどうだろうか?」
「なるほど、それもよかろう。
では新衛門(しんえもん)、三年後に会う事にしないか?」
「わかった。三年後に必ず」
「おう、三年後に」
二人は会う場所と時間を決めて、
別れ別れに生活をする事にしました。
それから月日は流れて、もうすぐ約束の三年です。
その頃の浪之介は人の道を外れて、
世間に名高い盗賊(とうぞく)となっていました。

ところがドジを踏んで役人に捕まり、やっとの事で逃げ出して、
小舟で海へと逃れたばかりです。
浪之介は舟の上で、ふと約束の日の事を思い出しました。
「そうだ。このまま東へこいで、江戸へ下ろう。
こんなに落ちぶれてしまったが、友だちとの約束は守らねば」
浪之介は新衛門に会う為に舟を江戸へ進めましたが、
運の悪い事に高波に飲み込まれて、
そのまま海の底に沈んでしまったのです。

その頃の新衛門は、必死に働いたおかげで
南町奉行所(みなみまちぶぎょうしょ→裁判所)の
調べ役になっていました。
新衛門は浪之介が東海道を騒がす盗賊になって、
江戸に人相書(にんそうがき→犯人の顔のイラスト)まで
回っている事を知っていました。
いよいよ約束の日の朝、
新衛門は約束の場所に行こうかどうか迷いました。
「今の浪之介とおれとでは、気軽に会える立場ではない。
友だちであるあいつを捕まえる事は出来ぬし、
かと言って見逃した事が人にしれれば、おれが捕まる立場になる。
やはりあいつとは、会わない方が・・・。
いや! たとえどうなろうと、
おれにとってあいつはかけがえのない友だちだ。
友だちとの約束は、守らねば」

新衛門は心を決めると、浪之介に会う為に家を出ました。
すると何と、浪之介が家の前で座っているではありませんか。
「おお、浪之介。よく来た」
そう言って、新衛門はハッとしました。
(馬鹿な、人相書まで回っているお前が、
なぜおれの家などに来るのだ。
おれの家を調べたからには、おれの仕事は知っているはず)
新衛門は顔を地面に向けると、浪之介に言いました。
「さあ、浪之介。おれがこうしている間に、どうか逃げてくれ」
すると浪之介が、さびしく笑って言いました。
「なにを言うのだ。
おれはお前の手でしばってもらおうと思ったからこそ、
わざわざここまでやって来たのではないか。
さあ、おれを捕まえて、お前の手柄にしてくれ」
「しっ、しかし・・・」
「おれの事を今でも友だちと思っているなら、おれを捕まえてくれ」
「・・・わかった」
こうして新衛門に捕まった浪之介は、
小伝馬町(こでんまちょう)の牢(ろう)に入れられました。
ところがその夜、番人が見回りに行くと新衛門はにっこり笑って、
「新衛門どのに、くれぐれもよろしく」
と、言い残し、見回りの見ている前でスーッと消えてしまったのです。
浪之介の座っていた牢の床は、
不思議な事に海の水でビッショリと濡れていたそうです。
海で死んだ浪之介は、
死んでも約束通り友だちの新衛門に会いに来たのでした。
おしまい

約束の日
むかし、江戸の本所(ほんじょ)の『いろは長屋』に、
山口浪之介(やまぐちなみのすけ)と
光川新衛門(みつかわしんえもん)という浪人(ろうにん)が
一緒に暮らしていました。

二人は小さい頃からの友だちで、ずっと同じ殿さまに仕えていましたが、
殿さまの家がつぶれてから長い浪人生活で、
今ではその日の米代にも困るありさまです。
「のう、浪之介(なみのすけ)。
こんな事をしておっては、二人とものたれ死にをするばかりだ。
いっその事、別々に暮らしを考えてはどうだろうか?」
「なるほど、それもよかろう。
では新衛門(しんえもん)、三年後に会う事にしないか?」
「わかった。三年後に必ず」
「おう、三年後に」
二人は会う場所と時間を決めて、
別れ別れに生活をする事にしました。
それから月日は流れて、もうすぐ約束の三年です。
その頃の浪之介は人の道を外れて、
世間に名高い盗賊(とうぞく)となっていました。

ところがドジを踏んで役人に捕まり、やっとの事で逃げ出して、
小舟で海へと逃れたばかりです。
浪之介は舟の上で、ふと約束の日の事を思い出しました。
「そうだ。このまま東へこいで、江戸へ下ろう。
こんなに落ちぶれてしまったが、友だちとの約束は守らねば」
浪之介は新衛門に会う為に舟を江戸へ進めましたが、
運の悪い事に高波に飲み込まれて、
そのまま海の底に沈んでしまったのです。

