2015年05月30日

ききみみ・・・昔話♪

小槌の柄

ききみみ・・・昔話♪



むかしむかし、大分のある田舎に、
仕事もしないで遊んでばかりいる男がいました。

 ある日の事、男が木陰で寝ていると、
働き者のアリがやって来て言いました。


「お前、そうして寝ていても、
食べる物は集まらんじゃろう。早く起きて働け」
 
ききみみ・・・昔話♪




すると男は、
「ばか言え、こんなに暑いのに、働くなんてごめんじゃ」
 男がそう言うと、アリはしばらく考えてから、こう言いました。


「そんなら、ええことを教えてやろう。
 この山奥のお宮さんに、大黒さんがいる。
 その大黒さんは、振れば何でも欲しい物が出る
打出(うちで)の小槌(こづち)という物を持っておるから、
それを借りて来たらどうじゃ。
 そうすれば、働かんで食えるぞ」

ききみみ・・・昔話♪



「おおっ、振るだけで何でもか! そいつはありがたい」
 男は起き上がると、喜んで大黒さんのところへ行きました。
 そして、
「大黒さん、大黒さん、打出の小槌とやらをわしに貸してくれんか。
それで食い物を出そうと思うんじゃ」
と、頼みました。
 

すると大黒さんは、
「貸してやってもええが、あいにく小槌の柄が折れとってのう。
 その柄は、普通の物では役に立たん。
 握るところがくぼんで黒光りするような、
使い込んだクワの柄でなければならんのじゃ」
と、言うのです。
 

男はそれを聞くと、その日から毎日毎日クワを握って、
「まだ、くぼまんか。まだ、くぼまんか」
と、言いながら、畑仕事を始めたのです。
 こうして一年たち、二年たちと、何年もまじめに働いているうちに、
食べ物がだんだんと家にたまってきたのです。

 ある日の事、大黒さんが山からおりて来て、
「くぼんで黒光りする柄は、まだ出来んのか? 
出来たらすぐに、打ち出の小槌を貸してやるぞ」
と、言いました。
ききみみ・・・昔話♪


 

すると男は、
「ああ、大黒さん。
 柄はまだ出来んが、まじめに働いたおかげで
家にはこんなに食べ物がたまった。
 それに、働くのが楽しくなった。
 だからもう、小槌はいらんようになった」
と、言いました。
 
ききみみ・・・昔話♪



するとそれを聞いた大黒さんは、にっこり笑って、
「そうか。
 それは、めでたい。
 どうやらお前の心に、立派な打ち出の小槌が出来たようだな。
 これからもまじめにクワを振れば、
欲しい物は何でも出てくるようになるぞ」
と、言って、山に帰って行ったそうです。

おしまい



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Posted by ききみみあんこ at 14:50│Comments(0)むかしばなし
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