2014年05月13日

ききみみ・・・昔話♪

今日のお話は~~~~
ききみみ・・・昔話♪



地獄の暴れ者

むかしむかし、ある町に一人の医者がおりましたが、
人の病を治すどころか、自分が病にかかって死んでしまいました。
 

死んだ人は三途(さんず)の川を渡り、あの世へ行くのですが、
良い行いをした人は極楽(ごくらく→天国)に、
悪い行いをした人は地獄(じごく)に行くのです。
 
そして極楽行きか、地獄行きかは、えんま大王が決めるのでした。

 
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医者は、えんま大王に言いました。
「大王さま、わたくしめは医者でございます。
生前(せいぜん→生きているとき)は、人々のお役にたったのでございます。
どうぞ、極楽へやってくださいませ」


「こら! うそつきめ。お前はにせ医者で、悪どくもうけおったではないか」

「そんな、めっそうもない」

「だまれ! わしに口答えする気か。お前は地獄行きじゃ!」
 

医者は鬼につまみあげられ、ポイッと放り投げられてしまいました。

「ヒャァーーッ!」
 落ちたところは、地獄へと続く道でした。


 医者は覚悟を決めると、かたわらの石に腰をおろしました。
「どうせ地獄行きじゃあ。だれか、道づれが来るのを待とう」


 さて、次にえんま大王のところへ来たのは、山ぶしでした。
 山ぶしは、えんま大王の前に進み出て。
「せっしゃは、人助けの山ぶしというて、
世間のわざわいをとりのぞきもうした。間違いなく極楽行きでしょうな」


「うそをつくでない! お前は神仏のたたりじゃというて、
なんでもない人々から金をまきあげたじゃろ!」

「と、とんでもない」

「お前は、地獄行きじゃあ!」
 

山ぶしも、ポイッと放り投げられました。
 
地獄への道では、医者が待っていました。
「やあ、あんさんも地獄行きで?
 これで二人になったが、もう一人いれば心強いなあ」
 
すると山ぶしも、腰をおろして、
「どうせ地獄行きじゃ。あわてる事はない。もう一人来るまで待とう」

 
さて、次に現れたのは、かじ屋の親父です。

「大王さま、おらは百姓(ひゃくしょう)のカマやクワを
たくさん作って人助けしました。極楽行きでしょう」


「お前は鉄にまぜものをして、なまくら道具を売ったな! 
ほら、ちゃんとえんま帳(えんまちょう→生前の罪を書きとめるとされる帳面)に書いてあるわい」
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「まぜものをしないと、安くはなりません。
安くねえと、貧乏人には買えません」


「口答えするでない。地獄へ行け!」


 かじ屋もポイッと放り投げられ、地獄への道までふっとんでくると医者と山ぶしが、
ニコニコ顔でむかえました。


「これで三人」

「では、ぼちぼちまいりましょうか」
 

そんなわけで、三人は連れだって地獄の入り口、地獄門につきました。



 門番の鬼が、おそろしい顔で言いました。

「ほれ! さっさと入らんか。そして、あの山を登って行くんだ」
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三人が見ると、なんとそれは鋭い刃物がズラリと並んだ、つるぎの山でした。

「あんな山を登ったら、足がさけちまうよ」

「ど、どうしよう」
 

医者と山ぶしがおろおろしていると、かじ屋がニッコリ。


「ここは、おいらにまかしとけ」
 

なにをするのかと思えば、取り出したヤットコ(→大きなペンチの様な道具)で
ポキポキとつるぎをへし折り、火をおこして、トンカン、トンカンと、それをうちなおしました。


「そら出来た。鉄のわらじだ。これをはいて歩けば大丈夫」
 

三人は鉄のわらじをはいて、つるぎの山へ登っていきました。
 

するとポッキン、ポッキン、つるぎはおもしろいように折れてしまいます。

「うひゃー、こりゃあすごい! 後ろから来る者のために、道をつくっておこう」
 
ポッキン、ポッキン、
 
ポキポキ、ポッキン。

「それそれ、どんどん、折れ折れ」
 

たまげたのは、鬼たちです。

「なんだ、あいつら!」

「た、たいへんだ! 大王さまに知らせねば」
 

それを聞いたえんま大王は、怒ったのなんの。


「つるぎの山に道を作っただと? ばっかも~ん! 
だまって見とるやつがあるか! さっさとひっとらえて、
カマへ放り込め。カマゆでじゃ~!」
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たちまち三人はつかまって、大きなカマの中に放り込まれました。
 