その頃の新衛門は、必死に働いたおかげで
南町奉行所(みなみまちぶぎょうしょ→裁判所)の
調べ役になっていました。
新衛門は浪之介が東海道を騒がす盗賊になって、
江戸に人相書(にんそうがき→犯人の顔のイラスト)まで
回っている事を知っていました。
いよいよ約束の日の朝、
新衛門は約束の場所に行こうかどうか迷いました。
「今の浪之介とおれとでは、気軽に会える立場ではない。
友だちであるあいつを捕まえる事は出来ぬし、
かと言って見逃した事が人にしれれば、おれが捕まる立場になる。
やはりあいつとは、会わない方が・・・。
いや! たとえどうなろうと、
おれにとってあいつはかけがえのない友だちだ。
友だちとの約束は、守らねば」
新衛門は心を決めると、浪之介に会う為に家を出ました。
すると何と、浪之介が家の前で座っているではありませんか。
「おお、浪之介。よく来た」
そう言って、新衛門はハッとしました。
(馬鹿な、人相書まで回っているお前が、
なぜおれの家などに来るのだ。
おれの家を調べたからには、おれの仕事は知っているはず)
新衛門は顔を地面に向けると、浪之介に言いました。
「さあ、浪之介。おれがこうしている間に、どうか逃げてくれ」
すると浪之介が、さびしく笑って言いました。
「なにを言うのだ。
おれはお前の手でしばってもらおうと思ったからこそ、
わざわざここまでやって来たのではないか。
さあ、おれを捕まえて、お前の手柄にしてくれ」
「しっ、しかし・・・」
「おれの事を今でも友だちと思っているなら、おれを捕まえてくれ」
「・・・わかった」
こうして新衛門に捕まった浪之介は、
小伝馬町(こでんまちょう)の牢(ろう)に入れられました。
ところがその夜、番人が見回りに行くと新衛門はにっこり笑って、
「新衛門どのに、くれぐれもよろしく」
と、言い残し、見回りの見ている前でスーッと消えてしまったのです。
浪之介の座っていた牢の床は、
不思議な事に海の水でビッショリと濡れていたそうです。
海で死んだ浪之介は、
死んでも約束通り友だちの新衛門に会いに来たのでした。
おしまい
2015年07月09日
ききみみあんこの百物語♪
今夜のききみみあんこの百物語は・・・

母親に化けたネコ
年を取り過ぎたネコは人間を噛み殺し、
その人間に化ける事があると言われています。
むかしむかし、あるところに、すっかり年を取った母親と、
その一人息子がいました。
とても親孝行な息子で、珍しい食べ物が手に入ると、
自分は食べないで母親に食べさせました。
それほど大事にしている母親が、病気になってしまったのです。
心配した息子は少ない貯金をはたいて高い薬を飲ませたり、
町から医者を呼んできたりと、
それこそ夜も寝ないで母親の看病(かんびょう)をしました。
そんな息子の想いが天に通じたのか、ある朝、
母親の病気が突然治って、元通りの元気な体に戻ったのです。
でも、息子が喜んだのもつかの間、
病気が治った母親の性格がガラリと変わってしまい、
少しでも気に入らない事があると狂った様に怒り出す様になったのです。
そればかりか母親は、生き物を捕まえてきては
水につけたり火にあぶったりと、残酷(ざんこく)な事をする様になりました。
「おっかさん。なぜ、そんなひどい事をする」
息子がいくら注意をしても、母親は怖い顔でにらむばかりです。
近所の人たちは怖がって、この母親に近づかなくなりました。
(はて、どうしたものか?
おっかさんが変わってしまったのは、病気のせいだろうか?)

考え込んでいた息子は、ふと思いました。
(もしかすると、あのおっかさんは本物ではなく、ネコが化けたものでは)
そう考えると、思い当たる事はたくさんあります。
母親が病気で寝込んでいた時、
不気味なネコがいつも母親をじっと見つめていました。
それに以前は大好きだったイヌを、
病気が治ってからはひどく怖がる様になりました。
そもそも、医者から助からないと言われていた病気が、
どうして突然に治ったのか。
(おっかさんは、あの時のネコに食い殺されたのでは?)
そこで息子は、母親の様子を詳しく見る事にしました。
ある晩の事、母親が酒に酔いつぶて眠り込んでしまいました。
(やはり、怪しい。
おっかさんは、酒なんか一滴(いってき)も飲めなかったのに)
怪しんだ息子が、母親の部屋をのぞいて見るとどうでしょう。
母親の着物を着た一匹の古ネコが、
行灯(あんどん)をつけたまま、
いびきをかいて寝ているではありませんか。
(あっ! やっぱりそうだったのか。この、よくもおらをだましたな!)
息子は刀を持って母親の部屋に飛び込むと、
寝ている古ネコの胸へ刀を突き刺しました。
「ギャオオオーーーッ!!」
古ネコは鋭い悲鳴をあげて、そのまま動かなくなりました。
「よし、化けネコをやっつけたぞ! ・・・あっ!」
ところがよく見てみたら、そこにいたのは古ネコではなく、
胸から血を流して死んだ母親だったのです。
「し、しまった」
いくらひどい母親でも、殺すなんてとんでもありません。
「どっ、どうしよう?」
息子は仕方なく、近所の人たちを呼んで訳を話しました。
「親を殺すとは、おら、もう世の中に顔向けが出来ない。
役人に捕まる前に腹を切って死ぬから、後の事をよろしく頼みます」
すると、近所の人たちの一人が言いました。
「待て、早まってはいかん。
ネコは一度人間に化けると、死んでもなかなか正体を現さないと言うぞ。
死ぬのはそれを確かめてからでも、遅くはないはずだ」
「・・・わかった。朝まで待つとしよう」
そこで息子と近所の人たちは、
母親の死骸(しがい)が古ネコの正体を現すのを待ちました。
やがて東の空が白みはじめた頃、母親の死骸の顔が、
だんだんとネコの顔に変わりはじめました。
「おう、ネコの顔になったぞ!」
そして顔ばかりか、
着物から出ている手足もネコの手足に変わりました。

やはり古ネコが、母親に化けていたのです。
「よかった。よかった」
近所の人たちも息子もホッとして、思わず手を握りしめました。
「それにしても、この化けネコをどうしてくれよう?!」
死んだ古ネコは、大切な母親を殺した憎いかたきです。
八つ裂きにしても気がおさまりませんが、
下手な事をすれば、どんなたたりをされるかわかりません。
そこで古ネコの死骸を寺に運んで、手厚くほうむる事にしました。
その後、息子と近所の人たちが母親が寝ていた部屋の床下を調べると、
古ネコに食われた人間の骨がたくさん出てきました。
息子はその骨も寺へ持って行き、
あらためて母親の弔い(ともらい→お葬式)をしたそうです。
おしまい

母親に化けたネコ
年を取り過ぎたネコは人間を噛み殺し、
その人間に化ける事があると言われています。
むかしむかし、あるところに、すっかり年を取った母親と、
その一人息子がいました。
とても親孝行な息子で、珍しい食べ物が手に入ると、
自分は食べないで母親に食べさせました。
それほど大事にしている母親が、病気になってしまったのです。
心配した息子は少ない貯金をはたいて高い薬を飲ませたり、
町から医者を呼んできたりと、
それこそ夜も寝ないで母親の看病(かんびょう)をしました。
そんな息子の想いが天に通じたのか、ある朝、
母親の病気が突然治って、元通りの元気な体に戻ったのです。
でも、息子が喜んだのもつかの間、
病気が治った母親の性格がガラリと変わってしまい、
少しでも気に入らない事があると狂った様に怒り出す様になったのです。
そればかりか母親は、生き物を捕まえてきては
水につけたり火にあぶったりと、残酷(ざんこく)な事をする様になりました。
「おっかさん。なぜ、そんなひどい事をする」
息子がいくら注意をしても、母親は怖い顔でにらむばかりです。
近所の人たちは怖がって、この母親に近づかなくなりました。
(はて、どうしたものか?
おっかさんが変わってしまったのは、病気のせいだろうか?)

考え込んでいた息子は、ふと思いました。
(もしかすると、あのおっかさんは本物ではなく、ネコが化けたものでは)
そう考えると、思い当たる事はたくさんあります。
母親が病気で寝込んでいた時、
不気味なネコがいつも母親をじっと見つめていました。
それに以前は大好きだったイヌを、
病気が治ってからはひどく怖がる様になりました。
そもそも、医者から助からないと言われていた病気が、
どうして突然に治ったのか。
(おっかさんは、あの時のネコに食い殺されたのでは?)
そこで息子は、母親の様子を詳しく見る事にしました。
ある晩の事、母親が酒に酔いつぶて眠り込んでしまいました。
(やはり、怪しい。
おっかさんは、酒なんか一滴(いってき)も飲めなかったのに)
怪しんだ息子が、母親の部屋をのぞいて見るとどうでしょう。
母親の着物を着た一匹の古ネコが、
行灯(あんどん)をつけたまま、
いびきをかいて寝ているではありませんか。
(あっ! やっぱりそうだったのか。この、よくもおらをだましたな!)
息子は刀を持って母親の部屋に飛び込むと、
寝ている古ネコの胸へ刀を突き刺しました。
「ギャオオオーーーッ!!」
古ネコは鋭い悲鳴をあげて、そのまま動かなくなりました。
「よし、化けネコをやっつけたぞ! ・・・あっ!」
ところがよく見てみたら、そこにいたのは古ネコではなく、
胸から血を流して死んだ母親だったのです。
「し、しまった」
いくらひどい母親でも、殺すなんてとんでもありません。
「どっ、どうしよう?」
息子は仕方なく、近所の人たちを呼んで訳を話しました。
「親を殺すとは、おら、もう世の中に顔向けが出来ない。
役人に捕まる前に腹を切って死ぬから、後の事をよろしく頼みます」
すると、近所の人たちの一人が言いました。
「待て、早まってはいかん。
ネコは一度人間に化けると、死んでもなかなか正体を現さないと言うぞ。
死ぬのはそれを確かめてからでも、遅くはないはずだ」
「・・・わかった。朝まで待つとしよう」
そこで息子と近所の人たちは、
母親の死骸(しがい)が古ネコの正体を現すのを待ちました。
やがて東の空が白みはじめた頃、母親の死骸の顔が、
だんだんとネコの顔に変わりはじめました。
「おう、ネコの顔になったぞ!」
そして顔ばかりか、
着物から出ている手足もネコの手足に変わりました。