鬼たちは、下からドンドンと火をたきます。


「あちっちっち、こりゃいかん!」


「もう、だめじゃ!」
 

すると今度は、山ぶしが、


「ここは、わたしにまかせなされ。自慢の法力(ほうりき)を見せてくれる」

と、呪文(じゅもん)をとなえました。


「ぬるま湯になれ、ぬるま湯になれ。ナムウンケイアラビソワカ、か~っ!」
 

すると不思議な事に、お湯はちょうどいい湯かげんになりました。

「おぬしの術は、たいしたもんじゃ」

「こんな立派な山ぶしどんを地獄に送るなんて、えんまも目がないのう」

「それにしても、いい湯じゃ」

「お~い、そこのオニたち。手ぬぐいを貸してくれんか。体を洗いたいんじゃ」
 

三人はすっかりいい気分で、うかれて歌まで歌い出すしまつ。
 

さて、怒りくるったえんま大王は。
「うぬぬぬ、あやつら、地獄をバカにしおって! 
ゆるせん! ゆるせん! わしがじきじきに、せいばいしてくれるわ!」
 

えんま大王は大きな手で三人をひとつかみにすると、
ポイッと口の中へ放り込んでしまいました。

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 ヒューーーッ、ストーン!
 

三人は、えんま大王の腹の中に落ちていきました。

「うむ、さすがはえんま大王の腹の中、なかなか広いわい」
 

でも、おもしろがっている場合ではありません。

「あっ、なんだか体がムズムズしてきた」

「大変じゃ、体かとけてきた!」

「今度こそ、もうだめじゃ!」
 

山ぶしとかじ屋は泣き出しましたが、医者は落ち着いたもので、

「心配するな。いま、体のとけぬ薬を作ったで、飲んでみなされ」
 

その薬を飲むと、たちまち体はシャンとなりました。
 

三人は大喜びで、えんま大王の腹の中を探検(たんけん)です。

「医者どん、これは何だ?」

「そりゃ、笑いのひもじゃよ」
 
医者がその笑いのひもを引っ張ると、えんま大王は急に笑い出しました。


「ウヒ、ウヒ、ウヒャハハハハハー」
 
今度は、泣きのひもを引っ張ると、

「うぇーん、うぇーん。悲しいよう」
と、涙がポロポロ。
 

わけもなく笑ったり泣いたりするえんま大王に、
鬼たちは気味悪そうに顔を見合わせました。

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「こりゃあ、おもしろい」
 腹の中の三人は、笑いのひもに、泣きのひも、
それから怒りのひもに、くしゃみのひもと、
あちらこちらのひもをメチャクチャに引っ張りました。


「ギャハハハハハッ、はひ? ガオーッ、ガオーッ、
うぇ~ん、へっくしょーん!」
 

いやはや、もう大変なさわぎです。
 

山ぶしとかじ屋が大笑いしていると、
医者が腹の中に何か薬を塗りながら言いました。


「さて、そろそろ下し薬を塗って、外へ出よう。・・・うっひひひ。これはきくぞ」
 

泣いたり笑ったりしていたえんま大王は、急に腹をかかえて便所にかけこみました。
 
ピー、ゴロゴロ。
 

えんま大王のお尻から、医者、山ぶし、かじ屋が、次々と飛び出してきました。
 ニコニコ顔の三人を見た大王は、


「よくも、わしに恥をかかせたな。お前たちは、
地獄におるしかくもないわい! とっととしゃばへもどれっ!」


と、三人を地上へ吹き飛ばしてしまいました。
 

こうしてこの世にまいもどった三人は、顔を見合わせて大笑い。
 
それから三人は、いつまでも仲良く暮らしたという事です。

おしまい

閻魔さまもお手上げの三人!ある意味機転のきかせ方がすごいですね・・・。
この悪知恵の働かせ方なら現世に戻っても楽しく暮らせたでしょうね。



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Posted by ききみみあんこ at 11:46│Comments(0)むかしばなし
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