やはり古ネコが、母親に化けていたのです。
「よかった。よかった」
近所の人たちも息子もホッとして、思わず手を握りしめました。
「それにしても、この化けネコをどうしてくれよう?!」
死んだ古ネコは、大切な母親を殺した憎いかたきです。
八つ裂きにしても気がおさまりませんが、
下手な事をすれば、どんなたたりをされるかわかりません。
そこで古ネコの死骸を寺に運んで、手厚くほうむる事にしました。
その後、息子と近所の人たちが母親が寝ていた部屋の床下を調べると、
古ネコに食われた人間の骨がたくさん出てきました。
息子はその骨も寺へ持って行き、
あらためて母親の弔い(ともらい→お葬式)をしたそうです。
おしまい
2015年07月06日
ききみみあんこの百物語♪
ききみみあんこの今夜の百物語は・・・

むかしむかし、京の都の五条京極(ごじょうきょうごく)に、
荻原新之丞(おぎわらしんのじょう)という男が住んでいました。
まだ若い奥さんに死なれた為、毎日がさびしくてたまらず、
お経をよんだり歌をつくったりして、外へも出ないで暮らしていました。
七月の十五夜の日の事。
夜もふけて道ゆく人もいなくなった頃、二十才くらいの美しい女の人が、
十才あまりの娘を連れて通りかかりました。
その娘には、牡丹(ぼたん)の花の灯籠を持たせています。
新之丞(しんのじょう)は、美しい女の人に心をひかれて、
(ああ、天の乙女(おとめ)が、地に降りて来たのだろうか)
と、つい家を飛び出しました。

新之丞が声をかけると、女は言いました。
「たとえ月夜でも、帰る道は恐ろしくてなりません。
どうかわたくしを、送ってくださいますか?」
「ええ。でも、よろしければ我が家へ来て、ひと晩お泊まりなさい。
遠慮はいりませぬ。さあ、どうぞ」
そう言って新之丞は女の手を取り、家へ連れて戻りました。
新之丞が歌をよむと、女もすぐに見事な歌で返すので、
新之丞はうれしくてたまりません。
(美しいだけでなく、教養もあるとは。実に素晴らしい)
すっかり親しくなって、時がたつのも忘れるうちに、
東の空が明るくなりかけました。
「人目もありますので、今日はこれで」
女はいそいそと帰って行きましたが、それからというもの、
女は日が暮れると必ずたずねてきました。
牡丹の花の灯籠を、いつも娘に持たせて。
新之丞は、毎日、女が来るのが楽しみでなりません。
そして、二十日あまりが過ぎました。
たまたま家の隣に、物知りなおじいさんが住んでいました。
「はて、新之丞のところは一人きりのはずだが、
毎晩若い女の声がしておる。うむ、・・・どうもあやしい」
おじいさんはその夜、壁のすきまから新之丞の家の中をのぞきました。
すると新之丞が明かりのそばで、
頭から足の先までそろった白いガイコツと差し向かいで座っているのです。
新之丞が何かしゃべると、ガイコツがうなずきます。
手や腕の骨も、ちゃんと動かします。
そのうえガイコツは口のあたりから声を出して、
しきりに話をしているのでした。

あくる朝、おじいさんは新之丞の所へ行き、たずねました。
「そなたのところへ、夜ごとに女の客があるらしいが、一体何者じゃ?」
「そっ、それは・・・・・・」
新之丞は、答えません。
それでおじいさんは、昨夜見た通りの事を話した上で、
「近いうち、そなたの身にきっとわざわいがおこりますぞ。
死んで幽霊となり、さまよい歩いている者と、あの様に付きおうておったら、
精(せい)を吸い尽くされて悪い病気にむしばまれる」
これには新之丞も驚いて、
今までの事をありのままに打ち明けたのでした。
「さようであったか。その女が万寿寺(まんじゅじ)のそばに
住んでおるというたのなら、行って探してみなされ」
「はい、わかりました」
新之丞はさっそく五条(ごじょう)から西へ、
万里小路(までのこうじ)まで行って探しました。
しかし一人として、それらしい女を知る人がありません。
日が沈む頃、万寿寺(まんじゅじ)の境内(けいだい)へ入って休み、
北の方へ足を向けると、死者のなきがらをおさめた、
たまや(→たましいをまつるお堂)が一つ、目にとまりました。
古びたたまやで、よく見たところ、棺のふたに誰それの息女
(そくじょ→身分のある娘をさす言葉)なになにと、
戒名(かいみょう→死者につける名前)が書きつけてありました。
棺のわきに、おとぎぼうこ(→頭身を白い絹で小児の形に作り、
黒い糸を髪として、左右に分け前方に垂らした人形)、
とよばれる子どもの人形が一つ、
また棺の前には牡丹の花の灯籠がかかっていました。
「おお、間違いなくこれじゃ。このおとぎぼうこが、娘に化けていたのだな」
新之丞は怖くなって、走って逃げ帰りました。
家へ戻ったものの、夜にまた来るかと思うと恐ろしくてたまりませんので、
隣のおじいさんの家に泊めてもらいました。
それからおじいさんに教わって東寺(とうじ)へ行き、
そこの修験者(しゅげんじゃ→山で修行する人)に訳を打ち明けて、
「わたくしは、どうしたらよいのですか?」
と、たずねました。
すると、
「間違いなく、新之丞殿は化け物に精を吸い取られておられますな。
あと十日も今まで通りにしておったら、命もなくなりましょう」

修験者はそう言って、まじないのお札を書いてくれました。
そのお札を家の門に貼り付けたところ、
美しい女も灯籠を持った娘も、二度と姿を見せなくなったのです。
それから、五十日ほどが過ぎました。
新之丞は東寺へ出かけて、
今日まで無事に過ごせたお礼をしました。
その日の夜、お供の男を一人連れていたので、
東寺を出てお酒を飲みましたが、お酒を飲むと、
むしょうに女に会いたくなって、お供の男が止めるのも聞かず、
万寿寺(まんじゅじ)へ出かけて行ったのです。
万寿寺に着くと、あの女が現れ、
「毎晩、お会いしましょうと、あれほど固くお約束をしましたのに。
あなたさまのお気持ちが変わってしまい、
それに東寺の修験者にも邪魔をされて、本当にさみしゅうございました。
・・・でも、あなたさまは来てくだされました。
お目にかかれて、本当にうれしゅうございます。
さあ、どうぞこちらへ」
「うむ、そなたにつらい思いをさせるとは、まことにすまん事をした。
そなたが、何者でも構わぬ。
これからは、二度と離れぬ」
「・・・うれしい」
新之丞は女に手を取られて、そのまま奥の方へ連れて行かれました。
後をつけてきたお供の男は、腰を抜かすほどビックリして、
「た、たっ、大変だ! 新之丞さまが、
あの女に誘い込まれて、寺の墓地の方へ!」
と、隣近所に言ってまわりました。
それで大騒ぎになり、みんなして万寿寺の北側の、
たまやがある所へ行ってみました。
しかし新之丞は棺の中へ引き込まれて、
白骨の上へ重なるようにして死んでいました。
女に精を吸い取られて新之丞は老人のようにやつれていましたが、
その口には笑みが浮かんでいました。
万寿寺では気味悪く思って、そのたまやを別の場所へ移しました。
しばらくして、雨が降る夜には新之丞と若い女が、
牡丹の花の灯籠を持った娘とともに京の町を歩く姿が見られ、
それを見た者は重い病気にかかるとうわさが立ちました。

新之丞の親類(しんるい)の人たちが手厚く供養(くよう)をしましたが、
魂が迷い歩かないようになるまでには、かなりの時間がかかったという事です。

むかしむかし、京の都の五条京極(ごじょうきょうごく)に、
荻原新之丞(おぎわらしんのじょう)という男が住んでいました。
まだ若い奥さんに死なれた為、毎日がさびしくてたまらず、
お経をよんだり歌をつくったりして、外へも出ないで暮らしていました。
七月の十五夜の日の事。
夜もふけて道ゆく人もいなくなった頃、二十才くらいの美しい女の人が、
十才あまりの娘を連れて通りかかりました。
その娘には、牡丹(ぼたん)の花の灯籠を持たせています。
新之丞(しんのじょう)は、美しい女の人に心をひかれて、
(ああ、天の乙女(おとめ)が、地に降りて来たのだろうか)
と、つい家を飛び出しました。

新之丞が声をかけると、女は言いました。
「たとえ月夜でも、帰る道は恐ろしくてなりません。
どうかわたくしを、送ってくださいますか?」
「ええ。でも、よろしければ我が家へ来て、ひと晩お泊まりなさい。
遠慮はいりませぬ。さあ、どうぞ」
そう言って新之丞は女の手を取り、家へ連れて戻りました。
新之丞が歌をよむと、女もすぐに見事な歌で返すので、
新之丞はうれしくてたまりません。
(美しいだけでなく、教養もあるとは。実に素晴らしい)
すっかり親しくなって、時がたつのも忘れるうちに、
東の空が明るくなりかけました。
「人目もありますので、今日はこれで」
女はいそいそと帰って行きましたが、それからというもの、
女は日が暮れると必ずたずねてきました。
牡丹の花の灯籠を、いつも娘に持たせて。
新之丞は、毎日、女が来るのが楽しみでなりません。
そして、二十日あまりが過ぎました。
たまたま家の隣に、物知りなおじいさんが住んでいました。
「はて、新之丞のところは一人きりのはずだが、
毎晩若い女の声がしておる。うむ、・・・どうもあやしい」
おじいさんはその夜、壁のすきまから新之丞の家の中をのぞきました。
すると新之丞が明かりのそばで、
頭から足の先までそろった白いガイコツと差し向かいで座っているのです。
新之丞が何かしゃべると、ガイコツがうなずきます。
手や腕の骨も、ちゃんと動かします。
そのうえガイコツは口のあたりから声を出して、
しきりに話をしているのでした。

あくる朝、おじいさんは新之丞の所へ行き、たずねました。
「そなたのところへ、夜ごとに女の客があるらしいが、一体何者じゃ?」
「そっ、それは・・・・・・」
新之丞は、答えません。
それでおじいさんは、昨夜見た通りの事を話した上で、
「近いうち、そなたの身にきっとわざわいがおこりますぞ。
死んで幽霊となり、さまよい歩いている者と、あの様に付きおうておったら、
精(せい)を吸い尽くされて悪い病気にむしばまれる」
これには新之丞も驚いて、
今までの事をありのままに打ち明けたのでした。
「さようであったか。その女が万寿寺(まんじゅじ)のそばに
住んでおるというたのなら、行って探してみなされ」
「はい、わかりました」
新之丞はさっそく五条(ごじょう)から西へ、
万里小路(までのこうじ)まで行って探しました。
しかし一人として、それらしい女を知る人がありません。
日が沈む頃、万寿寺(まんじゅじ)の境内(けいだい)へ入って休み、
北の方へ足を向けると、死者のなきがらをおさめた、
たまや(→たましいをまつるお堂)が一つ、目にとまりました。
古びたたまやで、よく見たところ、棺のふたに誰それの息女
(そくじょ→身分のある娘をさす言葉)なになにと、
戒名(かいみょう→死者につける名前)が書きつけてありました。
棺のわきに、おとぎぼうこ(→頭身を白い絹で小児の形に作り、
黒い糸を髪として、左右に分け前方に垂らした人形)、
とよばれる子どもの人形が一つ、
また棺の前には牡丹の花の灯籠がかかっていました。
「おお、間違いなくこれじゃ。このおとぎぼうこが、娘に化けていたのだな」
新之丞は怖くなって、走って逃げ帰りました。
家へ戻ったものの、夜にまた来るかと思うと恐ろしくてたまりませんので、
隣のおじいさんの家に泊めてもらいました。
それからおじいさんに教わって東寺(とうじ)へ行き、
そこの修験者(しゅげんじゃ→山で修行する人)に訳を打ち明けて、
「わたくしは、どうしたらよいのですか?」
と、たずねました。
すると、
「間違いなく、新之丞殿は化け物に精を吸い取られておられますな。
あと十日も今まで通りにしておったら、命もなくなりましょう」

修験者はそう言って、まじないのお札を書いてくれました。
そのお札を家の門に貼り付けたところ、
美しい女も灯籠を持った娘も、二度と姿を見せなくなったのです。
それから、五十日ほどが過ぎました。
新之丞は東寺へ出かけて、
今日まで無事に過ごせたお礼をしました。
その日の夜、お供の男を一人連れていたので、
東寺を出てお酒を飲みましたが、お酒を飲むと、
むしょうに女に会いたくなって、お供の男が止めるのも聞かず、
万寿寺(まんじゅじ)へ出かけて行ったのです。
万寿寺に着くと、あの女が現れ、
「毎晩、お会いしましょうと、あれほど固くお約束をしましたのに。
あなたさまのお気持ちが変わってしまい、
それに東寺の修験者にも邪魔をされて、本当にさみしゅうございました。
・・・でも、あなたさまは来てくだされました。
お目にかかれて、本当にうれしゅうございます。
さあ、どうぞこちらへ」
「うむ、そなたにつらい思いをさせるとは、まことにすまん事をした。
そなたが、何者でも構わぬ。
これからは、二度と離れぬ」
「・・・うれしい」
新之丞は女に手を取られて、そのまま奥の方へ連れて行かれました。
後をつけてきたお供の男は、腰を抜かすほどビックリして、
「た、たっ、大変だ! 新之丞さまが、
あの女に誘い込まれて、寺の墓地の方へ!」
と、隣近所に言ってまわりました。
それで大騒ぎになり、みんなして万寿寺の北側の、
たまやがある所へ行ってみました。
しかし新之丞は棺の中へ引き込まれて、
白骨の上へ重なるようにして死んでいました。
女に精を吸い取られて新之丞は老人のようにやつれていましたが、
その口には笑みが浮かんでいました。
万寿寺では気味悪く思って、そのたまやを別の場所へ移しました。
しばらくして、雨が降る夜には新之丞と若い女が、
牡丹の花の灯籠を持った娘とともに京の町を歩く姿が見られ、
それを見た者は重い病気にかかるとうわさが立ちました。

新之丞の親類(しんるい)の人たちが手厚く供養(くよう)をしましたが、
魂が迷い歩かないようになるまでには、かなりの時間がかかったという事です。
2015年07月04日
ききみみあんこの百物語♪
ききみみあんこの今夜の百物語は・・・
狩人とネコまた

むかしむかし、あるところに、
とても腕のいい狩人(かりゅうど)がいました。
狩人は毎日、犬を連れて山に入って獲物をとっていました。
ところが、ある日の事。
「おかしいな。今日は、獲物がちっともおらん」
狩人は獲物をもとめて、
いつしか山奥に入り込んでしまいました。
「これは困った。日が暮れて、帰り道が分からぬ」
ふと前を見ると、向こうに家の明かりが見えました。
「ありがたい。今夜はあそこで、泊めてもらおう」
狩人が明かりをたよりに進むと小さなあばら家があって、
一人のおばあさんが住んでいました。
「すみません。日が暮れて、難儀しております。
どうか、一晩泊めてもらえませんか?」
するとおばあさんは、狩人が連れている犬を見て言いました。
「食う物はねえが、それでいいなら泊まるがいい。
ただし、犬はしっかりと外につないでおれよ。
家に入れると、おらのネコに食われてしまうでな。いっひひひひ」
「ネコが犬を食う?」
狩人が家の中を見回すと、かまどのそばに一匹のネコがいて、
うつらうつらと居眠りをしていました。
「何を馬鹿な事を。おらの犬は、クマでもイノシシでも倒す犬だ。
あんなネコごときに、食われるはずがなかろう」
「いいや、おらのネコは、なみの強さでねえ。
うそと思うなら、けんかさせてみるか?」
おばあさんが言うと、かまどのそばのネコがあくびをしながら、
金色に光る目を開きました。
確かに強そうなネコですが、犬に勝てるなんて信じられません。
狩人は、おばあさんに馬鹿にされていると思い、
少し腹を立てながら言いました。
「おおっ、のぞむところだ。どちらが強いか、勝負させてみよう」
狩人が犬をけしかけてネコと闘わせて見ると、
驚いた事に犬はたちまち殺されてしまいました。
「・・・そっ、そんな馬鹿な」
狩人はくやしくて、夜が明けると同時に村へ飛んで帰りました。
そして狩人は、もっと強い犬を連れて戻ってきたのです。
「ばあさま、悪いがもう一度勝負だ!」
ところがまたも、
狩人の犬はおばあさんのネコに殺されてしまったのです。

「駄目だ。あのネコに勝つには、もっと強い犬でないと」
狩人がとぼとぼ歩いて行くと、村はずれのお墓に、
のら犬がたむろしています。
狩人は木の陰に隠れて、強い犬がいないかとながめていると、
そこに旅のアメ売りが笛を吹きながら通りかかって、
犬たちに近づいていきました。

「はて? 不思議な事をするアメ売りじゃ」
狩人が見ていると、アメ売りはくるっとトンボ返りをして、
大きな犬の姿になりました。
突然現れた強そうな犬に、
のら犬たちは尻尾を巻いて逃げてしまいました。
「おおっ、この犬なら大丈夫だ。ばあさまのネコに勝てるぞ。
この犬に頼んで、二匹の犬のかたきをうとう」
狩人がアメ売りの後をつけて行くと、
アメ売りは一軒の宿屋に泊まりました。
狩人は宿屋に入っていくと、
アメ売りの部屋に行って今までの事を全て話しました。
「そんな訳だから、お前さんにネコをやっつけてもらいたい」
「なるほど。
お前さんの犬を二匹も殺したそのネコは、
おそらく、『ネコまた』だろう。

『ネコまた』とは、年老いたネコが妖力を持って、
尻尾が二股に分かれた化けネコだ。
『ネコまた』なら、犬が負けても不思議はない。
だが、わしなら勝てるぞ」
「ありがたい。では頼む」
「任せておけ。ただし、わしが『ネコまた』を負かしても、
ばあさまが怒って襲ってくるだろう。

ばあさまの正体は、年を取った大ザルじゃ。
何百年も年を取り、『ネコまた』を操るほどに妖力を手に入れた
化け物ザルだから、わしでもたやすくは退治出来ん。
なにしろ化け物ザルは、
全身を針金の様に丈夫な毛で覆われているからな。
わしがすきをみて、ばあさまの手を上げさせるから、
そこを逃さず、お前さんが鉄砲でわきの下を撃ってくれ。
わきの下なら毛が少ないから、鉄砲で倒せるはずだ」
「よし、わかった」
こうして狩人はアメ売りが化けた大きな犬と、
おばあさんの家に乗り込んでいって、ネコまたと闘わせました。
そして犬がネコまたをやっつけると、
おばあさんは顔を真っ赤にして怒りました。
「ウキーッ! よくもわしのネコまたを殺してくれたな!」
おばあさんは大ザルの正体を現して、猟師に襲いかかりました。
「なにくそ。化け物め!」
ズドーン!
猟師が化け物ザルの心臓に鉄砲を打ち込みましたが、
針金の様な毛に覆われた化け物ザルの体には、
鉄砲の玉は通用しません。
(そうだ、わきの下を撃たねば)
その時、アメ売りの化けた犬が化け物ザルに噛み付いて、
化け物ザルの手を上げさせました。
(いまだ!)
ズドーン!
狩人の撃った鉄砲の玉は見事に
化け物ザルのわきの下に命中して、
化け物ザルを退治する事が出来たのです。
おしまい
狩人とネコまた

むかしむかし、あるところに、
とても腕のいい狩人(かりゅうど)がいました。
狩人は毎日、犬を連れて山に入って獲物をとっていました。
ところが、ある日の事。
「おかしいな。今日は、獲物がちっともおらん」
狩人は獲物をもとめて、
いつしか山奥に入り込んでしまいました。
「これは困った。日が暮れて、帰り道が分からぬ」
ふと前を見ると、向こうに家の明かりが見えました。
「ありがたい。今夜はあそこで、泊めてもらおう」
狩人が明かりをたよりに進むと小さなあばら家があって、
一人のおばあさんが住んでいました。
「すみません。日が暮れて、難儀しております。
どうか、一晩泊めてもらえませんか?」
するとおばあさんは、狩人が連れている犬を見て言いました。
「食う物はねえが、それでいいなら泊まるがいい。
ただし、犬はしっかりと外につないでおれよ。
家に入れると、おらのネコに食われてしまうでな。いっひひひひ」
「ネコが犬を食う?」
狩人が家の中を見回すと、かまどのそばに一匹のネコがいて、
うつらうつらと居眠りをしていました。
「何を馬鹿な事を。おらの犬は、クマでもイノシシでも倒す犬だ。
あんなネコごときに、食われるはずがなかろう」
「いいや、おらのネコは、なみの強さでねえ。
うそと思うなら、けんかさせてみるか?」
おばあさんが言うと、かまどのそばのネコがあくびをしながら、
金色に光る目を開きました。
確かに強そうなネコですが、犬に勝てるなんて信じられません。
狩人は、おばあさんに馬鹿にされていると思い、
少し腹を立てながら言いました。
「おおっ、のぞむところだ。どちらが強いか、勝負させてみよう」
狩人が犬をけしかけてネコと闘わせて見ると、
驚いた事に犬はたちまち殺されてしまいました。
「・・・そっ、そんな馬鹿な」
狩人はくやしくて、夜が明けると同時に村へ飛んで帰りました。
そして狩人は、もっと強い犬を連れて戻ってきたのです。
「ばあさま、悪いがもう一度勝負だ!」
ところがまたも、
狩人の犬はおばあさんのネコに殺されてしまったのです。

「駄目だ。あのネコに勝つには、もっと強い犬でないと」
狩人がとぼとぼ歩いて行くと、村はずれのお墓に、
のら犬がたむろしています。
狩人は木の陰に隠れて、強い犬がいないかとながめていると、
そこに旅のアメ売りが笛を吹きながら通りかかって、
犬たちに近づいていきました。

「はて? 不思議な事をするアメ売りじゃ」
狩人が見ていると、アメ売りはくるっとトンボ返りをして、
大きな犬の姿になりました。
突然現れた強そうな犬に、
のら犬たちは尻尾を巻いて逃げてしまいました。
「おおっ、この犬なら大丈夫だ。ばあさまのネコに勝てるぞ。
この犬に頼んで、二匹の犬のかたきをうとう」
狩人がアメ売りの後をつけて行くと、
アメ売りは一軒の宿屋に泊まりました。
狩人は宿屋に入っていくと、
アメ売りの部屋に行って今までの事を全て話しました。
「そんな訳だから、お前さんにネコをやっつけてもらいたい」
「なるほど。
お前さんの犬を二匹も殺したそのネコは、
おそらく、『ネコまた』だろう。

『ネコまた』とは、年老いたネコが妖力を持って、
尻尾が二股に分かれた化けネコだ。
『ネコまた』なら、犬が負けても不思議はない。
だが、わしなら勝てるぞ」
「ありがたい。では頼む」
「任せておけ。ただし、わしが『ネコまた』を負かしても、
ばあさまが怒って襲ってくるだろう。
ばあさまの正体は、年を取った大ザルじゃ。
何百年も年を取り、『ネコまた』を操るほどに妖力を手に入れた
化け物ザルだから、わしでもたやすくは退治出来ん。
なにしろ化け物ザルは、
全身を針金の様に丈夫な毛で覆われているからな。
わしがすきをみて、ばあさまの手を上げさせるから、
そこを逃さず、お前さんが鉄砲でわきの下を撃ってくれ。
わきの下なら毛が少ないから、鉄砲で倒せるはずだ」
「よし、わかった」
こうして狩人はアメ売りが化けた大きな犬と、
おばあさんの家に乗り込んでいって、ネコまたと闘わせました。
そして犬がネコまたをやっつけると、
おばあさんは顔を真っ赤にして怒りました。
「ウキーッ! よくもわしのネコまたを殺してくれたな!」
おばあさんは大ザルの正体を現して、猟師に襲いかかりました。
「なにくそ。化け物め!」
ズドーン!
猟師が化け物ザルの心臓に鉄砲を打ち込みましたが、
針金の様な毛に覆われた化け物ザルの体には、
鉄砲の玉は通用しません。
(そうだ、わきの下を撃たねば)
その時、アメ売りの化けた犬が化け物ザルに噛み付いて、
化け物ザルの手を上げさせました。
(いまだ!)
ズドーン!
狩人の撃った鉄砲の玉は見事に
化け物ザルのわきの下に命中して、
化け物ザルを退治する事が出来たのです。
おしまい